成年後見の申立て|実家を売るまでの期間・費用・書類
親の判断能力が難しくなってから実家を売ろうとすると、名義人本人が動けないという壁に必ず当たります。そこで検討に上がるのが成年後見の申立てですが、誰が申し立てられるか、どの家庭裁判所が窓口になるか、どんな書類がいるか、審理にどれくらいの時間がかかるかを知らないまま動き出すと、思っていたより長い道のりに戸惑うことになります。このページでは、申立てできる人と管轄、診断書と必要書類、審理から後見人選任までの期間、選任後も続く報酬と維持費の負担、そして居住用の実家を売るための許可までのスケジュールを、この順番で整理します。磐田市・袋井市・森町でも、離れて暮らす子世代がこの手続きに向き合う相談は珍しくありません。結論を急ぐためではなく、取りこぼしなく準備を進めるために読んでください。

まず結論
実家を売るために成年後見が必要になったとき、まず確認するのは申立てができる人の範囲と管轄の家庭裁判所です。診断書と戸籍・財産関係の書類をそろえ、申立てから後見人選任までにはおおむね1〜2か月かかります。候補者が必ず選ばれるとは限らず、選任後も報酬や空き家の維持費が本人の財産から継続的に支出されます。居住用の実家を売るにはさらに家庭裁判所の許可が必要で、売買条件を固めてから申し立てる順番になります。
申立てできる人と管轄
成年後見の申立ては、家族の誰かが「やろう」と決めればすぐ動けるものではありません。申立てができる人の範囲と、提出先の家庭裁判所が法律で決まっており、まずこの二つを確かめることから始まります。
実家の売却を考えている家族が成年後見の話にたどり着く経路は、たいてい同じです。不動産会社に査定を依頼し、話が具体的になった段階で、親名義の預金を動かそうとした銀行の窓口や、媒介契約書に署名を求められた場面で、本人が内容を理解して答えられないと指摘される。あるいはもっと早く、施設入所の契約や介護保険の手続きの段階で、本人の意思確認ができないと言われることもあります。ここで初めて、名義人本人が動けないと家は売れないという事実に直面します。
成年後見制度には、判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3つの類型と、判断能力が十分なうちに結んでおく任意後見があります。今回のように既に判断が難しくなっている場面で使うのは前者の法定後見で、本人の状態によって後見・保佐・補助のどれに当たるかが変わります。診断書を書く医師の判断が出発点になり、申立ての段階でどの類型を選ぶかを決め切る必要はありません。家庭裁判所が審理の中で類型を確定させる仕組みになっています。
申立てができる人の範囲は法律で定められており、本人自身のほか、配偶者や子・孫、兄弟姉妹といった近い親族などに限られます。身寄りがなく申し立てる親族がいない場合には、市区町村長が申し立てる制度も設けられています。自分がこの範囲に入るかどうか、遠い親族しかいない場合にどう扱われるかは、事前に家庭裁判所の手続案内窓口へ確認しておくと迷いません。
提出先は、本人の住民票上の住所を管轄する家庭裁判所です。施設に入所していても、住民票を動かしていなければ、実家のある市町を管轄する家庭裁判所が窓口になるのが基本の考え方です。逆に施設入所とあわせて住民票を移していれば、管轄が変わっている可能性があります。管轄を誤ると書類が受理されず、やり直しで日数を失います。管轄がどこになるかは、裁判所のウェブサイトの案内で確認するか、電話で問い合わせるのが確実です。
磐田市・袋井市・森町のあたりでは、子世代が浜松や東京など離れた土地で暮らしているケースが目立ちます。申立て自体は郵送でも進められますが、家庭裁判所からの照会や面接の連絡は本籍地・住所地側に来ることが多く、平日の日中に対応できる人を家族の中で決めておく必要があります。誰が窓口になるかを最初に決めておかないと、書類のやり取りのたびに連絡が行き違い、審理が長引く原因になります。
申立てをするのは一人でも構いませんが、後見人の候補者を誰にするかは家族会議で早めに話し合っておくべき事項です。候補者に近くに住む子を立てるのか、遠方の子は連絡役に回るのか、あるいは親族間の意見が割れる可能性があるなら候補者を立てずに専門職への選任を家庭裁判所に委ねるのか。ここでの合意が曖昧なまま申立てを進めると、後の段階で親族同士の主張が食い違い、審理が滞る一因になります。
気をつけたいのは、申立人になった人がそのまま後見人になるとは限らないという点です。申立書には候補者を書く欄がありますが、家庭裁判所が本人の財産状況や親族の状況を踏まえて判断し、候補者以外の専門職が選ばれることもあります。申立ての段階で「自分が後見人になれる」と決めつけず、選ばれなかった場合にどう協力していくかも家族内で話しておくと、後のすれ違いを防げます。
実家の売却を急ぐ事情がある家族ほど、申立ての準備を後回しにしがちです。しかし審理には一定の期間がかかり、居住用の実家を売るにはさらに別の許可が要ります(第五章で扱います)。売却の計画を立てるなら、査定や不動産会社への相談と並行して、申立ての準備、特に次章で扱う診断書の取得を早めに動かしておくことが、結果的にいちばんの近道になります。
- 申立てができる人の範囲に自分が入るか、家庭裁判所の窓口へ確認する
- 本人の住民票上の住所を確認し、管轄の家庭裁判所を調べる
- 家族の中で、家庭裁判所からの連絡に対応できる窓口役を一人決める
- 後見人候補者を誰にするか、専門職に委ねるかを家族会議で話し合う
- 候補者が選ばれなかった場合の協力の仕方も、あらかじめ話しておく
| きっかけ | 最初に確認すること | 確認先 |
|---|---|---|
| 銀行窓口で本人確認ができないと言われた | 口座の名義人本人の意思確認の可否 | 取引金融機関、家庭裁判所の手続案内 |
| 査定後の契約段階で本人の理解に不安が出た | 契約日に本人が内容を理解できるか | 不動産会社、かかりつけ医 |
| 施設入所や介護保険の手続きで意思確認を求められた | 本人の判断能力の状態 | かかりつけ医、地域包括支援センター |
| 申立てできる人の範囲がわからない | 自分が申立人になれるか | 家庭裁判所の手続案内窓口 |
| 管轄がどこになるかわからない | 本人の住民票上の住所地 | 裁判所ウェブサイトの管轄案内 |
図1気づいてから申立てまでの、最初のステップ
診断書と必要書類
申立ての起点になるのは医師の診断書です。あわせて戸籍や財産に関する書類を一つずつそろえていく作業が続きます。ここでの抜け漏れが、後の審理を長引かせる一番の原因になります。
診断書は、家庭裁判所が定めた様式に沿って医師に記載してもらうものです。認知症という診断名がついていなくても、医師が本人の判断能力の状態を評価して記載する書式になっており、必ずしも専門医でなければ書けないというものではありません。まずはかかりつけ医に、成年後見の申立てのための診断書を書いてもらえるかを相談するところから始めます。作成にかかる日数や費用は医療機関によって差があるため、早めに問い合わせておくと段取りが立てやすくなります。
診断書とあわせて、本人の生活状況や支援の状況を福祉関係者が記載する書式の提出を求められることがあります。ケアマネジャーや地域包括支援センターの担当者に協力してもらう場面が出てくるため、施設に入所している場合や介護サービスを利用している場合は、担当者へ早めに事情を伝えておくとスムーズです。
戸籍関係では、本人の戸籍謄本や住民票、後見登記がされていないことを示す証明書など、一般的に求められる書類がいくつかあります。取得先は本人の本籍地や住所地の市町村窓口が基本で、遠方に住む家族でも郵送で請求できます。何をどこまで集める必要があるかは、申立て先の家庭裁判所ごとに案内が用意されているため、まず窓口案内や電話で必要書類の一覧を確認してから収集を始めると無駄がありません。
財産に関する資料は、預貯金の通帳や残高がわかる資料、年金額がわかる通知、生命保険の証券、そして不動産の資料です。実家の売却を視野に入れているなら、登記事項証明書、固定資産税の納税通知書や課税明細書、名寄帳といった、不動産の名義と評価を示す資料もこの段階でまとめて準備しておくと、後の章で扱う売却許可の申立てに移るときに二度手間になりません。
財産目録と収支予定表という書式も必要になります。本人の資産と負債を一覧にし、毎月の収入と支出の見込みを整理するもので、実家が空き家のままなら、その維持にかかる費用も見込みに含めて書くことになります。数字を正確に埋めるには通帳やこれまでの請求書が必要になるため、日頃の支払いを誰がどう管理していたかを家族内で洗い出す作業が先に来ます。
書類収集は、遠方に住む兄弟姉妹で役割を分けると進みやすくなります。戸籍関係は本籍地に近い人、財産関係は日頃の支払いを把握している人、診断書と福祉関係の書式はかかりつけ医や施設と連絡が取りやすい人、というように担当を割り振り、集めた書類のコピーを一か所にまとめておくと、申立書を作成する段階で慌てません。
家庭裁判所が必要と判断した場合には、医師による鑑定が別途行われることがあります。鑑定は診断書とは別の手続きで、費用は申立人が負担することになります。診断書の内容だけで審理が進む場合と、鑑定まで必要になる場合とがあり、どちらになるかは家庭裁判所の判断によります。鑑定が必要になった場合の期間や費用の見通しについては、申立て先の家庭裁判所や依頼した専門家に確認してください。
よくある失敗は、診断書さえ取れば準備が終わったと考えて、財産関係の資料をあとまわしにすることです。診断書は作成時点の状態を反映したものであり、財産資料の収集に時間がかかって申立てが遅れると、診断書の内容を確認し直す必要が生じる場合もあります。すべての書類をできるだけ同じ時期にそろえる意識で進めてください。
- かかりつけ医に、申立て用の診断書を書いてもらえるか相談する
- 施設・介護サービスの担当者に本人情報シート等への協力を依頼する
- 戸籍謄本・住民票・後見登記されていないことの証明書を本籍地・住所地の窓口で確認する
- 実家の登記事項証明書・納税通知書・名寄帳を早めに取り寄せる
- 書類収集の担当を家族で分担し、コピーを一か所にまとめる
| 書類の種類 | 主な入手先 |
|---|---|
| 診断書(家庭裁判所所定の様式) | かかりつけ医、必要に応じて専門医 |
| 本人情報シート | ケアマネジャー、地域包括支援センター等の福祉関係者 |
| 戸籍謄本・住民票・後見登記されていないことの証明書 | 本籍地・住所地の市町村窓口、法務局 |
| 登記事項証明書・固定資産税納税通知書・名寄帳 | 法務局、市町の資産税担当窓口 |
| 財産目録・収支予定表 | 家庭裁判所所定の様式に基づき申立人が作成 |
審理から選任までの期間
申立書を提出すると、家庭裁判所の調査、必要な場合の鑑定を経て審判に至ります。おおむね1か月から2か月というのが目安ですが、この期間は関わる人の数だけ変数があります。
申立書と必要書類が受理されると、家庭裁判所の調査官が事情を確認する段階に入ります。申立人への聞き取りに加えて、本人の意思や生活状況を確認するための面接が行われる運用が一般的です。本人が施設に入所している場合は、調査官が施設を訪ねる、あるいは家族が付き添って裁判所に出向くといった形が取られることがあります。
親族への意向照会が行われることもあります。後見人候補者について、他の親族が反対していないかを確認する趣旨で、書面での照会や電話での確認が行われる場合があります。ここで親族間の意見が大きく食い違っていることが分かると、審理に時間がかかる一因になります。第一章で触れた家族会議を早い段階で済ませておく意味は、ここに表れます。
家庭裁判所が必要と判断した場合には、医師による鑑定が行われます。診断書だけでは判断能力の程度を確定しづらいときや、親族間で意見が分かれているときに実施される傾向があるとされていますが、実施するかどうかは家庭裁判所の判断です。鑑定が入ると、その分だけ審理の期間が延びると考えておいてください。鑑定にかかる費用は申立人が負担することになります。
審理全体の期間は、おおむね1か月から2か月程度が目安とされています。ただし、これは書類がすべてそろい、鑑定が不要だった場合の目安に近く、書類の不備で追完を求められたり、鑑定が実施されたりすると、この期間より長くなることがあります。実家の売却を計画している家族は、この期間を売却スケジュールの中に織り込んでおく必要があります。
審理の途中で、申立てを取り下げたくなる場面が出てくることもあります。親族間の意見がまとまらない、想定していた候補者が選ばれそうにないと分かった、といった理由です。しかし申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができません。安易な見通しで申立てに踏み切ると、途中で後戻りできない点は、事前に理解しておく必要があります。
審理を経て、家庭裁判所は後見人を選任する審判を出します。ここで重要なのは、申立書に書いた候補者がそのまま選ばれるとは限らないということです。親族間で意見が割れている、財産の規模が大きい、不動産や事業など管理が複雑な財産が含まれる、といった事情があると、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることがあります。
財産の規模や内容によっては、後見人を監督する立場の後見監督人が別に選ばれることもあります。後見監督人が付くと、後見人は一定の財産の動きについて監督人の確認を経る運用になり、実家の売却のような大きな取引ではその関わりが特に大きくなります。誰が監督人になるかは審判を見るまで分からないため、選任後の体制は審判書が届いてから確認することになります。
審判の内容は審判書という書面で告知されます。内容に不服がある関係者は、一定の期間内に不服を申し立てることができる仕組みがあり、その期間を過ぎると審判が確定します。確定すると法務局で後見登記がされ、後見人であることを証明する登記事項証明書が取得できるようになります。この証明書は、以降の不動産取引や金融機関での手続きで提示を求められる基本の書類になります。
審理が進んでいる間、家族の側でも準備しておくと後が楽になることがあります。実家の鍵の本数と保管者を整理する、通帳や請求書の写しをもう一部作っておく、空き家の見回りを誰がどの頻度で行うかを決めておく、といった作業です。選任後すぐに財産管理を始められる状態にしておくと、後見人が親族であっても専門職であっても、引き継ぎがスムーズになります。
調査官からの照会書には、記憶や印象ではなく、実際に確認した事実を書くようにしてください。本人の生活状況や財産の状況について、あいまいな回答を重ねると、追加の照会や鑑定につながり、かえって審理が長引くことがあります。第一章・第二章で整理した資料や記録を手元に置きながら回答すると、事実に基づいた説明がしやすくなります。
- 調査官の面接・照会に、家族の窓口役が一貫して対応できる体制を整える
- 親族間の意見の食い違いは、審理が始まる前に家族会議で解消しておく
- 鑑定の要否は家庭裁判所の判断であり、実施されれば期間が延びると理解する
- 申立て後は取り下げが原則できないことを踏まえ、見通しを立ててから申立てる
- 審判確定後、後見登記事項証明書を取得できることを確認する
| 段階 | 家庭裁判所が行うこと | 家族が対応すること |
|---|---|---|
| 受理直後 | 書類の確認、調査官の指定 | 追加資料の求めに備え、原本の所在を把握しておく |
| 調査官の面接・照会 | 申立人・本人・親族への聞き取り | 事実に基づいて回答し、記憶で埋めない |
| 鑑定(該当する場合) | 医師へ鑑定を依頼 | 鑑定費用の見込みを確認し、支払いに備える |
| 審判 | 後見人・後見監督人を選任 | 候補者以外が選ばれる可能性を理解しておく |
| 確定・登記 | 後見登記を法務局へ嘱託 | 登記事項証明書の取得方法を確認する |
図2審理の間、誰が本人と実家に関わるか
後見人の報酬と継続する負担
後見人が決まって終わりではありません。報酬や事務の負担は、本人が亡くなるか判断能力を回復するまで続きます。実家が空き家のままなら、その維持費もこの負担に含まれます。
後見人の報酬は、家庭裁判所が本人の財産状況や後見人の職務内容を踏まえて審判で定める仕組みです。報酬は本人の財産から支払われ、後見人が自由に金額を決められるわけではありません。親族が後見人になった場合と、弁護士や司法書士といった専門職が選ばれた場合とでは、家庭裁判所の判断の考え方が異なる場合があります。具体的な金額の相場は事案ごとに幅があるため、ここでは踏み込まず、選任後に家庭裁判所や後見人から示される見込みを確認してください。
報酬とは別に、後見人には毎年おおむね一度、家庭裁判所へ財産管理の状況を報告する事務が課されます。通帳の写しや領収書を整理し、収支をまとめる作業が継続的に発生します。親族が後見人になる場合、この事務作業に慣れていないと負担に感じることが多く、記帳や領収書の保管を日頃から習慣にしておく必要があります。
実家が空き家のままであれば、後見開始後もその維持管理は続きます。固定資産税、火災保険料、電気・水道の基本料金、庭木の手入れといった費用は、本人の財産から支出する形で処理されることになります。後見人が遠方に住んでいて現地に頻繁に来られない場合は、不動産会社や管理サービスに定期的な見回りを委託する選択肢があります。台風の前後の点検や、空き家に多い郵便受けの管理なども、誰かが担う前提で体制を組んでおく必要があります。
親族が後見人候補者として立候補したのに専門職が選ばれた場合、家族の間に納得しにくい感情が残ることがあります。専門職後見人とのやり取りは、要望や事情を書面にして伝える、面談の機会を早めに申し込むといった形で進めると、感情的なすれ違いを減らせます。実家の売却を希望する場合も、なぜ売りたいのか、本人の生活にどう関わるのかを整理して伝えることが、話を前に進める近道になります。
本人の財産がまとまった額になる場合、信託銀行等に日常使わない分を預ける仕組みが利用されることがあります。この仕組みを利用するかどうかは家庭裁判所の判断や本人の財産状況によって変わるため、選任後に案内があった際に、後見人や家庭裁判所へ内容を確認してください。
見落とされやすいのは、後見は「実家を売ったら終わり」の手続きではないという点です。売却が完了しても、本人が判断能力を回復しない限り、後見人としての職務は続きます。売却で得た代金も本人の財産として管理の対象になり、そのあとの生活費や施設費用の支払いに充てられていきます。実家の売却を後見のゴールだと考えていると、その先の継続する事務に戸惑うことになります。
費用と事務の全体像を早い段階で家族に共有しておくことは、後々の不満を防ぐうえで欠かせません。誰がどれだけ動いているのか、報酬や維持費として本人の財産からどれだけ出ているのかが見えないまま時間が経つと、特定の家族に負担が偏っているという不満につながりやすくなります。定期報告の内容を、可能な範囲で家族内でも共有する運用を、後見人と相談して決めておくとよいでしょう。
想定より負担が重いと感じても、後見人を辞任するには家庭裁判所の許可が必要で、次の後見人が決まるまでは職務を続けなければなりません。負担の見込みは、後見人を引き受ける前、できれば申立ての段階で家族内に共有しておくことが、後悔を減らす一番の方法です。
- 報酬の考え方と本人財産からの支払いの仕組みを、選任後に家庭裁判所・後見人へ確認する
- 定期報告に備え、通帳の写しと領収書を日頃から整理する習慣をつける
- 空き家の維持管理費用(税・保険・光熱費基本料金等)の見込みを家族で共有する
- 専門職後見人とは、要望を書面にして伝え、早めに面談の機会を持つ
- 後見は売却後も続く手続きであることを、家族全員で認識しておく
| 費用の種類 | 支出元 | 備考 |
|---|---|---|
| 後見人の報酬 | 本人の財産 | 家庭裁判所が審判で定める |
| 空き家の固定資産税・火災保険料 | 本人の財産 | 売却・解体まで継続 |
| 電気・水道等の基本料金 | 本人の財産 | 使用状況に応じて見直しの余地あり |
| 庭木の手入れ・見回りの委託費 | 本人の財産 | 遠方の場合は業者委託を検討 |
| 家庭裁判所への定期報告にかかる事務 | 後見人の労力 | 専門職の場合は業務の一部 |
売却許可までのスケジュール
後見人が決まっても、実家をそのまま売れるわけではありません。本人が住んでいた家、いわゆる居住用不動産を処分するときは、家庭裁判所の許可が別に必要になります。
後見人が選任されたら、まず行うのは実家の現況調査と不動産会社への相談です。査定を取り、売却条件のおおよその見通しを立てる作業自体は、後見人が本人に代わって進められます。ただし、契約に進む段階で、本人が現に住んでいた、あるいは今後住む可能性がある住居用の不動産にあたる場合、家庭裁判所の許可を得ないまま売買契約を確定させることはできないとされています。
居住用にあたるかどうかは、本人が施設に入所していて実際には住んでいなくても、退所すれば戻る可能性がある家かどうかという観点で判断される場合があります。空き家になって長いから居住用ではない、と単純に判断できるとは限りません。この判断は個別の事情によるため、後見人として不動産会社と話を進める段階で、居住用にあたるかどうかを家庭裁判所や依頼している専門家に確認しておくことが安全です。
実務上は、売買条件がある程度固まった段階で家庭裁判所へ許可を申し立てる進め方が一般的です。つまり、不動産会社との媒介契約、買主候補との価格や引渡し時期の交渉を先に進め、契約書の案や査定の根拠となる資料がそろってから、正式な許可の申立てに入るという順番になります。条件が固まらないうちに申し立てても、審理を進めにくいためです。
許可を申し立てる際には、売買契約書の案、査定の根拠資料、なぜ売却が必要かという事情の説明が求められます。実家を売って施設費用や生活費に充てる、維持管理の負担が本人の財産を圧迫している、といった具体的な理由を整理しておくと、審理がスムーズに進みやすくなります。金額や取引条件が本人にとって不利でないかという観点も見られるため、極端に安い価格での売却を急ぐと、条件の見直しを求められることがあります。
許可が下りるまでの期間は、事案の内容や家庭裁判所の状況によって幅があり、ここで一律の日数を示すことはできません。余裕を持ったスケジュールを組み、契約書に停止条件(家庭裁判所の許可を条件とする旨)を明記しておくことが実務上の対応になります。買主候補にも、後見の許可を要する取引であることを事前に説明し、理解を得ておく必要があります。
許可を待つ間も、実家の管理は続きます。台風前後の点検、庭木の手入れ、郵便物の整理、固定資産税の支払いといった維持管理は、契約が成立するまで後見人の職務として続きます。この期間が長引くほど維持費もかさむため、査定や交渉を始める段階から、許可申立てまでの見通しをできるだけ具体的に立てておくことが負担を抑える近道になります。
許可が下りたら、契約に定めた条件で決済・引渡しへと進みます。所有権移転登記の申請、売却代金の受領と本人の財産としての管理、これらは通常の不動産取引に後見特有の手続きが加わる形で進みます。売却後は、代金がどのように本人のために使われるかを含め、引き続き家庭裁判所への報告の対象になります。
後見人が遠方に住んでいて決済の場に立ち会いにくい場合は、司法書士に手続きを一任し、書類のやり取りや振込で決済を進める方法があります。契約書や決済に使う書類には、後見人の資格を証明する登記事項証明書の提示を求められるため、決済日の直前になって慌てないよう、審判確定後できるだけ早く取得しておくと段取りが崩れません。
売却によって利益が生じた場合、譲渡所得としての課税は、後見人が売却した場合であっても本人を納税義務者として扱われるのが原則です。各種の控除や特例が使えるかどうかは、本人の居住状況や財産の内容など個々の事情によって判断が分かれます。確定申告の時期が近づいたら、後見人だけで抱え込まず、早めに税理士へ相談してください。
ここまでの流れを振り返ると、実家の売却に気づいてから、申立て、審理、後見人選任、売却の準備、許可、決済までの道のりは、決して短くありません。それぞれの段階に一定の期間が必要なことを踏まえ、早め早めに次の準備へ進めることが、家族の負担を分散させる一番の方法です。急いでいるからと手順を飛ばそうとしても、家庭裁判所の許可という関門は省略できないことを、あらかじめ理解しておいてください。
- 実家が居住用不動産にあたるかどうかを、家庭裁判所・専門家に確認する
- 売買条件をある程度固めてから、家庭裁判所へ許可を申し立てる
- 契約書に家庭裁判所の許可を条件とする旨を明記し、買主に事前説明する
- 許可を待つ間の維持管理(点検・税・保険)の担当と費用を決めておく
- 許可後の決済・登記・売却代金の管理までを、後見人の職務として見通しておく
| 段階 | 確認する書類 |
|---|---|
| 許可申立て時 | 契約書の案、査定の根拠資料、売却が必要な事情の説明書 |
| 許可後 | 家庭裁判所が発行する許可の審判書 |
| 決済時 | 後見人の登記事項証明書、本人確認書類、権利証等の従来資料 |
| 決済後 | 所有権移転登記の申請書類、売却代金の入金確認資料 |
図3実家の種類と条件の固まり具合で、次の一手を決める
このページ固有の確認メモ
ここからは「成年後見の申立て|実家を売るまでの期間・費用・書類」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。
確認しておく事実
この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。
- 実家の売却では、契約日に本人が理解し判断できるかが問われ、診断名だけでは決まらない
- 申立てができる人の範囲と管轄の家庭裁判所は法律で定められている
- 診断書に加えて戸籍・財産目録など複数の書類をそろえる必要がある
- 審理はおおむね1〜2か月が目安だが、鑑定が入ると延びることがある
- 申立書の候補者がそのまま後見人に選ばれるとは限らない
- 後見人の報酬や空き家の維持費は、本人の財産から継続的に支出される
- 居住用不動産の売却には、家庭裁判所の許可が別途必要になる
避けたい判断
この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。
- 診断書だけ取得して安心し、財産関係の書類収集を後回しにする
- 家族会議をしないまま申立て、候補者をめぐって親族間の意見が食い違う
- 申立て後に取り下げたくなっても、家庭裁判所の許可なく取り下げられない
- 後見人が決まればすぐ売れると思い込み、居住用不動産の許可を見落とす
- 売却が完了すれば後見の職務も終わると誤解する
手元で探すもの
見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。
- 本人の診断書、本人情報シート
- 戸籍謄本・住民票・後見登記されていないことの証明書
- 登記事項証明書・固定資産税納税通知書・名寄帳
- 財産目録・収支予定表
- 後見人候補者と、選ばれなかった場合の対応方針
- 家庭裁判所からの連絡に対応する家族の窓口役
- 空き家の維持管理担当と費用の見込み
- 売買条件の案(媒介契約・査定根拠・契約書案)
よくある質問
実家を売るために、必ず成年後見の申立てが必要ですか
契約の日に本人が内容を理解して判断できるかどうかで必要性が変わります。判断が難しい場合は成年後見が主な選択肢になりますが、状態や場面によっては他の手立てが検討できることもあります。どの手続きが必要かは、かかりつけ医や弁護士・司法書士に確認してください。
申立てから後見人が決まるまで、どのくらいかかりますか
書類がそろって鑑定が不要な場合、おおむね1か月から2か月が目安とされています。ただし書類の不備や親族間の意見の食い違い、鑑定の実施があれば、これより長くかかることがあります。
家族が候補者として名乗り出れば、必ず後見人になれますか
申立書に書いた候補者がそのまま選ばれるとは限りません。財産の規模や親族間の意見の状況によっては、弁護士や司法書士といった専門職が選ばれることがあります。
後見人が決まれば、実家をすぐに売却できますか
本人が住んでいた、あるいは今後住む可能性がある居住用の不動産を処分するときは、家庭裁判所の許可が別に必要とされています。売買条件がある程度固まってから許可を申し立てる進め方が一般的です。
申立てにかかる費用の内訳を教えてください
申立てに必要な収入印紙や郵便切手のほか、家庭裁判所が鑑定を必要と判断した場合には鑑定費用がかかり、これは申立人の負担になります。具体的な金額は申立て先の家庭裁判所の窓口や書式で確認してください。
実家カルテは、成年後見の申立てを検討している段階でも申し込めますか
公開情報をもとに、実家の名義や状況を確認順に整理する範囲であればご利用いただけます。ただし、後見の要否の判断や書類の作成、家庭裁判所への申立ては行いません。整理した内容を、弁護士・司法書士や家庭裁判所の窓口へつなぐ使い方を想定しています。
公式出典・確認先
制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。

