空き家バンク・仲介・買取はどう違う?実家の売り方を選ぶ前の整理
空き家バンク、仲介、買取。三つとも実家を手放すための入口ですが、値段の高い安いで横に並ぶ同じ種類の選択肢ではありません。先に違うのは、買主が誰になるのか、契約の相手は誰か、買主を探す仕事を誰が負うのかという役割の置き方です。ここを取り違えたまま「とりあえずバンクに載せてみる」「まず買取の金額だけ聞く」と動くと、半年後に同じ場所へ戻ってきます。このページでは磐田市・袋井市・森町と、掛川市や浜松市に実家を持つ人を想定し、三つの経路の仕組み、向く物件と向かない物件、査定額から手取りまでの引き算、併用と切り替えの設計、そして地域での実際の使われ方の順に整理します。制度の名称や登録条件は市町ごとに違い、記事の一般論をそのまま当てはめると外れます。だからこそ、どの窓口へ何を聞けばよいかも併せて書きます。

まず結論
空き家バンクは市町が情報を載せる仕組み、仲介は宅建業者に買主探しを頼む契約、買取は業者自身が買主になる取引です。三つは母数・期間・価格・手離れのどこを取るかで選び分けます。査定額ではなく、手数料・登記・残置物・解体・税を引いた手取りと入金日で比べ、期限から逆算して順番を設計します。
三つの経路は「誰が買主で、誰が探すのか」で分かれる
空き家バンク・仲介・買取の一番大きな違いは、手数料でも価格でもありません。最後に代金を払う人が誰か、そして買主を探す仕事を誰が引き受けるかです。この二つを見分けると、後の比較がそのまま楽になります。
空き家バンクは、市や町が空き家の情報を登録して公開する仕組みです。ここで押さえておきたいのは、市町は原則として売買契約の当事者にはならず、価格の交渉や契約書の作成も担わないという点です。多くの自治体は宅地建物取引業者の団体と協定を結び、実際の契約実務はその業者が引き受ける形をとっています。つまりバンクは「買い手の目に触れる場所」を用意する仕組みであって、売却の代行サービスではありません。名称も登録の要件も自治体ごとに異なるため、まずは実家がある市町の空き家対策や住宅政策を担当する課へ、制度の有無と正式名称を聞くところから始めます。
登録の入口も知っておくと動きやすくなります。一般には申込書に加えて、登記事項証明書の写し、間取りの分かる資料、室内と外観の写真、希望する価格や引渡し条件などを添えて申請します。市町の側で書類の確認や現地の状況確認を経てから公開されるため、申し込んだ日にすぐ載るわけではありません。掲載後に問い合わせが入れば、内覧の日程調整や質問への回答は所有者側にも仕事として回ってきます。手間がまるごと消える仕組みではない、という前提で見ておいてください。
仲介は、宅地建物取引業者に媒介を依頼し、買主を探してもらう方法です。媒介契約には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の三種類があり、有効期間は原則として三か月以内とされています。専任系の契約では、指定流通機構への物件登録と、依頼者への定期的な業務報告が業者側の義務として定められています。登録した証明書を受け取り、報告がどの頻度で届くのかを最初に確認しておくと、募集が動いているかどうかを自分で確かめられます。
仲介の報酬は成功報酬です。上限は宅地建物取引業法に基づく告示で決まっており、売買代金が四百万円を超える場合は代金の三パーセントに六万円を加えた額と消費税、という計算が目安になります。加えて、価格が低く手間のかかる空家等については、あらかじめ依頼者へ説明して合意したうえで、三十万円と消費税を上限として受け取れる取扱いがあります。実家の売却ではこの取扱いに当たる価格帯も珍しくないので、見積書の段階で報酬の根拠と金額を書面で確認してください。
買取は、宅地建物取引業者そのものが買主になる取引です。提示された査定額が原則としてそのまま売買代金になり、業者が買主である以上、売主が仲介手数料を払う場面は生じないのが通常です。募集も内覧も要らず、残置物や設備の不具合を残したままの現況引渡しに応じてもらえることが多いのも特徴です。ただし業者は買った後に修繕して再販することを前提にしているため、価格は同じ家を市場で募集した場合の想定より下がります。安いのではなく、時間と手間と後始末を金額に置き換えている、と理解すると判断しやすくなります。
三つの差が出るのは、買主候補の母数、成約までの時間、価格、そして売った後の手離れの四点です。バンクは地元の住民と移住を考えている人に届きますが、母数そのものは大きくありません。仲介は不動産の流通網に載せられるので届く範囲は広い一方、いつ決まるかは読めません。買取は日程を先に決められる代わりに金額が下がります。どれが得かは物件の条件と、こちらが抱えている期限によって入れ替わるので、三つを同じ表に載せて比べるのが出発点です。
現場でよく見かける誤解を三つ挙げておきます。ひとつめは、バンクに登録すれば市が売ってくれるという理解。ふたつめは、バンクなら費用がかからないという理解で、実際には契約実務を宅建業者が担えば報酬は発生し得ます。みっつめは、買取は必ず損だという理解です。残置物の処分や解体、境界の確定を売主が負わずに済む条件なら、差し引いた後の手取りで逆転する場合があります。
三つ以外の道もあることは頭の隅に置いてください。隣の家の人や、近くで土地を探している人へ直接譲る形。親族の誰かが引き継ぐ形。貸して使ってもらう形。そして、どうしても引き取り手がない土地について国庫へ帰属させる仕組みも制度としては用意されています。要件や費用の負担があり、誰でも使えるものではありませんが、選択肢の一覧から最初から外す必要はありません。使えるかどうかは法務局や司法書士に確認します。
経路を選ぶ前に手を動かせることもあります。名義、境界の確定状況、前面道路と接道、建物の建築年、残置物の量、そして動ける期限。この六項目を一枚のメモにしておくと、バンクの登録でも査定の依頼でも同じ紙が使えます。どの窓口でも必ず聞かれる内容なので、先に書いておくほど話が早く進みます。
- 実家のある市町に空き家バンクがあるか、正式名称と担当課を確認する
- 登録に必要な書類と、申請から公開までにかかる日数を窓口で聞く
- 媒介契約の三種類のどれを結ぶのか、有効期間と報告の頻度を確認する
- 仲介手数料の上限と、低廉な空家等の取扱いに当たるかを書面でもらう
- 買取の提示額に残置物処分と現況引渡しが含まれるかを文書で確認する
図1実家を手放すとき、相手になるのは誰か
物件の条件が経路を決める。向く・向かないを先に見る
経路は好みで選ぶものではなく、物件の条件が先に絞り込みます。接道、建物の年式、残置物、境界、農地、区域区分。この六つを調べると、三つのうち現実的に残るのは多くの場合一つか二つです。
最初に見るのは前面道路です。建て替えを前提に買う人にとって、敷地が建築基準法上の道路に一定の幅で接しているかどうかは価格そのものを左右します。公道か私道か、幅員はどれくらいか、位置指定を受けた道路か、いわゆる二項道路でセットバックが要るのか。市の建築を担当する窓口や関係機関で調べられますが、最終的な判断は建築士や宅地建物取引士に渡してください。ここが弱い家は一般の募集では反応が鈍く、隣地への打診か、現況のまま買う相手を探す方向に寄っていきます。
建物は、築年数と使えるかどうかを分けて考えます。昭和五十六年五月三十一日以前に建てられた家かどうかは、耐震の基準が切り替わる時期に当たるため、税の特例の要件や買主の住宅ローンの通りやすさに関わってきます。加えて、雨漏りの跡、シロアリの被害、基礎のひび、給湯器や配管の状態を見ます。遠州の冬の空っ風と台風で、瓦のずれ、雨樋の外れ、カーポートの屋根材の飛散は毎年のように起こります。直してから売るのか、現況のまま値段に織り込むのかで経路が変わります。
残置物の量も経路を決める要素です。仏壇、農機具、大量の食器、物置の中身、離れに積まれた古材。これらを売主側で処分してから引き渡す前提なら、片付けと処分に数週間から数か月と相応の費用がかかります。買取や現況渡しでは、残したまま引き渡せる条件が付くことがあり、その分だけ提示額が下がる形になります。どちらが手取りで有利かは、処分費の見積もりを取ってから比べてください。見積もりは家財の量を写真で伝えれば概算を出してもらえます。
権利の側では、名義と境界を確認します。登記名義が先代のままなら、売る前に相続登記が必要です。相続によって不動産を取得したことを知った日から三年以内に登記の申請をする義務が定められており、過去に発生した相続にも経過措置が置かれています。遺産分割がまとまらないときは、相続人であることを申し出る登記の仕組みも用意されています。境界については、地積測量図が備え付けられているか、境界標が現地に残っているかを見て、確定が必要かどうかを土地家屋調査士に相談します。
農地が付いている場合は別の手続きが乗ります。登記の地目が田や畑であれば、売買には農業委員会が関わり、耕作をやめてから年数が経っていても対象になり得ます。匂坂のように農業振興地域の農用地区域が広がる一帯では、宅地への転用そのものが想定されていない土地もあります。地目が農地のままの土地を含む売却は、経路を選ぶ前に各市町の農業委員会へ確認するのが順番です。宅地部分だけを先に売り、農地を残す形が現実的なこともあります。
市街化調整区域かどうかも効いてきます。調整区域では建て替えや新築に制限がかかる場合があり、買える人が限られます。一般の募集では反応が薄い一方、地元で農業や事業を続けている人、既存の集落に縁がある人には需要が残ります。こうした土地は、広く募集する仲介よりも、地域に届くバンクや隣地への直接の打診のほうが結果につながることがあります。区域区分と建築の可否は、必ず市の窓口と宅地建物取引士の両方で確かめてください。
ここまでを踏まえると、向き不向きはかなり整理されます。住宅地にあって道路付けがよく、建物が使えるか更地にすれば住宅用地として売れる家は、仲介が第一候補です。価格帯が低く一般の流通に乗りにくい家、地元や移住希望者に届けたい家、時間に余裕がある家はバンクが向きます。期限が決まっている、残置物が多い、近隣に知られたくない、権利関係が入り組んでいる、という条件が重なる家では買取が現実的です。
ただし買取なら何でも通るわけではありません。再建築ができない、借地権が付いている、共有者の一部と連絡が取れない、境界が確定できず隣地との紛争がある。こうした条件では、買取業者側が仕入れを見送ることもあります。断られた場合は理由を必ず聞いてください。接道なのか、需要なのか、建物なのか、権利なのか。理由が分かれば、直す費用と直した後の見込みを比べる次の一手に進めます。
- 前面道路の種類と幅員、セットバックの要否を市の窓口で確認する
- 建築年が昭和五十六年五月三十一日以前かどうかを登記と課税明細で確かめる
- 残置物の量を写真で記録し、処分費の概算見積もりを取る
- 登記名義と境界標の有無を確認し、必要な専門家を決める
- 登記地目に田や畑が含まれていないか、区域区分と併せて調べる
| 物件の条件 | 向きやすい経路 | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 駅や幹線に近い住宅地で、道路付けがよい | 仲介が第一候補 | 境界の確定状況と、更地渡しか現況渡しかの前提 |
| 価格帯が低く、地元や移住希望者に届けたい | バンク登録と仲介の併用 | 登録要件と、契約実務を担う業者の有無 |
| 期限があり、残置物が多く、片付けが進まない | 買取または現況引渡し | 提示額に処分費と修繕費がどこまで含まれるか |
| 細街路の奥、再建築の可否が読めない | 隣地への打診とバンク | 接道の判定と、建て替えできる条件 |
| 農地が付いている、農振農用地に当たる | 宅地部分と農地を分けて検討 | 農業委員会の手続きと、分けて売れるかどうか |
査定額ではなく、手取りと入金日で比べる
三つの経路は査定額の大小では比べられません。差し引かれるものが経路ごとに違うからです。手数料、登記、片付け、解体、税を引いた後の金額と、その金額が口座に入る日付。この二つで並べてください。
査定額は出発点にすぎません。ここから引かれるものを順に並べると、仲介であれば仲介手数料、売買契約書に貼る印紙税、抵当権が残っていれば抹消の登記費用、住所や氏名が登記と違えば変更の登記費用、名義が先代なら相続登記の費用が続きます。さらに、土地の面積を確定させるために測量が必要なら測量費、残置物があれば処分費、更地渡しの条件なら解体費。最後に譲渡益が出れば所得税と住民税が乗ります。数え上げると、査定額と手取りの差は思っているより大きくなります。
経路によって、この引き算の顔ぶれが変わります。買取では仲介手数料が原則生じず、残置物の処分や修繕を買主側が引き受ける条件が付くことがあります。そのぶん提示額は下がりますが、売主が立て替える現金は少なくて済みます。仲介では手数料と、買主の求めに応じた測量や修繕の費用が乗る代わりに、募集して価格が付けば上限は高くなります。バンクは掲載までの費用が軽い一方、契約実務を担う業者への報酬は別に見る必要があります。
入金の時期も同じくらい重要です。買取は現地調査から価格の提示までが数日から二週間ほど、契約と決済まで含めても一か月から二か月で終わることが多い形です。仲介は募集の期間が読めません。買主が決まってから契約、住宅ローンの承認、決済という流れで一か月前後を見ます。バンクは掲載してから問い合わせが入るまでの期間が最も読みにくく、成約時期を約束できる仕組みではありません。期限がある人ほど、この違いが金額の差を上回ります。
見落としやすいのが、売れるまで持ち続ける費用です。固定資産税と都市計画税、火災保険料、電気と水道の基本料金、草刈りや剪定の外注費、遠方に住んでいるなら往復の交通費と時間。これを年額で出して、想定する売却までの月数を掛けます。買取の提示額が仲介の想定より低くても、募集が長引いた場合の保有費を足すと差が縮む、あるいは逆転することがあります。比較表には必ずこの行を作ってください。
税の側では、相続した実家を売る場合の特例が関係することがあります。被相続人が住んでいた家屋とその敷地を相続した人が一定の要件のもとで売ったときに、譲渡所得から控除を受けられる取扱いがあり、家屋の建築時期、区分所有建物でないこと、譲渡対価の上限、耐震基準への適合または取壊し、売却の期限といった条件が定められています。相続人の人数によって控除の限度額が変わる取扱いもあります。適用の可否と金額は個別事情で変わるため、必ず税理士へ確認してください。
取得費が分からない、という相談も多く受けます。先代が買ったときの契約書や領収書が残っていない場合、譲渡収入の一定割合を取得費とみなして計算する方法が定められています。ただし、実際の取得費が分かる資料が見つかればそちらを使えることもあるため、売買契約書、当時の通帳、住宅ローンの償還予定表、登記の書類を家の中で探しておく価値はあります。ここも判断は税理士の領域なので、資料をそろえて渡す形にします。
比較のときは、査定の前提をそろえることが欠かせません。現況のまま引き渡す前提か、残置物を処分した後か、解体して更地にした後か、測量を済ませた後か。前提が違う数字を並べても比べたことになりません。複数社に査定を頼むときは、同じ条件を紙に書いて渡し、その条件での金額を出してもらってください。前提を書いた紙が一枚あるだけで、後から金額の理由をたどれます。
買取の提示額を受け取ったときは、その金額が確定なのか、条件付きなのかを確かめてください。契約までの間に建物の内部を詳しく調べた結果で金額を見直す条項が入っていることがあります。見直しが入り得るなら、どの範囲の事情で、どの程度動くのかを先に聞いておきます。地中に古い基礎やがれきが埋まっていた場合の扱い、越境物が見つかった場合の扱いも同じです。金額そのものより、金額が動く条件のほうが後で効いてきます。
最後に、金額の内訳を必ず書面でもらいます。査定書に含まれない費用は何か、追加で発生し得る費用は何か、手数料はいつ払うのか。仲介手数料は契約時と決済時に分けて支払う運用が多く、決済日にまとめて精算されるものと、先に現金で出ていくものが混ざります。固定資産税は引渡し日を基準に日割りで精算する慣行があり、これは売主が受け取る側です。出ていく現金と入ってくる現金を時系列で並べると、資金繰りの不安がかなり減ります。
- 査定額から引かれる費用を、経路ごとに同じ様式で書き出す
- 年間の保有費を出し、想定する売却までの月数を掛けて比較表に足す
- 査定の前提(現況渡し・処分後・解体後・測量後)を紙に書いてそろえる
- 取得費が分かる資料を探し、税理士へ渡す一式にまとめる
- 出ていく現金と入ってくる現金を日付順に並べて資金繰りを確認する
図2査定額が手取りになるまでの順番
併用はできる。ただし契約の形と順番の設計が要る
空き家バンクと仲介、仲介と買取は、条件を整えれば重ねられます。鍵になるのは媒介契約の種類、市町の要綱、そして期限から逆算した切り替えの日を先に決めておくことです。
重ねられるかどうかを決めるのは、まず媒介契約の種類です。専任媒介と専属専任媒介では、同じ物件について他の業者に重ねて依頼することができません。一般媒介であれば複数の業者に同時に依頼できます。買主を自分で見つけて直接契約できるかどうかも契約の型によって扱いが違い、専属専任では認められないのが原則です。隣地の人が買うかもしれない、親族に譲るかもしれないという可能性が少しでもあるなら、契約を結ぶ前に必ずその点を伝えて確認してください。
バンクへの登録と媒介契約の関係は、自治体の要綱と依頼する業者の運用の両方に左右されます。登録の条件として、他の方法での募集を制限している自治体もあれば、業者に媒介を頼んだ物件をそのまま掲載できる自治体もあります。ここは一般論では答えが出ません。市町の担当課には「媒介契約を結んでいる物件も登録できますか」と、依頼先の業者には「バンクに登録したままで媒介を受けてもらえますか」と、同じ日に両方へ聞くのが確実です。
仲介と買取の間には、買取保証と呼ばれる組み合わせがあります。一定の期間は通常どおり募集し、その間に売れなければあらかじめ決めた価格で業者が買い取る、という約束の形です。使えるかどうかは業者や物件の条件によりますが、期限が決まっている人にとっては検討する価値があります。確認すべきは、募集する期間、買い取る価格、その価格を見直す条件、対象から外れる場合の事由。この四つを書面で受け取ってください。口頭の約束は後から形が変わります。
順番の設計は、期限から逆算して作ります。たとえば来年の春までに現金化したいなら、募集に充てられるのは何か月かを先に決め、その締切日をカレンダーに書き込みます。締切までに反応がなければ価格を見直すのか、買取に切り替えるのか、条件のどれを緩めるのかを、最初の時点で決めておきます。この決め方をしておくと、募集が動かないときに慌てて安い条件を飲む場面を避けられます。決めた日は家族全員が見られる場所に置いてください。
複数の業者に同時に頼むときは、情報の管理が仕事になります。一般媒介で三社に頼めば、鍵の預け先、内覧の連絡窓口、価格を見直したときの反映、成約した後の掲載の取り下げが三重に発生します。窓口になる人を一人決め、価格を変えたら同じ日に全社へ伝える。成約したら当日中にバンクの担当課にも連絡する。取り下げを忘れた古い情報が残ると、問い合わせだけが続いて家族が疲れます。
査定を複数取る場合も同じで、前提をそろえないと比較になりません。金額の高さで選ぶより、その金額の根拠を説明できるかどうかで選ぶほうが、後の展開が読みやすくなります。周辺のどの成約事例を使ったのか、建物の評価をどう見たのか、売れなかった場合に何を変える想定なのか。この三つを聞くと、金額を高く出して契約を取り、後から下げていくやり方かどうかが、おおよそ見分けられます。
併用でつまずく例も挙げておきます。バンクに載せたまま仲介で成約し、取り下げの連絡が遅れて問い合わせが続いた。複数社に一般媒介で出したものの、価格を変えた連絡が一社にだけ届かず古い金額のまま掲載が残った。買取保証の期間を確かめずに募集を続け、気づいたときには保証の期間が過ぎていた。いずれも仕組みの問題ではなく、連絡の設計をしていなかったことが原因です。
隣地の人や親族が買うことになった場合も、実務を省かないでください。金額の合意だけで進めると、代金の支払い方、引渡しの日、境界の扱い、後から不具合が見つかったときの責任の範囲が決まらないまま登記だけが動きます。契約書の作成と決済の立ち会いは宅地建物取引業者か司法書士に入ってもらい、費用は誰が負担するのかも先に決めます。親しい相手ほど、書面を残しておいたほうが関係が続きます。
併用を考えるとき、家族の合意も同じ表に載せておきます。誰が窓口になるのか、いくらまでなら下げてよいのか、どの日までに決めるのか。この三つを決めずに走り出すと、買主が現れた段階で家族の間の話が始まり、契約の日程が押します。共有名義なら、共有者全員の意思が必要になる場面があるため、早い段階で全員に同じ資料を渡しておいてください。
- 媒介契約の型を決める前に、自分で買主を見つける可能性の有無を伝える
- バンク登録と媒介契約を重ねられるか、市町と業者の双方に同じ日に聞く
- 買取保証を使うなら、期間・価格・見直し条件・除外事由を書面でもらう
- 募集の締切日と、締切に達したときの次の一手を先に決めて共有する
- 窓口になる人を一人決め、価格変更と成約の連絡先を一覧にしておく
磐田・袋井・森町では、地区の事情が経路を選ばせる
同じ市の中でも、地区が変われば買主の顔ぶれが変わります。道路の幅、農地、区域区分、そして遠州の気候。地元の実情を先に見ると、三つの経路のどれに賭けるかが具体的に決まります。
磐田市や袋井市の中心部に近い住宅地では、通勤圏として一定の需要が続いています。道路付けがよく、建物が使えるか、更地にすれば住宅用地として通る土地であれば、まずは仲介で募集して反応を見るのが素直な進め方です。反応の測り方は、問い合わせの件数と内覧の件数と、内覧した人からの質問の内容です。質問が価格ではなく設備や修繕に集中しているなら、直す範囲を変えるだけで動くことがあります。
掛塚のように古い町割りが残る一帯では、道路の幅が狭く、車の出入りや建て替えの条件が価格に直結します。こうした地区では、一般の募集で広く探すよりも、隣地の所有者や近隣で土地を探している人へ届けるほうが早いことがあります。隣地の人にとっては、自分の土地と合わせることで初めて使い道が広がる場合があるからです。打診は業者を通して行うほうが角が立ちません。断られた場合も、その理由が次の判断材料になります。
天竜川に近い池田のあたりや、川沿いの低い土地では、浸水想定と堤防の位置が買主の関心事になります。市が公開しているハザードマップを先に自分で確認し、募集の段階で説明できるようにしておくと、後から話が止まる場面が減ります。隠す話ではなく、条件として先に出す話です。同じことは、崖や法面を抱えた敷地、盛土の上に建つ家についても当てはまります。
匂坂の周辺のように農業振興地域の農用地区域が広がる場所では、宅地への転用が想定されていない土地が含まれます。宅地と農地が一体で登記されている実家では、宅地部分だけを先に売れるのか、農地は農地として耕作する人へ引き継ぐのかという整理が要ります。手続きは農業委員会が窓口になります。ここを飛ばして募集を始めると、買主が現れてから引渡しができないことが分かる、という順番の逆転が起こります。
森町や、笠原の茶園が広がる袋井市の南側のような地域では、家と農地と作業場が一続きになっている実家が珍しくありません。買主の候補も、住宅として使いたい人だけでなく、事業や耕作を続けたい人に広がります。こうした物件は、広く募集する仲介よりも、地域に情報が届くバンクや、地元の事情に詳しい業者を通した打診のほうが結果につながることがあります。届く範囲の広さより、届く相手の質で選ぶ場面です。
遠州の気候も、売り方に影響します。冬の空っ風で瓦がずれる、台風で雨樋やカーポートの屋根材が飛ぶ、無人の家では気づかないまま雨漏りが進む。募集を長く続ける前提を取るなら、その間の点検と修繕をどうするかを先に決めておく必要があります。逆に、これ以上の劣化を止めたいという理由が強いなら、現況のまま引き渡せる経路を選ぶ判断にも根拠が立ちます。傷みは待っていても止まりません。
市町の窓口へ行くときに聞く内容も決めておきましょう。空き家バンクの正式名称と担当課、登録できる物件の条件、登録から公開までの流れ、契約実務を担う業者との連携の形、そして改修や取得に使える補助の制度があるかどうか。補助は年度ごとに内容も予算も変わり、募集の時期が限られていることが多いため、金額や条件を記事や口伝えで決めつけず、必ずその年度の公式の案内で確認してください。
売り方を決めるまでの間も、管理は続ける前提でいてください。空家等対策の法律には、そのまま放置すれば著しく状態が悪くなるおそれのある空き家について、市町村が助言や指導、勧告を行える仕組みが定められています。勧告を受けた場合には、土地の固定資産税で住宅用地の特例の対象から外れる取扱いがあるとされています。草刈りと通風、郵便物の回収、台風の後の外観確認。この程度でも、募集中の見え方と近隣との関係はかなり変わります。
最後に、経路を決めた後も見直しの日を残しておくことをおすすめします。募集を始めて三か月経ったら、問い合わせの数と内覧の数と、寄せられた質問を並べて振り返る。動いていないなら、価格なのか、条件なのか、届いている相手なのかを分けて考える。バンクに載せているなら、掲載の内容が今の状態と合っているかを確かめる。決めたことを定期的に点検する仕組みがあるだけで、家が塩漬けになる時間はずいぶん短くなります。
- 地区の道路の幅と接道条件を確認し、隣地への打診の可否を検討する
- ハザードマップで浸水想定を調べ、募集時に説明できる形にしておく
- 農地を含む場合は農業委員会へ、宅地と分けて売れるかを先に相談する
- 市町の窓口で、バンクの登録条件と補助制度の有無を年度ごとに確認する
- 三か月後の見直し日を決め、問い合わせ数と内覧数を記録しておく
図3地元で買い手が想像できるか、建物がそのまま使えるか
このページ固有の確認メモ
ここからは「空き家バンク・仲介・買取はどう違う?実家の売り方を選ぶ前の整理」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。
確認しておく事実
この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。
- 空き家バンクは情報を載せる仕組みで、市町は契約の当事者にならないのが原則
- 仲介は買主を探す契約、買取は業者自身が買主になる取引
- 媒介契約は一般・専任・専属専任の三種で、有効期間は原則三か月以内
- 仲介の報酬は成功報酬で、上限は法令に基づく告示で決まっている
- 比べるのは査定額ではなく、費用を引いた手取りと入金の日付
- 売れるまでの固定資産税・保険・草刈り・交通費を比較表に必ず足す
- 接道、建築年、残置物、境界、農地、区域区分が経路を先に絞り込む
- 併用の可否は市町の要綱と媒介契約の型の両方で決まる
避けたい判断
この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。
- バンクに登録すれば市が買主を探して売ってくれると思い込む
- 査定額の高さだけで依頼先を決め、根拠を聞かない
- 現況渡しと解体後で前提が違う査定を並べて比べてしまう
- 売れるまでの保有費を計算に入れないまま買取を割高だと決める
- 接道や再建築の条件を確かめないうちに解体の日程を先に決める
- 成約後にバンクの掲載を取り下げず、問い合わせだけが続く
- 共有名義であることに気づかず、一人で媒介契約を結んでしまう
手元で探すもの
見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。
- 登記名義と共有者の有無
- 境界標と地積測量図の有無
- 前面道路の種類と幅員、接道の状況
- 建物の建築年と主な不具合
- 残置物の量と処分費の概算
- 登記地目と区域区分、農地の有無
- 年間の固定資産税と保険料
- 草刈り・巡回・交通費の年額
- 希望する引渡しの時期と締切日
- 家族の窓口担当と下限価格の合意
- 市町の空き家バンクの名称と担当課
- 査定の前提を書いた共通の紙
よくある質問
空き家バンクに登録すれば、市が売ってくれるのですか
原則としてそうではありません。空き家バンクは市や町が空き家の情報を登録して公開する仕組みで、市町は売買契約の当事者にも媒介者にもならないのが一般的です。価格の交渉や契約書の作成は、自治体と協定を結んだ宅地建物取引業者などが担う運用が多く見られます。名称や運用は市町ごとに違うため、実家のある市町の担当課で確認してください。
空き家バンクなら手数料はかからないのですか
登録そのものに費用がかからない自治体は多いのですが、契約の実務を宅地建物取引業者が担う場合、その業者への報酬は別に発生し得ます。仲介の報酬の上限は法令に基づく告示で決まっており、価格が低く手間のかかる空家等については上限を三十万円と消費税とする取扱いもあります。金額と根拠は着手の前に書面で確認してください。
買取は必ず安くなりますか
市場で募集した場合の想定より価格が下がるのが通常です。ただし比べるのは提示額ではなく手取りです。残置物の処分費、修繕費、募集が長引いた場合の固定資産税や保険料、往復の交通費まで足すと差が縮むことがあります。査定の前提をそろえて、同じ様式で引き算した金額で比べてください。
仲介と買取を両方使うことはできますか
一定期間は募集し、売れなければあらかじめ決めた価格で業者が買い取るという組み合わせを扱う業者があります。使えるかどうかは物件や業者の条件によります。検討する場合は、募集する期間、買い取る価格、価格を見直す条件、対象から外れる事由の四つを書面で受け取ってください。
名義が親のままでも査定や登録はできますか
査定を受けたり相談したりする段階では進められることが多いのですが、実際に売るには名義を整える必要があります。相続によって取得したことを知った日から三年以内に登記の申請をする義務が定められ、過去の相続にも経過措置があります。遺産分割がまとまらないときの申告の仕組みもあるため、司法書士へ早めに相談してください。
農地が付いている実家でも同じように売れますか
扱いが変わります。登記の地目が田や畑であれば売買に農業委員会が関わり、耕作をやめてから年数が経っていても対象になり得ます。農業振興地域の農用地区域に当たる土地では、宅地への転用が想定されていない場合もあります。募集を始める前に、宅地部分と農地を分けて売れるかを含めて市町の農業委員会へ確認してください。
公式出典・確認先
制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。
- ふじがおか実家カルテ|住所で分かること(fudosan.atawi.link)カルテで整理する範囲と、現地・専門家確認が必要な範囲を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続登記の申請義務化について(www.moj.go.jp)相続登記の基本的義務、遺産分割成立後の追加的義務、経過措置を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続人申告登記について(www.moj.go.jp)遺産分割がまとまらない場合の申告登記と必要書類を確認確認日:2026-08-27
- 国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(www.mlit.go.jp)管理不全空家等・特定空家等に関する制度と指針を確認確認日:2026-08-27
- 国土交通省|空き家対策 特設サイト(www.mlit.go.jp)管理不全空家制度の概要と所有者が行う管理の考え方を確認確認日:2026-08-27
- 国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(www.nta.go.jp)適用期間、対象家屋、相続人数による控除限度額等を確認確認日:2026-08-27

