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実家の建物が登記されていない?固定資産税は来るのに登記がない場合

固定資産税の納税通知書は毎年届いているのに、法務局で調べると建物の登記が出てこない。実家の片づけや売却の相談では、この食い違いが珍しくありません。市町村の課税と法務局の登記は目的の違う制度で、片方に載っていることが、もう片方に載っている証明にはならないからです。磐田市や袋井市の古い住宅地、掛塚や豊田の農家住宅では、母屋は登記されていても、後から建てた離れ・作業小屋・車庫だけが登記されていない例がよく見つかります。このページでは、未登記かどうかを確かめる順番、相続のときの書き方、売買と解体で必要になる届出、表題登記にかかる費用と期間の見当を、窓口ごとに分けて整理します。

実家の建物が登記されていない?固定資産税は来るのに登記がない場合について家族が資料を確認し、次の順番を話し合う写真風イメージ

まず結論

最初にやることは登記の依頼ではなく、事実の確定です。納税通知書の家屋欄に家屋番号があるかを見て、法務局で地番から建物を探し、市町村で名寄帳を取り、現地の棟数と突き合わせる。この四つで、どの建物が未登記なのかがほぼ判明します。そのうえで相続人と名義の状態を確かめ、売る・持つ・壊すのどれに向かうかを家族で決めてから、土地家屋調査士や司法書士に具体的な依頼をします。順番を逆にすると、後から出てきた建物のために費用と日程をやり直すことになります。

実家の建物が登記されていない?固定資産税は来るのに登記がない場合で住所と地番を示すピクトグラム
住所と地番実家の建物が登記されていないで最初に見る「住所と地番」
実家の建物が登記されていない?固定資産税は来るのに登記がない場合で筆と棟を示すピクトグラム
筆と棟土地建物の数を一覧化
実家の建物が登記されていない?固定資産税は来るのに登記がない場合で権利資料を示すピクトグラム
権利資料紛失と権利の有無を分ける
実家の建物が登記されていない?固定資産税は来るのに登記がない場合で不一致を示すピクトグラム
不一致課税・登記・現況を比較

課税されていることと、登記されていることは別の制度

固定資産税が毎年課されている建物でも、法務局には何も記録が残っていないことがあります。この章では、市町村の課税台帳と法務局の登記記録が別々に作られている理由と、納税通知書のどこを見れば未登記の手掛かりが得られるかを扱います。

登記は、その不動産に誰のどんな権利があるかを外に示すための記録です。対して固定資産税の台帳は、その年の税額を計算するために市町村が持っている記録です。目的が違うので、作る主体も更新のきっかけも違います。市町村は職員が地域を回って家屋を把握し、登記の有無にかかわらず課税します。未登記のまま課税されている家屋は、登記簿とは別の帳簿に載せられます。呼び名は自治体で異なり、家屋補充課税台帳、未登記家屋課税台帳などと案内されます。つまり納税通知書が届いていることは、その建物が課税対象として把握されている証拠ではあっても、登記されている証拠にはなりません。

なぜ登記されないまま残るのか。建物を新築したときは、原則として所有権を取得した日から一か月以内に表題登記を申請することが不動産登記法で定められています。それでも未登記が残るのは、借入をせずに自己資金で建てた場合に、登記を求める相手がいなかったからです。住宅ローンを使えば、金融機関が抵当権を設定する必要から所有権保存登記まで進みます。逆に、農家住宅の建て替え、後から足した離れ、大工に頼んだ納屋や車庫は、誰からも催促されないまま今日に至ります。昭和期に建てられた家では、この経緯で母屋だけが登記され、周りの建物が置き去りになっている例が多く見つかります。

手元の納税通知書と課税明細書を開いて、家屋の欄を一行ずつ見てください。登記されている家屋には家屋番号があり、明細にその番号が印字されているのが通常です。未登記の家屋には家屋番号が振られないため、欄が空いていたり、記号や「未登記」の文字が添えられていたりします。表記の仕方は自治体ごとに違うので、明細の見方そのものを市の資産税担当に電話で尋ねてかまいません。このとき「うちの建物は登記されていますか」と聞くのではなく、「この明細のこの行に家屋番号がないのはどういう意味か」と、行を指して尋ねると話が早く進みます。

次に、明細に並んでいる家屋の棟数と、現地に建っている棟数を突き合わせます。母屋のほかに、離れ、納屋、物置、車庫、風呂場の増築部分が残っていないか。屋根と三方以上の壁があって土地に定着し、その用途に使える状態のものは、原則として家屋として課税の対象に扱われます。柱と屋根だけのカーポートや、基礎のない置き型の物置は対象にならないことがあります。数が合わないときは、課税されていない未登記の建物がある可能性と、逆に取り壊し済みなのに課税が残っている可能性の両方を疑ってください。

食い違いは片方向とは限りません。登記だけが残っていて、建物はとうに解体されているという形もあります。取り壊したときに市町村へ届け出ず、法務局にも建物滅失登記を出さなかった場合です。この状態のまま土地を売ろうとすると、買主側の司法書士から登記簿上の建物が残っていると指摘され、決済の直前に滅失の手続きが要ることになります。台風で倒れた小屋、遠州の空っ風で屋根が飛んだあとに片づけた作業場なども、記録の上では生き続けます。

実際につまずくのは、たいてい話が進んでからです。課税明細だけを持って買主と条件を詰め、契約日を決めたあとで離れが未登記だと分かる。表題登記には現地調査と図面作成の時間が要るため、決済の日程を組み直すことになります。解体でも同じで、見積書に載っていない建物が出てくると追加費用の相談になります。先に事実を確定しておけば、費用も日程も交渉の材料として扱えます。

確認したことは、その場で三つの状態に分けて書き残してください。資料で裏づけが取れた「確認済み」、まだ見ていない「未確認」、専門家か公式窓口の判断が要る「要確認」の三つです。確認済みには根拠にした資料名と確認日を、未確認には次に誰が何を見るかを、要確認にはどの分野の専門家かを添えます。家族で手分けするときも、この三列がそろっていれば、途中から加わった人が同じ場所から続けられます。

窓口は二つに分かれます。課税に関することは市町村の資産税担当、登記に関することは法務局です。磐田市・袋井市・森町・掛川市に実家がある場合でも、登記の管轄は市の区域と一致しないことがあるため、出向く前に法務局のウェブサイトか電話で管轄を確かめてください。窓口では「未登記かどうかを調べたい」と用件を先に伝えると、必要な情報と手数料の案内をまとめて受けられます。

  • 納税通知書と課税明細書を用意し、家屋の行ごとに家屋番号の有無を確かめる
  • 明細に並ぶ家屋の棟数と、現地に建っている棟数を数えて突き合わせる
  • 母屋だけでなく、離れ・納屋・物置・車庫・増築部分を一棟ずつ書き出す
  • 取り壊し済みなのに課税や登記の記録が残っている建物がないかを確かめる
  • 分かったことを確認済み・未確認・要確認の三つに分け、日付とともに残す
課税台帳と登記記録は、作る目的も更新のきっかけも違う
見る点市町村の課税台帳法務局の登記記録
目的その年の固定資産税額を計算する権利関係を公示して第三者に示す
更新のきっかけ市町村の家屋調査と所有者の届出所有者からの申請
未登記の建物別の帳簿に載せて課税する記録そのものが存在しない
名義を直す方法所有者変更などの届出を出す表題登記・保存登記・相続登記

図1未登記かどうかを確かめる六つの手順

未登記かどうかを確かめる六つの手順上から順に進めると、途中で結論を急がずに済みます。三段目までで多くの家は答えが出ます。四段目以降は、資料と現地が食い違ったときに効いてきます。1地番を確定する住居表示と地番は別の表示です。納税通知書、権利証、公図のいずれかから、土地の地番を正確に写し取る。2課税明細で家屋番号を見る家屋の行に家屋番号があるか。空欄や記号だけの行があれば、その建物は未登記の可能性が高い。3法務局で建物を探す地番から、その土地上の建物の登記記録を請求する。何も出てこない建物、図面のない建物を控える。4名寄帳で棟数をそろえる市町村で名寄帳を取り、同じ名義で課税されている土地と家屋を一覧にする。相続人は戸籍等を添えて請求する。5現地の棟数と照合する母屋・離れ・納屋・車庫・増築部分を写真と配置図で数え、資料側の棟数と合わない箇所を書き出す。仕分三つに分けて一度止める確認済み・未確認・要確認に分けたところで手を止める。ここから先の判断は、資料がそろってからで間に合う。この段階では登記の申請も解体の契約もしない。事実を並べるところまでで十分。
上から順に進めると、途中で結論を急がずに済みます。三段目までで多くの家は答えが出ます。四段目以降は、資料と現地が食い違ったときに効いてきます。

どの建物が抜けやすいか——資料の取り寄せと現地の数え方

疑いを確信に変えるには、法務局と市町村の二か所から資料を取り、現地の棟数と並べる作業が要ります。この章では、何をどこで取り、どこを見れば食い違いが見つかるかを順に扱います。

最初の関門は地番です。玄関に掲げられた住所は住居表示または町名地番で、登記で使う地番と一致しないことがあります。納税通知書の土地の欄、古い権利証、売買契約書、公図のいずれかに地番が載っています。どれも見つからない場合は、法務局でブルーマップを閲覧するか、市町村の窓口で課税上の所在地を確かめます。ここで地番を取り違えると、実際には登記のある建物を未登記だと誤って結論づけてしまいます。

法務局では、まず土地の登記事項証明書を取り、続いてその土地の上にある建物を探します。申請書に地番を書いて建物を請求すると、その地番上に登記された建物の記録が出てきます。何も出てこなければ、その土地には登記された建物がないということです。建物図面・各階平面図も併せて請求してください。図面が保管されていない古い建物もありますが、あれば形と位置の裏づけになります。オンラインの登記情報提供サービスでも同じ内容を確認できますが、利用登録と手数料が必要です。

法務局の窓口では、証明書と要約書のどちらを取るかも選べます。要約書は手数料が抑えられますが、認証の文言が付かないため、金融機関や専門家へ提出する場面では証明書を求められます。手元での確認だけなら要約書、人に渡すなら証明書、と使い分けてください。あわせて共同担保目録を付けて請求すると、同じ担保に入っているほかの土地や建物が分かり、把握していなかった不動産が見つかることがあります。窓口が開いているのは平日の日中に限られるので、遠方から動く場合は、請求したい物件の一覧を作ってから一度で済ませます。

「出てこない=未登記」と決める前に、二つ確かめます。ひとつは、敷地が複数筆にまたがっていないか。母屋が隣接する別の筆の上で登記されていることがあります。もうひとつは、建物が建っている筆と、課税明細に載っている筆が同じか。分筆や合筆を経た土地では、古い地番のままの記憶と現在の地番がずれています。土地の筆を全部並べてから、それぞれの筆について建物を探すのが安全です。

市町村側で効くのが名寄帳です。固定資産課税台帳を所有者ごとにまとめたもので、その市町内でその人に課税されている土地と家屋が一覧になります。亡くなった人の名義のままでも、相続人であれば戸籍などで関係を示して請求できます。手数料と必要書類は自治体ごとに違うので、出向く前に電話で確かめてください。名寄帳を見ると、家族が把握していなかった畑や山林、離れへの課税が出てくることがあります。

資料がそろったら現地です。敷地の四隅から全体を撮り、建物ごとに近景を撮ります。母屋、離れ、納屋、車庫、物置、下屋、渡り廊下、風呂やトイレの増築部分を一棟ずつ番号で呼び、簡単な配置図に落とします。屋根と壁があって基礎で土地に固定されているものは、家屋として数える方向で考えておくと漏れが減ります。傷んだトタンの小屋や、農機具を入れている作業場も対象に含めて数えてください。

母屋そのものが登記されていても、増築部分が登記に反映されていないことがあります。登記事項証明書の床面積、課税明細の床面積、現況の三つを並べ、どこがどれだけ違うかを数字で書き出してください。登記は八十平方メートル、課税は百平方メートル、現況には和室の増築が見える、といった具合です。差があるからといって、直ちに違法だと決めつける必要はありません。必要なのは、差がどこにあるかを人に示せる状態にしておくことです。

借地の上に建っている建物、農地の一角に建てた作業小屋、共有名義の土地の上の建物は、扱いが分かれます。借地上の建物については、建物の登記が第三者との関係で意味を持つ規定があるため、未登記のまま長く置くことは避けたほうがよいと説明されます。匂坂の周辺のように農振農用地が広がる区域では、建物の敷地が農地として扱われていないかの確認も要ります。いずれも自分で結論を出さず、確かめたい点をメモにしてから相談してください。

よくある失敗は、母屋だけを調べて安心することです。売却の話が進んでから離れと車庫の未登記が判明し、表題登記の追加、費用の見直し、決済日の変更が一度に降りかかります。もうひとつは、家族の記憶を資料の代わりにすることです。「あの物置は登記してあるはずだ」という記憶は、裏づけが取れるまで未確認の欄に置いてください。

  • 土地の筆をすべて洗い出し、筆ごとに建物の登記記録を探したかを確かめる
  • 建物図面・各階平面図の有無を、登記事項証明書と併せて請求する
  • 市町村で名寄帳を取り、課税されている土地と家屋の全件を一覧にする
  • 敷地の全景と建物ごとの近景を、撮影日が残る形で保存する
  • 登記の床面積・課税の床面積・現況の三つを並べ、差を数字で書き出す
取り寄せる資料と、そこから分かること
資料どこで取るか分かること
土地の登記事項証明書法務局地番・地積・名義・担保の有無
建物の登記事項証明書法務局その地番上に登記された建物があるか
建物図面・各階平面図法務局登記された建物の位置と形。保管のない場合もある
名寄帳市町村の資産税担当同じ名義で課税されている土地と家屋の一覧
固定資産評価証明書市町村の資産税担当家屋ごとの評価額と床面積。登記費用の計算にも使う

相続では、登記がなくても所有権は移る

未登記の建物にも所有権はあり、当然に相続の対象になります。この章では、遺産分割協議書での書き方、市町村へ出す届出、放置したときに増える負担を扱います。

登記がないことは、所有者がいないことを意味しません。建てた人の所有物であり、その人が亡くなれば相続人に承継されます。ですから遺産分割の話し合いでは、未登記の建物も財産の一覧に載せなければなりません。一覧から漏れたまま協議書を作ると、後で誰のものかを決め直すために、もう一度相続人全員の署名と押印を集めることになります。離れや納屋は特に忘れられやすいので、名寄帳の家屋欄と現地の棟数を先にそろえておいてください。

相続登記の申請義務については、法務省が制度の内容と経過措置を案内しています。この義務は、登記されている不動産の所有権の登記名義人について定められたものです。表題登記すらない建物をどう扱うかは、建物の状況や資料の残り方で進め方が変わるため、法務局または司法書士に個別に確かめてください。遺産分割がまとまらない場合の相続人申告登記についても、対象と必要書類が案内されています。土地は登記されているのに建物だけが未登記という組み合わせでは、まず土地の側の期限管理が先に来ます。

遺産分割協議書に未登記建物を書くときは、家屋番号がないぶん、ほかの情報で特定します。市町村の課税台帳に載っている所在、種類、構造、床面積をそのまま書き写し、未登記である旨を明記するのが実務でよく採られる方法です。母屋と附属の建物は一棟ずつ分けて書きます。その書き方が後の表題登記や届出でそのまま使えるかどうかは、依頼する司法書士や土地家屋調査士に事前に見てもらうと確実です。

名義を実態に合わせるには、市町村への届出が要ります。未登記の家屋について所有者が変わったことを届け出る様式が用意されており、名称は自治体によって違います。届け出ないと、翌年度以降も亡くなった人あてに納税通知が届き続けます。あわせて、相続人の中から代表者を決めて届け出る手続きもあります。どちらも税額そのものを変えるものではありませんが、通知の宛先と連絡先を実在の人に付け替える意味があります。

分け方にも注意が要ります。母屋は長男、離れは次男、土地は共有、といった分け方は、その場では公平に見えても、売るときに全員の合意が要る状態を作ります。同じ敷地に建つ建物は、土地と一体で動くのが実際です。誰が住み続けるのか、いつか売るのか、当面は空けておくのかを先に話し、それに合う分け方を選ぶほうが、後の手続きが軽くなります。

時間が経つと当事者が増えます。最初の相続で三人だった相続人が、その一人が亡くなることで五人、七人と枝分かれしていきます。連絡が取れない人、遠方の人、面識のない人が混ざると、書類を一巡させるだけで数か月かかります。未登記の建物は、この状態でいちばん扱いにくい財産になります。何も決められないうちでも、相続人の範囲と連絡先だけは先に確定しておいてください。

税の申告でも、未登記だからといって対象から外れるわけではありません。相続税の申告が必要な家庭では、未登記の建物も相続財産として扱われます。家屋の評価については固定資産税の評価額を基礎とする取扱いが案内されており、名寄帳や評価証明書に載っている数字がそのまま資料になります。登記がないことを理由に財産の一覧から外すと、後で申告の内容を直すことになりかねません。実際にどう扱うかは、資料をそろえたうえで税理士に確かめてください。

借地の上の建物や、共有名義の土地の上の建物は、相続の場面で追加の確認が要ります。地主との契約がどうなっているか、地代を誰が払ってきたか、名義の変更に承諾が要るのか。共有であれば、持分の割合と共有者の現住所を登記のとおりに書き出します。これらは一般論では決められない部分なので、確かめたい事項を一覧にして専門家へ渡すのが早道です。

依頼先は役割で分かれます。戸籍の収集、相続人の確定、遺産分割協議書、所有権保存登記や相続に伴う登記は司法書士。建物の表題登記、表題部の変更、取り壊し後の滅失登記、土地の測量は土地家屋調査士。譲渡所得や相続税の判断は税理士。課税と届出は市町村の資産税担当。最初の相談で「何が分からないか」を三つ以内に絞っておくと、見積もりも回答も具体的になります。

  • 名寄帳と現地の棟数を突き合わせ、財産の一覧に未登記の建物を漏れなく載せる
  • 協議書には所在・種類・構造・床面積を課税台帳のとおりに書き写す
  • 市町村へ未登記家屋の所有者変更にあたる届出と、代表者の届出を確かめる
  • 母屋と離れを別々の人に分ける前に、土地と一体で動く前提で話し合う
  • 相続人の範囲と現住所、連絡が取れているかを一覧にして共有する
未登記の建物を相続したときの、窓口と頼むことの割り振り
場面窓口・依頼先出すもの・頼むこと
相続人を確定したい司法書士戸籍の収集と相続関係説明図の作成
納税通知の宛先を直したい市町村の資産税担当所有者変更にあたる届出と代表者の届出
建物を登記したい土地家屋調査士現地調査、図面作成、表題登記の申請
所有者として記録したい司法書士表題登記のあとの所有権保存登記
税の扱いを知りたい税理士・税務署譲渡所得や相続税での取扱いの確認

図2未登記の実家建物をめぐる、四つの立場

未登記の実家建物をめぐる、四つの立場登記がない建物は、役所も法務局も自動では直してくれません。誰が何を担当するのかを先に分けておくと、同じ説明を窓口ごとに繰り返さずに済みます。未登記のままの実家の建物所有権はあるのに、登記記録だけがない状態相続人全員登記がなくても所有権は相続される。売る・壊す・分けるの判断には、原則として相続人全員の合意が要る。市町村の資産税担当未登記家屋の課税台帳を持つ窓口。名寄帳の交付、所有者変更の届出、取り壊しの届出はここへ。土地家屋調査士建物の表題登記、増築部分の表題部変更、取り壊し後の滅失登記。現地を測って図面を作る役割。司法書士所有権保存登記、相続に伴う登記、遺産分割協議書の作成。戸籍で相続人を確定する場面も担う。権利を持つ課税を扱う形を登記する権利を登記する市町村へ届け出ても登記はされず、登記をしても課税台帳が自動では直らない場面がある。両方に手を入れる。
登記がない建物は、役所も法務局も自動では直してくれません。誰が何を担当するのかを先に分けておくと、同じ説明を窓口ごとに繰り返さずに済みます。

売るとき、壊すときに必ず出てくる手続き

未登記のままでも売買の合意はできますが、買主に登記を移すことはできません。この章では、売却の三つの分岐と、解体のときに出す届出、税と補助の順番を扱います。

未登記のままでも、当事者どうしの合意で売買契約を結ぶこと自体はできます。しかし買主へ所有権移転登記をすることはできません。登記記録がない以上、権利を移す先の記録がないからです。買主が住宅ローンを使う場合、金融機関は担保として抵当権を設定するので、登記されていない建物は担保に取れません。結果として、現金で買える相手を探すか、売主側で登記を済ませるか、解体して更地で引き渡すかの三択になります。

三択にはそれぞれ負担があります。売主が表題登記と所有権保存登記まで済ませてから引き渡す方法は、費用と時間が売主に乗りますが、買主の幅が広がり価格の交渉もしやすくなります。現況のまま引き渡して買主が登記する前提にする方法は、買主が手間と不確実性を引き受けるぶん、価格に反映されます。解体して更地にする方法は分かりやすい一方で、後戻りができません。どれを選ぶかは、建物の傷み方と、急ぐ理由があるかどうかで変わります。

仲介を通す場合、建物が未登記であることは買主に説明すべき事項として扱われます。伏せたまま契約を進めると、引き渡し後に紛争になります。逆に、離れと車庫が未登記である、増築部分が登記に反映されていない、と資料付きで先に示せていれば、条件の話として整理できます。買主側の金融機関や司法書士から追加の資料を求められることもあるので、集めた資料は写しをまとめて渡せる形にしておくと進みが早くなります。

解体するときは、登記の有無で手続きが分かれます。登記されている建物を取り壊した場合は、法務局へ建物滅失登記を申請します。不動産登記法では、取り壊した日から一か月以内に申請することとされています。未登記の建物には登記記録がないので滅失登記はできず、代わりに市町村へ家屋を取り壊した旨の届出をします。どちらも出し忘れると、翌年度以降も課税や登記の記録が残り続け、売却の直前に慌てて処理することになります。

壊す前に確かめておくことがあります。名義と相続人、敷地の境界、道路への接し方、隣家との距離、そして補助制度の申請時期です。解体費の補助を設けている自治体では、交付決定より前に着工した工事は対象外とされる取扱いが一般的なので、見積もりを取る段階で市の担当課に確かめてください。境界が未確定のまま建物を壊すと、目印にしていた壁や塀がなくなり、後の測量が難しくなることもあります。

税の面でも順番が効きます。固定資産税は毎年一月一日時点の状況で課されるため、年内に壊すか年明けに壊すかで翌年度の扱いが変わります。住宅が建っている土地には住宅用地の特例があり、原則として課税標準が軽減されています。建物を壊すとこの特例から外れ、土地の税額が上がることがあります。上がる幅は評価額と面積で変わるので、解体を決める前に市町村の資産税担当へ、更地にした場合の見込みを尋ねておくと判断材料になります。

相続した家を売る場合は、被相続人の居住用財産に関する特別控除の取扱いがあります。国税庁の案内では、対象になる家屋の建築時期、相続開始の直前にどう使われていたか、譲渡対価の上限、耐震基準への適合または取壊しといった要件が示されています。相続人の数によって控除の限度額が変わる取扱いもあります。未登記の建物では、要件の確認に求められる書類がそろわないことがあるため、売る順番を決める前に、確認書を扱う市町村の窓口と税務署、そして税理士に適用の可否を確かめてください。

貸す道を選ぶ場合も、登記の状態は先に確かめておいてください。未登記でも火災保険を掛けられることはありますが、契約のときに建物の面積、構造、建てた年を申告する必要があり、資料がないと手続きが止まります。入居者が入ったあとで表題登記をしようとすると、現地の調査に立ち入りの調整が要り、日程が読みにくくなります。募集を始める前に、建物の情報を紙の上で確定させておくほうが、後の手間は少なくて済みます。

遠州の現場では、道路の条件が費用を左右します。掛塚のように細い道が入り組む区域では、大型の重機やダンプが入れず、手壊しと小運搬で解体費が上がります。台風のあとに屋根が傷んだままの空き家や、冬の空っ風で外壁が痛んだ納屋は、置くほど処分費が増えます。見積もりを取るときは、前面道路の幅、電線の位置、隣家との距離、残置物の量を写真で伝えると、現地を見る前の概算が実際に近くなります。

  • 買主が融資を使う前提かどうかを、条件を詰める前に確かめる
  • 未登記であることと増築の未反映を、資料の写しとともに早い段階で開示する
  • 解体前に名義・相続人・境界・接道・補助の申請時期をひととおり確認する
  • 取り壊したら、登記済みは滅失登記、未登記は市町村への届出を必ず出す
  • 更地にした場合の翌年度の土地税額の見込みを、資産税担当に尋ねておく
取り壊したあとに出す先は、登記の有無で変わる
建物の状態出す先手続きの呼び名
登記されている建物法務局建物滅失登記の申請
未登記の建物市町村の資産税担当家屋を取り壊した旨の届出
一部だけを取り壊した法務局と市町村の両方表題部の変更登記と課税上の届出

表題登記の費用と期間、そして「登記しない」を選べる場面

登記する作業は表題登記と所有権保存登記の二段構えで、担当する専門家も分かれます。この章では、必要な資料、期間と費用の考え方、登記しないという判断が成り立つ条件を扱います。

未登記の建物を登記する作業は、二段構えです。まず建物の物理的な情報を記録する表題登記があり、これは土地家屋調査士が扱います。次に、誰が所有者かを記録する所有権保存登記があり、こちらは司法書士が扱います。売買や担保のために必要なのは、二段目まで済んだ状態です。相続が絡む場合は、その前に相続人の確定と遺産分割の合意が要るので、実際には三つの作業が順番に並びます。

表題登記には、建物の図面と、その建物が申請人のものであることを示す資料が要ります。図面は建物図面と各階平面図で、調査士が現地を測って作ります。所有を示す資料としては、建築確認済証と検査済証、施工した業者の工事完了引渡証明書とその印鑑証明書、固定資産税の課税証明書や納税証明書などが挙げられます。加えて申請人の住民票が要ります。古い建物では確認済証も業者の証明書も残っていないことが多く、何を組み合わせれば足りるかは、調査士が法務局と相談しながら詰めることになります。

資料がまったくない建物でも、道が閉ざされるわけではありません。課税の記録が古くから続いていること、当時の写真、電気や水道の使用開始の記録、施工に関わった人の証言などを組み合わせて所有を示していく進め方があります。ただし何が採用されるかは事案ごとに違うため、最初の相談で「資料はこれしかない」と正直に伝えることが大切です。伝えずに進めると、途中で追加の調査が要ることになり、見積もりも期間も膨らみます。

期間の見当です。依頼から完了までは、現地調査、図面の作成、資料の収集、申請、登記完了という流れをたどります。資料がそろっていて建物が一棟なら、数週間で終わることがあります。附属の建物が複数ある、資料が欠けている、相続人の署名を集める必要があるといった条件が加わると、数か月かかることもあります。売却の期日が決まっているなら、そこから逆算して余裕を持たせてください。決済日を先に決めてから登記に着手するのが、いちばん苦しい進め方です。

費用は、専門家への報酬と、国に納める税金に分かれます。表示に関する登記には登録免許税が原則としてかからない扱いですが、所有権保存登記には不動産の価額に応じた登録免許税がかかります。軽減の取扱いには要件があるため、該当するかどうかは依頼先に確かめてください。報酬は事務所ごとに設定が違い、建物の規模、階数、附属建物の数、資料の欠落の程度で上下します。目安を一般論で決め打ちせず、建物の概要と手元の資料を伝えて、複数の事務所から見積もりを取るのが確実です。

見積もりを頼むときは、用件を一文にまとめると話が早くなります。たとえば「市内の土地の上にある未登記の母屋一棟と物置二棟について、表題登記と所有権保存登記の費用を知りたい。手元にあるのは固定資産税の課税明細だけで、建築確認済証は見つからない」といった具合です。所在地、棟数、目的、手元の資料、期日の五つが入っていれば、電話一本でおおよその範囲が返ってきます。相続や売却と同時に進めるなら、まとめて頼んだときの総額も聞いておくと比較しやすくなります。

「今は登記しない」という判断が成り立つ場面もあります。当面売る予定がなく、家族の誰かが住み続ける場合。近いうちに解体することが決まっていて、更地で売る方針が固まっている場合。登記の費用をかけても、壊せば滅失の手続きが要るだけです。ただし放置には別の負担があります。相続が重なるほど当事者が増え、資料も証言も失われていきます。登記しないと決めたなら、その判断と理由、次に見直す時期を記録に残しておいてください。

最後に順番です。地番と棟数を確定する、資料を取り寄せて食い違いを書き出す、相続人と名義の状態を確かめる、売る・持つ・壊すのどれに向かうかを家族で決める、それから専門家へ具体的に依頼する。この順で進めば、途中で方針が変わっても、それまでの作業がむだになりません。逆に、先に解体や登記を発注してしまうと、後から出てきた事実に合わせて費用を払い直すことになります。

  • 表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士と、依頼先を分けて考える
  • 確認済証・検査済証・引渡証明書・課税証明書の有無を先に洗い出す
  • 所在地・棟数・目的・手元資料・期日の五つを伝えて見積もりを取る
  • 売却の期日から逆算し、現地調査と資料収集の時間を先に確保する
  • 登記しないと決めた場合も、理由と次に見直す時期を記録に残す
表題登記に添える資料の候補と、見つからないときの考え方
資料役割見つからないとき
建築確認済証・検査済証建てた時期と建築主を示す市町村で台帳記載事項の証明が取れるか尋ねる
工事完了引渡証明書施工者から引き渡された事実を示す施工した業者が現存するかを先に確かめる
固定資産税の課税証明書課税上の所有者と床面積を示す市町村の資産税担当で年度を指定して請求する
建物図面・各階平面図建物の位置と形を示す調査士が現地を測って新たに作成する

図3資料が残っているかと、売る予定があるかで動き方を決める

資料が残っているかと、売る予定があるかで動き方を決める選択肢を比べる前に、自分の家がどのマスにいるかを決めます。マスが変われば、同じ表題登記でも急ぎ方と頼み方が変わります。横軸=近いうちに売る・貸す予定があるか / 縦軸=建てたときの資料が残っているか当面は持ち続ける売る・貸す予定がある確認済証や引渡証明が残ってい棟数と名義を先に整える登記は急がず、名寄帳と現地の棟数を合わせ、相続人と資料の保管場所を記録に残す。資料は一か所にまとめる。表題登記から保存登記まで進める資料がそろっていて期間の見通しが立つ。調査士と司法書士に売却の予定日を伝え、逆算した日程を組んでもらう。資料が見つからない資料探しと聞き取りを先に済ませ建てた年、頼んだ大工や工務店、支払いの記録を家族から聞き取って書き留める。年が経つほど確かめられなくなる。登記か解体かを早めに相談する資料が欠けるほど表題登記の手間と費用が増える。更地で売る道と並べたうえで、調査士と仲介者に同時に相談する。どのマスにいても、事実の確定より先に契約書へ署名する場面は作らない。
選択肢を比べる前に、自分の家がどのマスにいるかを決めます。マスが変われば、同じ表題登記でも急ぎ方と頼み方が変わります。

このページ固有の確認メモ

ここからは「実家の建物が登記されていない?固定資産税は来るのに登記がない場合」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。

確認しておく事実

この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。

  • 課税されている事実と、登記されている事実は別々の記録に載る
  • 納税通知書の家屋欄に家屋番号がなければ未登記の可能性が高い
  • 名寄帳を取ると、同じ名義で課税されている土地と家屋が一覧になる
  • 登記がなくても所有権はあり、相続の対象になる
  • 未登記の建物には所有権移転登記ができず、担保にも取れない
  • 取り壊したら、登記済みは滅失登記、未登記は市町村への届出を出す
  • 表題登記は土地家屋調査士、所有権保存登記は司法書士が担当する

避けたい判断

この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。

  • 母屋だけを調べて、離れ・納屋・車庫の未登記を見落とす
  • 地番を取り違えたまま「登記がない」と結論づける
  • 課税明細だけを根拠に、名義や権利を確定したものとして扱う
  • 決済日や解体日を先に決めてから、登記の手続きに着手する
  • 境界や補助制度の申請時期を確かめないまま建物を取り壊す

手元で探すもの

見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。

  • 住居表示と地番
  • 家屋番号の有無
  • 課税明細の家屋の棟数
  • 現地の棟数と配置図
  • 名寄帳
  • 土地の筆数と地目
  • 登記事項証明書(土地・建物)
  • 建物図面・各階平面図
  • 建築確認済証・検査済証
  • 登記・課税・現況の床面積の差
  • 相続人の範囲と連絡先

よくある質問

固定資産税を払っていれば、その建物は自分のものだと言えますか

納税していることは所有を示す事情の一つにはなりますが、それだけで権利が確定するわけではありません。課税台帳は税額を計算するための記録で、権利を公示する登記とは目的が違います。売買や相続で権利を示す必要がある場面では、契約書や登記などの資料と合わせて確認してください。

未登記のままでも実家を売れますか

当事者の合意で契約を結ぶこと自体はできますが、買主へ所有権移転登記ができません。買主が住宅ローンを使う場合は担保設定のために登記が必要になるため、売主側で登記まで済ませるか、解体して更地で引き渡すかを検討することになります。

離れや物置だけが未登記でした。母屋と一緒に登記できますか

母屋の附属建物として登記に加える方法と、独立した建物として登記する方法があります。どちらになるかは用途や構造、位置関係で変わるため、土地家屋調査士に現地を見てもらってから決めてください。

登記していない建物を壊しました。何か届け出ますか

登記記録がないため法務局への建物滅失登記はできませんが、市町村へ取り壊した旨の届出をします。出さないと翌年度以降も課税が続くことがあります。様式と名称は自治体で違うので、資産税担当に確かめてください。

表題登記に必要な書類が何も残っていません。あきらめるしかないですか

確認済証や施工業者の証明書がない建物でも、課税の記録や当時の写真、関係者の証言などを組み合わせて進める方法があります。何が使えるかは事案ごとに違うので、手元にある資料をそのまま示して土地家屋調査士に相談してください。

相続登記の義務化は、未登記の建物にも当てはまりますか

申請義務は、登記されている不動産の所有権の登記名義人について定められたものです。表題登記のない建物の扱いは状況によって異なるため、法務省の案内で制度の骨格を確認したうえで、個別には法務局か司法書士へ確かめてください。土地が登記されている場合は、土地の側の手続きが先に来ます。

公式出典・確認先

制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。

  1. ふじがおか実家カルテ|住所で分かること(fudosan.atawi.link)カルテで整理する範囲と、現地・専門家確認が必要な範囲を確認確認日:2026-08-27
  2. 法務省|相続登記の申請義務化について(www.moj.go.jp)相続登記の基本的義務、遺産分割成立後の追加的義務、経過措置を確認確認日:2026-08-27
  3. 法務省|相続人申告登記について(www.moj.go.jp)遺産分割がまとまらない場合の申告登記と必要書類を確認確認日:2026-08-27
  4. 国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(www.nta.go.jp)適用期間、対象家屋、相続人数による控除限度額等を確認確認日:2026-08-27
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大石 浩之

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役・宅地建物取引士(静岡県知事 第027186号)。静岡県磐田市見付を拠点に、磐田市・袋井市・森町・掛川市・菊川市・御前崎市・湖西市・浜松市で、相続不動産・空き家・実家じまいの相談に対応。家族が次に確認する事項を、判断を急がず、地域の実務と公的情報を分けながら整理しています。