介護費用が増えたとき親の家をどう考える?売却査定の前に見る項目
介護の費用は、少しずつ上がるのではなく段差で上がります。要介護度が変わった月、在宅から施設へ移った月、入院と通院が重なった月に、それまでの家計の前提が一度に崩れます。そこで実家の話が出てくるのですが、いきなり査定を頼んでも、その家がいくらで売れるかより前に、そもそも動かせる状態かどうかが決まっています。このページでは、必要になる額を「いつまでに、いくら」と数字で置くところから始めて、名義と本人の意思、土地の支障、売る以外の手立て、家族で共有する一枚の表まで、確かめる順番で並べます。磐田市・袋井市の周辺で照会できる窓口も添えました。法務・税務・測量・建物についての最終判断は、それぞれの専門家と公式窓口で確認してください。

まず結論
介護費が増えたときの実家は、売る・売らないを決める前に、必要額の見立てと権利の状態を数字で置くほうが結果的に選択肢が増えます。負担を下げる公的な仕組み、名義と意思能力、接道と境界と都市計画上の区分、貸す・借りる・待つの比較、家族で共有する期限表までを、確認する順番でまとめました。
介護費用が増える局面と、これから必要な額の見立て
**費用は段差で増えます。増えた理由を分けたうえで、預貯金が何年もつのかを月額の表にして出すところから始めます。**
費用が跳ねる局面は、おおむね四つに分かれます。要介護度が変わって利用するサービスが増えたとき、在宅から施設や住宅型のホームへ移ったとき、入院や通院と薬が重なったとき、そして世帯の形が変わったとき。四つ目は見落とされがちですが、配偶者が亡くなって遺族年金に切り替わると、同じ支出でも足りなくなる月が急に来ます。どれが起きているのかを先に言葉にすると、次に見る書類が決まります。
手元にそろえる紙は決まっています。介護保険の被保険者証と負担割合証、施設や事業所と交わした契約書と重要事項説明書、直近三か月分の請求書と領収書、年金の振込通知書、医療費の領収書、預金通帳、そして実家の固定資産税の納税通知書。負担割合証は年に一度更新され、所得の状況で一割から三割の区分が変わります。古い証だけを見て計算していると、見立て全体がずれます。
施設の月額は、介護保険が効く部分と効かない部分に分けて読みます。介護保険施設では、原則として施設サービス費が保険の対象となり、居住費や食費、日用品などの日常生活費は保険の外側です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、家賃と管理費と食費という別の性格の費用が並びます。請求書の項目を一つずつ、保険の内か外かで印を付けると、次の章で使う数字が取り出せます。
家を動かす前に、負担そのものを下げる公的な仕組みを確認します。ひと月の自己負担が一定額を超えた分が戻る高額介護サービス費、介護保険施設の居住費と食費について所得や預貯金等の要件で軽減を受ける負担限度額の認定、医療と介護の自己負担を年単位で合算する高額医療・高額介護合算療養費。いずれも申請が前提で、合算の期間は原則として八月から翌年七月までです。該当するかどうかは、市の介護保険を担当する窓口かケアマネジャーに、負担割合証と直近の請求書を持って尋ねるのが早いです。
税の側から負担が戻る余地もあります。医療費控除では、病院や薬局の支払いのほかに、介護保険施設の利用料のうち一定の部分や、医師の証明書がある場合のおむつ代が対象として扱われることがあります。医療の自己負担が重なった月については高額療養費の仕組みもあります。誰の扶養に入っているか、誰が費用を負担しているかで結果が変わるため、領収書と証明書を年ごとにまとめて保管し、対象になるかどうかは税務署か税理士に尋ねてください。
そのうえで、一枚の収支表を作ります。左に収入(本人の年金、家族の給与のうち介護に回せる分、いま賃料が入っているなら賃料)、右に支出(施設の月額、医療費、実家の維持費、交通費)。差額がひと月の取り崩し額です。これを十二倍して年間の取り崩し額を出し、預貯金と換金しやすい資産の合計を割ると、何年もつのかがひとつの数字で見えます。この数字がないまま実家の話を始めると、議論が感情の側にだけ寄っていきます。
実家の維持費も同じ表に入れます。固定資産税と都市計画税、火災保険料、電気と水道の基本料、浄化槽があれば保守点検、草刈りや庭木の剪定を外注する費用、遠方に住む家族の帰省交通費。年に一度や二度の支出は十二で割って月額にならすと、施設費と横に並べて比べられます。遠州は冬の空っ風で飛来物が当たり、夏から秋は台風で瓦や雨樋が傷みます。誰も住んでいない家ほど、傷みの発見が遅れて修繕が高くつきます。
次に「いつまでに」を決めます。実家を売ると決めても、現金が入るまでには時間がかかります。名義が先代のままなら相続登記、境界標がなければ隣地との立会いと測量、残置物の片付け、買主の住宅ローン審査と決済。順調でも数か月、権利関係に未確認が残っていれば半年から一年の幅を見込むほうが安全です。もつ年数から逆算して、動き出す期限を一日だけ決めてカレンダーに書きます。
よくある失敗は両側にあります。ひとつは、資金が尽きてから慌てて売り、買主も時期も条件も選べない状態で手放してしまうこと。もうひとつは、まだ数年は持ちこたえられるのに焦って建物を解体し、住宅用地の特例が外れて翌年度から固定資産税の負担が上がることです。原則として、住宅が建っている土地には課税標準を軽減する特例があり、更地にすると適用の前提が変わります。数字を出す前に結論を出さないでください。
最後に、家族が立て替えている分の記録の付け方を決めておきます。日付、金額、支払先、誰の口座から出たか。これだけで構いません。介護の期間が長くなるほど記憶は当てにならず、後から相続の話になったときに、説明できる材料がないことが揉める原因になります。表計算でも手帳でも、置き場所を一か所に決めて家族が見られるようにしておくほうが、後の負担が軽くなります。
- 負担割合証は最新のものか。区分が変わっていないかを確認する。
- 施設の請求項目を、介護保険の内と外に分けて印を付けた。
- 高額介護サービス費と負担限度額認定の該当可否を窓口で聞いた。
- 月の取り崩し額と、預貯金がもつ年数を数字で書き出した。
- 実家の年払いの費用を十二で割り、月額の表に入れた。
図1必要額を数字にするまでの五段階
家を動かす前に確認する名義・同意・意思能力
**介護の窓口を担っている人と、売る・貸す・壊すを決められる人は別です。名義、本人の判断能力、手続きできる人の順に確かめます。**
順番は決まっています。まず誰の名義か。次に本人が自分で判断できる状態か。最後に、実際に手続きを進められるのは誰か。この三つを混ぜたまま話を進めると、片付けや解体の見積もりだけが先に集まり、いざ契約という段になって止まります。介護の主担当だからといって、それだけで不動産の処分権限が生じるわけではありません。役割と権限は、同じ記録の中でも別の欄に書き分けてください。
名義は登記で確かめます。法務局(登記所)で登記事項証明書を取れば、所有者、共有なら持分、抵当権などの担保が載っています。請求には住居表示ではなく地番が必要で、地番は固定資産税の課税明細やブルーマップ、法務局の窓口で照合できます。同じ機会に公図と、あれば地積測量図と建物図面も取っておくと、第三章の確認がそのまま進みます。納税通知書だけでは共有持分や担保の状況までは読み取れません。
登記を見て、所有者が複数だったときは扱いが変わります。共有名義の不動産を売るには、原則として共有者全員の同意が要ります。持分だけを売ることが法律上できないわけではありませんが、買い手はほぼ付きません。父と母の共有、あるいは父と叔父の共有といった形が残っていることは珍しくなく、共有者の一方がすでに亡くなっていれば、その持分について相続の手続きが必要になります。誰が何分の何を持っているかを、証明書の記載どおりに書き写しておいてください。
名義が祖父母や父母の代のままなら、相続の手続きが未了です。相続登記については、原則として、相続で不動産を取得したことを知った日から三年以内に申請する義務があるとされ、制度の開始前に発生した相続にも経過措置が設けられています。期限の数え方と例外は法務省の案内で確認してください。遺産分割がまとまらない段階では、相続人であることを法務局に届け出る相続人申告登記という手段も用意されています。
相続人を確定する作業には時間がかかります。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどり、兄弟姉妹やその子まで広がることもあります。市町の窓口や本籍地への郵送請求を重ねると、数週間から数か月。相続人の一人が遠方にいたり、連絡が途絶えていたりすると、そこでさらに止まります。売る可能性が少しでもあるなら、資金が必要になる前にこの作業だけは始めておく価値があります。
抵当権の登記が残っている場合も確認します。住宅ローンを完済していても、抹消の登記をしないまま何十年も経っていることがあります。完済の書類が見当たらなければ、借入先だった金融機関へ照会します。合併や統合で名前が変わっている場合は、承継先へ。買主に引き渡すまでに抹消が済んでいないと決済が組めないため、早い段階で状態だけでも把握しておきます。
本人に判断能力があるなら、売主は本人です。施設で暮らしていても、名義人であることは変わりません。手続きには実印と印鑑証明書、登記識別情報または権利証、本人確認の書類が要り、司法書士が本人と面談して意思を確かめる場面があります。施設まで来てもらえるか、体調のよい時間帯はいつか、といった段取りを前もって相談しておくと、当日の負担が小さくなります。
判断が難しくなってきている場合は、家族が代わりに売ることは原則としてできません。法定後見や任意後見といった制度を使うことになり、成年後見人等が付いた場合でも、本人の居住用不動産の処分には原則として家庭裁判所の許可が必要です。申立ての準備、医師の診断書、選任までの期間を考えると、必要になってから動き出したのでは資金の時期に間に合いません。診断名だけで能力の有無を決めつけず、司法書士や弁護士に事実を示して相談してください。
まだ本人が話せるうちにできることがあります。住まいについての希望を、要約せずに言葉のまま日付付きで書き留めること。任意後見契約や家族信託といった選択肢を、費用と手間を含めて説明してもらうこと。委任状で何ができて何ができないのかを確かめること。「春には戻りたい」と「売ってもいい」は別の発言ですから、家族の解釈を混ぜずに、そのまま残しておくほうが後の判断に効きます。
きょうだい間の合意も、この段階で形にしておきます。誰が窓口になるか、書類の取得費用や交通費を誰がどう負担するか、仮に売却したときの代金を介護費に充てるのか、いったん誰の口座で預かるのか。口頭で終わらせると、数年後に必ず食い違います。決めたことと、決まっていないことを分けて一枚に書き、欠席した人にも同じものを送るところまでを一組にしてください。
- 登記事項証明書を取り、所有者・持分・担保の記載を確認した。
- 名義が先代のままなら、戸籍の収集を始める担当を決めた。
- 抵当権の抹消が済んでいるかを、借入先だった金融機関に照会した。
- 本人の住まいについての希望を、日付付きで言葉のまま記録した。
- 介護の窓口役と、法律上の権限を持つ人を別の欄に書き分けた。
査定より先に見る土地の支障(道路・境界・調整区域)
**支障があると、価格が下がるというより売れるまでの期間が延びます。接道、境界、都市計画上の区分、設備の四つを先に見ます。**
査定額は最後に出てくる数字です。その前に、その土地が建て替えられるのか、買主が融資を受けられるのか、引き渡しまでに何か月かかるのかが決まっています。ここを飛ばして価格だけ聞くと、実際に売り出してから条件が判明し、価格を下げる交渉に入ることになります。先に見るのは、道路との関係、隣地との境界、都市計画の上の区分、そして水道やガスなどの設備の四つです。
道路との関係が最初です。建築基準法上の道路に、原則として二メートル以上接している必要があります。前面道路の幅が四メートルに満たない場合は、いわゆる二項道路として、建て替えのときに敷地を後退させる扱いになることがあります。前面が私道なら、持分があるか、水道管やガス管を引き直すときの掘削の承諾を得られるかが問題になります。掛塚のように細い街路が残る地区では、工事車両や解体重機が入れるかどうかが、そのまま費用に跳ね返ります。
道路の種別と幅員は、市の建築や道路を担当する窓口で確認できます。地番と住宅地図を持って行くと話が早く、私道であれば所有者は登記で追えます。窓口では、聞いた内容と回答をくれた部署名、確認した日付を必ず控えてください。数か月後に売買の話が具体化したとき、同じことを何度も聞き直さずに済みますし、家族の間で伝言が変質するのも防げます。
境界は現地と資料の両方で見ます。四隅にコンクリートの標や金属のプレートが入っているか、ブロック塀が境界のどちら側に建っているか、隣地の樹木や庇が越境していないか。資料の側は、法務局に地積測量図があるかどうかです。図面がない、あっても古い場合は、土地家屋調査士による確定測量が必要になることがあります。隣地の立会いが前提ですから、相手方の名義も古いままだと、そこから相続人を探す作業が発生します。
都市計画の区分も価格より先です。市街化区域か市街化調整区域か、用途地域は何か、地目が農地のままではないか。調整区域では原則として新たな建築が制限され、買える人の範囲が狭まります。匂坂のように農業振興地域の農用地区域に含まれる農地は、転用の前に区域からの除外という手続きが必要で、年に決まった回数しか受け付けない運用もあります。農地かどうかと転用の見通しは、市の農業委員会へ地番を示して尋ねます。
用途地域が分かると、建ぺい率と容積率の上限、建てられる用途の範囲が見えてきます。接道の条件と合わせて、その土地に次に何をどれくらいの規模で建てられるかが決まり、それが買い手の層を左右します。住宅しか建てられない地域なのか、店舗や小規模な事業所も可能なのか。同じ広さでも、この違いで引き合いの数が変わります。窓口で聞くときは、用途地域の名称と、建ぺい率・容積率の数値をそのまま控えておくと、後の相談で使えます。
災害の想定も、買主の融資や保険料に関わります。磐田市の大雨への備えのページから洪水や内水の浸水想定、津波の想定を確認できます。池田のように堤防に近い地区と、台地の上の地区では条件が違い、同じ市内でも一括りにはできません。想定区域に入っていること自体が売れないという意味ではありませんが、買主は必ず見ますから、こちらが先に把握しておくほうが説明を組み立てやすくなります。
建物については、建築された時期、増築部分が登記されているか、未登記の物置や車庫がないか、検査済証が残っているかを見ます。解体を検討するなら、残置物の量と、法令に基づくアスベストの事前調査が前提になります。敷地内の井戸、浄化槽、古いブロック塀は、撤去や埋め戻しの費用として別に見込む項目です。屋根の状態は地上からでは分からないため、必要なら専門業者に見てもらいます。
設備の引き込みも確認します。上水道の引き込み口径、下水道につながっているか浄化槽か、都市ガスかプロパンか。口径が細ければ建て替えのときに引き直しが要りますし、下水道の区域に入っていれば接続の負担が発生することがあります。市の上下水道を担当する窓口で、地番を示して現況を尋ねられます。ここは買主が必ず気にする点なので、先に答えを持っていると交渉が早く進みます。
調べた結果は、机上で分かること、現地で見ること、専門家に頼むことの三列に分けて並べます。登記や都市計画やハザードは机上、境界標や雨漏りの跡や越境は現地、確定測量や建物の詳しい診断は専門家。この三列を持って不動産会社に相談すると、話が価格の話から条件と段取りの話に移ります。未確認の欄を空けたままにしておくことも、立派な記録です。
- 前面道路の種別と幅員を、市の担当窓口で確認し日付を控えた。
- 私道の場合、持分の有無と掘削の承諾の見通しを調べた。
- 境界標の有無を現地で見て、地積測量図の有無を法務局で確かめた。
- 市街化調整区域か、農地か、農用地区域に含まれるかを照会した。
- 浸水や津波の想定区域に該当するかを市の案内で確認した。
- 未確認の項目を、机上・現地・専門家の三列に分けて残した。
図2その支障は、どこへ聞けば確定するか
売る以外の選択肢(貸す・借りる・分ける・待つ)
**必要な額と必要になる時期が決まると、選べる手立ては五つに整理できます。売却はそのうちの一つです。**
取りうる手立ては、期限を決めて保有する、貸す、家を担保に借りる、敷地の一部だけ動かす、売る、の五つです。第一章で出した「いつまでに、いくら」に照らすと、どれが現実的かは自然に絞られます。三年先まで持ちこたえられるなら、権利関係を整えながら時期を選べます。一年以内に資金が要るなら、時間のかかる手立ては最初から外れます。時期を決めずに選択肢だけを並べても、比較にはなりません。
貸す場合、契約の種類が分かれ目になります。一般的な普通借家の契約では、借地借家法によって借りる側が保護され、貸主の側から終了させるのは容易ではありません。本人が戻る可能性を残しておきたいなら、期間の満了で終わる定期借家という形が検討の対象になります。ただし借り手が付きにくくなる面もあり、賃料の水準にも影響します。どちらを選ぶかは、戻る見込みの立ち方次第です。
貸す前には手を入れる費用がかかります。給湯器、台所や浴室の設備、雨漏りの補修、和室の傷み。長く空いていた家ほど、入居できる状態にするまでの投資が先に出ていきます。入ってくる賃料から、管理会社への手数料、修繕の積立、空室になる月、固定資産税や所得税を差し引いた残りが実際の手取りです。近隣の募集事例を複数見て、賃料の見込みは強気の数字を使わないでください。
貸すと決めたら、火災保険の契約内容の見直しと、不動産所得としての確定申告が必要になります。名義人が本人であれば、賃貸借契約の当事者も原則として本人です。判断能力の問題は、売るときと同じようにここでも出てきます。家族が代わりに貸す契約を結べるかどうかは、第二章で確かめた権限の話に戻ります。介護施設の費用に賃料を充てる場合、入金先の口座と管理の方法も先に決めておきます。
建物を使わない貸し方もあります。月極の駐車場、資材置き場、事業者への一時的な貸し。建物を解体して土地だけを貸す場合は、原則として固定資産税の住宅用地の特例が外れ、翌年度からの税額が変わる点に注意が必要です。需要は地区によってまったく違い、駅や幹線道路からの距離、周辺の事業所の有無で決まります。近隣で同じような使われ方をしている土地があるかを、まず見てください。
家を担保にして借りる方法もあります。金融機関のリバースモーゲージ、社会福祉協議会が扱う不動産担保型の生活資金、売却したうえで住み続けるリースバック。いずれも取扱いの条件や対象となる地域、建物の要件が定められており、誰でも使えるわけではありません。契約の当事者は本人ですから、判断能力が前提になります。条件は必ず書面で受け取り、家族が読んでから決めてください。
敷地が広い場合は、一部だけを動かす選択肢が出てきます。分筆して一部を売り、残りは持ち続ける形です。分筆には測量が必要で、残った土地が道路に接しているか、使いみちが残るかを先に確認します。接道が確保できない切り方をすると、残地の価値が大きく下がります。図面の上で線を引く前に、道路との関係を第三章の手順で確かめておくことが前提になります。
何もせずに待つのと、期限を決めて待つのは別のことです。後者は、巡回の担当と頻度、費用を出す人、次に見直す日を決めたうえで保有する状態を指します。空き家の傷みは、雨漏りと通風の不足から進みます。月に一度でも窓を開け、水を流し、外観を写真に残しておくと、後で修繕や保険の相談をするときの材料になります。決めないことを決めた、という記録が家族の間の摩擦を減らします。
売る場合は順番があります。名義を整える、境界と道路を確かめる、残置物を片付ける、媒介契約を結ぶ、引き渡す。相続の後に売るのであれば、相続した家屋を売ったときの譲渡所得の特別控除や、相続税を納めた人が申告期限の翌日から三年を経過する日までに売った場合の取得費加算といった特例が関係することがあります。家屋の建築時期、耐震や除却の要件、相続人の数による控除の限度、適用できる期間がそれぞれ定められているため、適用の可否は国税庁の案内を見たうえで税理士に確認してください。
判断を誤らせるものは両側にあります。早く現金にしたいという理由だけで解体まで進めてしまうと、更地は元に戻せません。逆に、思い出があるという理由だけで止め続けると、維持費と傷みが静かに積み上がります。数字の側と権利の側を同じ紙の上に並べ、どちらか一方だけで結論を出さないこと。それが、後から振り返って納得できる決め方に近づきます。
- 第一章で出した期限に照らして、時間のかかる手立てを外した。
- 貸すなら、普通借家と定期借家の違いを家族で共有した。
- 貸す前に必要な修繕を見積もり、手取りの賃料を計算した。
- 解体や更地化が住宅用地の特例に与える影響を確認した。
- 担保に借りる方法は、条件を書面で受け取ってから検討した。
- 売る場合の税の特例について、適用の可否を税理士に尋ねる予定を入れた。
家族で共有する費用と期限の一枚
**情報が各人の頭の中にあるうちは、同じ話を何度も繰り返します。事実・決めたこと・保留の三つに区切った一枚を作ります。**
紙は一枚で足ります。上段に事実、中段に決めたこと、下段に保留と期限。この三つを混ぜないことが肝心です。事実の欄には、名義、地番、面積、前面道路、月々の維持費、施設の月額、預貯金がもつ年数を、根拠になった資料の名前と確認した日付とあわせて書きます。誰が言ったかではなく、どの資料のどこに書いてあったかを残すと、後から人が入れ替わっても同じ位置から続けられます。
決めたことの欄には、役割と頻度を書きます。窓口を担う人、実家を巡回する人と月に何回か、書類を取りに行く人、費用を立て替える人と精算の方法、そして次に全員で見直す日。役割を決めずに「みんなで」と書くと、結局は近くに住む一人に全部が寄ります。誰がやるかまで書いて初めて、決めたことになります。
保留の欄は、記録として最も大事な部分かもしれません。保留は同意でも拒否でもなく、まだ決まっていないという状態です。ここに項目を置くときは、必ず担当と期限を付けます。期限が来たら、決められたのか、それとも判断材料が足りなかったのかを書き足します。判断材料が足りなかったのなら、何が足りなかったのかを一行で残しておくと、次に進む道が見えます。
期限のあるものは別に一覧にします。制度の期限、認定の更新、契約の更新、申告の時期。金額や細かい要件は年度によって変わりますから、この表には「確認先」の列を必ず置いてください。表の役割は、正解を書き留めることではなく、いつ、どこへ聞き直すかを忘れないようにすることです。数字を書くときは、必ず基準日を添えます。
家族で集まるときの運び方も決めておきます。全員が同じ紙を見る、欠席した人にも同じものを送る、事実と意見を分ける、決まらなかったことは決まらなかったと書く。録音を残すよりも、その場で箇条書きにして読み上げ、その日のうちに共有するほうが後で使えます。意見が割れたときは、どちらが正しいかを争う前に、事実の相違なのか価値観の違いなのかを見分けます。
遠方に住む家族の役割は、現地作業とそれ以外に分けると噛み合います。帰省の日は現地でしかできないこと、つまり境界標の確認、外観と室内の撮影、残置物の量の把握、鍵と設備の確認に絞ります。書類の取得や窓口への照会は、郵送やオンラインでできるものが多く、離れていても分担できます。帰省の前に、その日にやることを三つまでに絞って共有しておくと、時間を無駄にしません。
表の更新の仕方も決めておきます。古い記載を消さず、変更した日と理由を残すこと。窓口の回答が変わることもありますし、家族の事情が変わることもあります。前の判断が間違っていたと責めるためではなく、なぜその時点でそう決めたのかを説明できるようにするためです。特に費用の立て替えと、本人の希望に関する記録は、消さずに積み上げてください。
相談先は分野ごとに並べます。介護についてはケアマネジャーと地域包括支援センター、権利と手続きは司法書士や弁護士、税は税理士と税務署、土地と建物は土地家屋調査士や建築の専門家、道路や都市計画や農地は市の各窓口。一人の相手にすべての最終判断を求めないでください。回答が担当の範囲を超えたときは、答えを削らずに「ここから先は別の分野」と書いて次へ渡します。
そして、この一枚は売ると決めた人のためだけのものではありません。まだ決めていない段階の家族にとっても、いま何が分かっていて何が分かっていないのかを共有する道具になります。ふじがおか実家カルテは、公開情報と手元の資料からこの現在地を揃えるところを受け持ちます。価格の査定でも、意思能力の判断でも、建物の検査でもありませんが、判断材料の位置をそろえる入口としては使えるはずです。
- 事実・決めたこと・保留の三区画に分けた一枚を作った。
- 保留の項目すべてに、担当と期限を付けた。
- 期限表に確認先の列を置き、数字には基準日を添えた。
- 欠席した家族にも同じ資料を送り、訂正の期限を伝えた。
- 相談先を分野ごとに並べ、一人にすべてを求めない形にした。
| 確認する事項 | 時期の目安 | 確認先 |
|---|---|---|
| 相続登記の申請 | 相続で取得したことを知った日から原則三年以内。施行前の相続には経過措置 | 法務局、司法書士。法務省の案内も参照 |
| 遺産分割がまとまらない場合の相続人申告登記 | 分割の協議が長引くと見込まれた時点 | 法務局、司法書士 |
| 相続した家屋を売ったときの譲渡所得の特別控除 | 適用できる期間と、相続の開始からの経過年数の要件がある | 国税庁の案内、税理士 |
| 相続税を納めた場合の取得費加算 | 原則として相続税の申告期限の翌日から三年を経過する日まで | 税務署、税理士 |
| 介護保険の負担割合証と負担限度額の認定 | 年に一度の更新。所得や預貯金等の状況が変わったとき | 市の介護保険担当窓口、ケアマネジャー |
| 高額介護サービス費・高額医療高額介護合算療養費 | 申請が前提。合算は原則として八月から翌年七月まで | 市の介護保険担当窓口、加入する医療保険者 |
| 火災保険の契約内容と更新 | 居住実態が変わったとき、無人になったとき | 契約している保険会社、代理店 |
| 確定測量と境界の立会い | 売却の意向が固まる前。隣地の名義が古いほど早めに | 土地家屋調査士 |
図3資金が要る時期と、権利の整い方でいまの立ち位置を決める
このページ固有の確認メモ
ここからは「介護費用が増えたとき親の家をどう考える?売却査定の前に見る項目」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。
確認しておく事実
この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。
- 費用は段差で増える。増えた理由を四つの局面に分けてから数字を作る
- 申請が前提の軽減制度に該当しないかを、家を動かす前に窓口で確かめる
- 預貯金がもつ年数と、売却にかかる期間から逆算して動き出す日を決める
- 介護の窓口役と、売却を決められる法律上の権限者は別に書き分ける
- 接道・境界・都市計画上の区分は、査定額より先に判明させる
- 貸す場合は契約の種類で戻れるかどうかが変わる
- 解体と更地化は後戻りできず、住宅用地の特例にも影響する
- 事実・決めたこと・保留を分けた一枚を家族で共有し、保留に期限を付ける
避けたい判断
この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。
- 軽減制度を確かめないまま、資産を動かす話から始めてしまう
- 介護の主担当だからという理由で、売却の権限があると思い込む
- 査定額だけを複数社から集め、条件と期間を確かめない
- 名義が先代のままなのに、戸籍の収集を後回しにする
- 税額を早く下げたい一心で、確認を終える前に解体を決める
- 保留のままの項目を、同意したものとして扱う
手元で探すもの
見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。
- 介護保険の被保険者証と最新の負担割合証
- 施設の契約書と重要事項説明書、直近三か月の請求書
- 年金の振込通知書と預金通帳
- 固定資産税の納税通知書と課税明細
- 登記事項証明書、公図、地積測量図の有無
- 火災保険証券と契約内容
- 前面道路の種別と幅員のメモ
- 境界標の有無と越境物の写真
- 市街化区域か調整区域か、地目は何か
- 毎月の維持費と、年払い費用の月額換算
- 本人の希望を日付付きで記した記録
- 家族の役割分担と次の見直し日
よくある質問
介護費用が足りなくなりそうです。実家を売るしかないのでしょうか
売却は選択肢の一つで、最初に検討するものとは限りません。高額介護サービス費や負担限度額の認定など、申請が前提の軽減の仕組みに該当しないかを市の介護保険担当窓口で確認したうえで、預貯金が何年もつのかを月額の収支表で出してください。必要な時期が一年以上先なら、貸す・一部を売る・期限を決めて保有するといった手立ても比較の対象に入ります。
親が施設にいます。子どもだけで売る手続きは進められますか
名義人が親であれば、売主は原則として親本人です。判断能力があるうちは本人が意思を示す必要があり、難しくなっている場合は後見等の制度によることになります。成年後見人等が付いても、居住用不動産の処分には原則として家庭裁判所の許可が必要です。個別の権限や進め方は司法書士・弁護士へ確認してください。
査定を頼む前に、こちらで用意しておくものはありますか
固定資産税の納税通知書と課税明細、登記事項証明書と公図、あれば地積測量図と建物図面、火災保険証券、そして前面道路の種別と幅員のメモです。これらがあると、価格の話の前に、建て替えられるか、引き渡しまでにどれくらいかかるかという条件の話ができます。足りない資料は再取得できるかも一緒に控えておいてください。
市街化調整区域や農地でも売れますか
売れないと決まるわけではありませんが、買える人の範囲や建てられる建物に制限がかかり、期間が延びる傾向があります。地目が農地のままなら転用の可否、農業振興地域の農用地区域に含まれるなら除外の手続きが関係します。受付の時期が決まっている運用もあるため、市の農業委員会へ地番を示して見込みを尋ねてください。
相続で受け継いだ家です。売るときに使える税の特例はありますか
相続した家屋を売ったときの譲渡所得の特別控除や、相続税を納めた場合の取得費加算といった取扱いがあります。ただし家屋の建築時期、耐震や除却の要件、相続人の数、適用できる期間などの条件が定められています。国税庁の案内で概要を確認したうえで、適用の可否は税理士へ相談してください。
まだ売ると決めていません。それでも相談していいですか
はい。むしろ決める前のほうが、選べる手立ては多く残っています。ふじがおか実家カルテは価格の査定ではなく、公開情報と手元の資料から現在地と次の確認順を整理する資料です。売らないという結論のために使っていただいても構いません。
公式出典・確認先
制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。
- ふじがおか実家カルテ|住所で分かること(fudosan.atawi.link)カルテで整理する範囲と、現地・専門家確認が必要な範囲を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続登記の申請義務化について(www.moj.go.jp)相続登記の基本的義務、遺産分割成立後の追加的義務、経過措置を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続人申告登記について(www.moj.go.jp)遺産分割がまとまらない場合の申告登記と必要書類を確認確認日:2026-08-27
- 国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(www.nta.go.jp)適用期間、対象家屋、相続人数による控除限度額等を確認確認日:2026-08-27
- 磐田市|大雨への備え(www.city.iwata.shizuoka.jp)磐田市ハザードマップ、洪水・冠水情報への公式入口を確認確認日:2026-08-27

