実家じまい家族会議の議題テンプレート|60分で確認する順番
実家をどうするかを家族で話す会議は、時間を決めずに始めると、結論が出ないまま同じ主張の応酬で終わりがちです。このページは、60分という枠の中で何を何分扱い、何を扱わないかまで決めた進行表です。冒頭10分で家の事実、次の20分で選択肢、次の20分で費用と期限、最後の10分で決定と宿題。売るか残すかを1回目で決める必要はありません。決めるのは「誰がいつまでに何を確認するか」までで、そこまで決まれば2回目の会議は半分の時間で終わります。磐田市・袋井市・森町での実家の相談で、話が前に進んだ家族に共通していた順番をまとめました。

まず結論
家族会議は結論を出す場ではなく、事実をそろえて宿題を配る場です。60分を10分・20分・20分・10分に割り、前半は意見を入れずに登記と課税明細の事実だけを共有します。選択肢は売る・貸す・家族が使う・管理して持つの四つを同じ項目で比べ、案ごとに同意が要る人を確かめます。費用は自分の家の実額を入れ、制度側の期限は担当と期日に変換します。最後の10分で決定・保留・宿題を書き分け、次回の日程まで決めて閉じます。
60分をどう割るか──会議前に決めておく役割と資料
会議の出来は当日ではなく、招集の文面と資料を送った時点でほぼ決まります。この章では、時間配分、役割分担、事前に配る資料の中身を先に固めます。
なぜ60分かというと、実家の話し合いは長くなるほど内容が濃くなるのではなく、同じ主張の繰り返しに変わっていくからです。90分を過ぎたあたりから「前にも言ったよね」という言葉が増え、次の集まりが敬遠されるようになります。60分は短すぎるように見えますが、扱う範囲を「決める」から「そろえる」に切り替えれば十分に足ります。1回で終わらせようとせず、2回か3回に分けて毎回60分で閉じる会にするほうが、結果としては早く進みます。
役割は最低でも三つに分けます。進行役は時間だけを見て、自分の意見を言いません。記録役は発言者と内容を書き、後で全員へ配ります。資料役は課税明細や登記事項証明書を集めた人で、聞かれたときだけ事実を答えます。この三つを一人が兼ねると、進行役の意見がそのまま結論に見えてしまいます。長男や長女が自動的に進行役になる必要もありません。むしろ実家から距離があり、売る・残すのどちらにも強い希望を持っていない人が向いています。
招集の連絡は、遅くとも3日前までに、全員へ同じ文面で送ります。書くのは四つです。日時と所要時間、その日に扱うこと、その日に決めないこと、事前に見ておいてほしい資料。特に大切なのが三つ目で、「今日は売却を決める会ではありません。名義と年間費用を確認する会です」と最初に書いておくと、身構えて欠席する人が減ります。当日いきなり書類を出して押印を求めるような進め方は、その後の話し合いを何か月も止めます。
呼ぶ範囲は、仲の良し悪しではなく立場で決めます。相続人になり得る人、実家に住んでいる人、実際に草刈りや郵便物の回収をしている人。この三つのどれかに当てはまる人には全員声をかけます。後から「聞いていない」という人が一人出ると、そこまでの決定がすべてやり直しになります。連絡が取れない人がいる場合も、いないことにはせず、氏名と立場、最後に連絡が取れた日を記録に残しておきます。
場所は実家以外にします。実家で開くと、話が必ず片付けと処分へ流れ、仏壇や写真の前で結論を出すことになります。遠方の家族がいる場合はオンラインを併用し、資料は当日の画面共有ではなく事前にPDFで送ります。手元に同じ紙があるかないかで、話の進む速さが変わります。電話だけで参加する人がいるときは、読み上げで位置が分かるよう、資料の各項目に番号を振っておきます。
事前に配る資料は、A4で3枚以内に収めます。1枚目は家の事実として、所在地、土地の筆数、建物の床面積と建築年、登記上の名義と持分、固定資産税の年額。2枚目は年間の維持費と、この1年で誰がいくら立て替えたか。3枚目は外観と各部屋の写真を並べたもの。ここに「私はこう思う」という文章を入れないでください。意見の混ざった資料は、読んだ時点で反発を生みます。
記録用紙は最初から五つの欄で作ります。事実、各人の希望、未確認、決定、宿題。会議中の発言は、どれかの欄に振り分けて書きます。「土地は父の名義のはず」は事実ではなく未確認の欄です。この振り分けを記録役が声に出して確かめながら進めると、対立に見えていたものの半分が、単なる情報不足だったと分かることがあります。
親本人が同席するかどうかも、先に決めておきます。本人が判断でき、話の内容を聞いても負担にならないなら、同席してもらったほうが後が楽です。本人の希望を日付つきで記録できるからです。一方、体調や記憶に不安がある場合、1時間の同席は本人にも家族にも重くなります。その場合は会議の前後に短く時間を取り、「この家をどうしたいか」だけを聞いて記録し、会議自体は家族だけで行う形にします。いずれの場合も、本人の言葉と家族の解釈は別の欄へ書き分けてください。
当日の道具は三つで足ります。時間を計るタイマー、全員が見える大きさの紙かホワイトボード、そして記録用紙です。タイマーは進行役の主観を外すために使います。「そろそろ次に行きましょう」と人が言えば角が立ちますが、音が鳴れば誰も反論しません。書いたものは会議の終わりに写真へ撮り、その場で全員へ送ります。清書は後日でかまいませんが、原本の写真だけは当日中に共有してください。
60分を過ぎたら、話の途中でも止めます。延長して出した結論は、その場にいた人の疲労で決まったものになりやすく、後から覆ります。止めるときは、どこまで進んだか、次は何から始めるかを1行ずつ書き、次回の日時をその場で決めてから解散します。日程を後日調整にすると次が2か月先になり、その間は維持費と建物の傷みだけが進みます。
- 進行役・記録役・資料役を別の人が担当する
- 招集文に「その日に決めないこと」を書いて3日前までに送る
- 相続人になり得る人・居住者・管理をしている人に全員声をかける
- 事前資料はA4三枚以内、意見や結論を書き込まない
- 記録用紙は事実・希望・未確認・決定・宿題の五欄で用意する
図160分の配分と、各パートで扱わないこと
冒頭10分──家の事実だけを、出典と確認日つきで読む
最初の10分は、意見をいっさい入れずに家の事実だけを共有します。出典と確認日をここで付けておくと、後半の議論が「誰の記憶が正しいか」に戻らなくなります。
最初に読むのは、意見の入る余地がない項目だけです。所在地と地番、土地が何筆あるか、それぞれの地目と地積、建物の構造と床面積と建築年、登記上の名義人と持分、抵当権や差押えの登記が残っていないか、固定資産税と都市計画税の年額、火災保険の契約者と満期日、そして現在誰が住んでいるか。声に出して読んでも3分ほどで終わります。残りの7分を質問に充てる配分です。
一つひとつに、どの資料の何年何月時点かを添えます。「名義は父。登記事項証明書、8月20日取得」「税額は納税通知書、今年度分」という言い方です。この一手間で、後から「それはいつの話だ」という差し戻しが消えます。逆に、出所を言えない項目は、その場では事実として扱わないでください。誰かの記憶であることを明示して、未確認の欄へ移します。
手元に資料がない場合の入手先も、会議の前に押さえておきます。課税明細書は毎年春の納税通知書に同封されています。見当たらないときは、市役所や役場で資産税を担当する窓口へ名寄帳を請求すると、その市町内に所有する不動産が一覧で出ます。誰が請求できるか、何を持参するかは市町によって違うので、行く前に電話で確かめてください。登記事項証明書と公図は法務局で取得します。窓口のほか、郵送やオンラインでも請求できます。
ここでいちばん多いのが、名義が想定と違っていたという場面です。父の名義だと思っていたら祖父の名義のまま登記が動いていない。畑が別の筆で残っている。私道の持分が兄弟の誰かに寄っている。どれも珍しくありません。名義が先代のままだった場合、話し合う相手の範囲そのものが変わります。その日の議題はいったん止めて、戸籍で相続人を確定する作業を先に置いてください。
相続による名義の変更については、相続登記の申請義務化の仕組みが設けられており、期限の起算や過去に相続した分の取扱いは法務省の案内に整理されています。遺産分割の話し合いがまとまらない間の手当てとして、相続人申告登記という制度も案内されています。ただし自分たちの場合にどう当てはまるかは登記の専門分野です。会議で結論を出そうとせず、司法書士へ確認する項目として宿題の欄に書きます。
地目や場所によって、確認先が増えることがあります。登記上の地目に田や畑が含まれていれば農地としての取扱いになり、匂坂の周辺のように農業振興地域の農用地区域がかかる土地では、売買や転用の可否を農業委員会や市の担当課へ確認する必要があります。掛塚のように道が狭く工事車両が入りにくい区域では、接道の状況が後の解体費や買い手の反応に直結します。池田など天竜川沿いの低地では、市が公表している浸水想定の資料も事実の一つとして最初に共有しておくと、後の議論が現実的になります。
残りの7分で受け付ける質問は、二種類に絞ると宣言しておきます。「それは誰が、どの資料で確認したのか」と「それはいつ時点の情報か」。この二つ以外の質問、たとえば「それで、いくらで売れるのか」は、この時間では扱わないと決めます。答えの出ない質問を10分の中に入れると、事実の共有が終わらないまま前半が消えます。
事実の共有で意外と抜けるのが、建物の現況です。屋根、外壁、雨樋、床下、水回りの状態は書類には出てきません。会議の前に、外観を四方向から、各部屋、天井のしみ、ブレーカー、給湯器、メーター類を撮っておきます。撮影日が残るので、後で見積もりや保険の相談を始めるときに、現地へ行かずに話を進められます。写真があると、「思ったよりきれいだ」「思ったより傷んでいる」という認識の差も、その場で埋まります。
分からなかった項目は、消したり飛ばしたりせず、未確認と書いたうえで、次に何を見れば分かるかを一言添えます。境界標が現地に残っているかは写真、雨漏りの有無は屋根裏と天井のしみ、汚水が下水道か浄化槽かは検針票や保守契約書。次の一手が書いてあれば、担当を決めるだけで宿題になります。
- 事実の各項目に、資料の名前と確認した日付を添える
- 名義が先代のままなら、選択肢の議論より戸籍の確認を先に置く
- 登記上の地目に田や畑が含まれていないかを確かめる
- 分からない項目は空欄にせず、未確認と次に見る資料を書く
- 質問は「誰がどの資料で」「いつ時点か」の二つに絞る
| 確かめる事実 | 使う資料 | 入手先・確認先 |
|---|---|---|
| 土地の筆数、地目、地積、建物の床面積 | 固定資産税の納税通知書と課税明細書 | 毎年春に所有者へ送付。紛失時は市町の資産税担当 |
| 名義人、持分、抵当権や差押えの有無 | 登記事項証明書 | 法務局の窓口・郵送・オンライン請求 |
| 筆の形と並び、測量図が備え付けられているか | 公図、地積測量図、建物図面 | 法務局(備え付けがない場合もある) |
| その市町内にほかに所有している不動産 | 名寄帳 | 市町の資産税担当(請求できる人の範囲は要確認) |
| 補償の内容、契約者、満期日 | 火災保険証券 | 保険会社・代理店(証券番号が分かれば照会できる) |
次の20分──選択肢を同じ列で並べ、同意が要る人を確かめる
選択肢は四つに絞り、同じ項目で比べます。金額の話に入る前に、その案を選ぶには誰の同意が要るのかを先に確かめます。
並べるのは、売る、貸す、家族が使う、当面は管理して持つ、の四つです。解体はこの中に入れません。解体は売るための手段や管理を軽くするための手段であって、それ自体が行き先ではないからです。ここを混ぜると「壊すか壊さないか」で二派に分かれ、20分が終わります。四つを紙の横に書き、その下へ同じ項目を並べていきます。
縦に並べる項目は六つです。1年で出ていく費用、始めるときにかかる費用、誰が何時間動くか、後から取り消せるかどうか、必要な同意者、期限のある制度が絡むか。金額だけを比べると、手間を引き受けている人の負担が表から消えます。往復の時間、草刈りの日数、業者の立ち会い。これらを時間で書く欄を必ず作ってください。
案ごとに、決められる人が違います。名義人が健在で自分で判断できるなら、売る・貸すを決めるのは本人です。家族は相談相手であって決定者ではありません。名義が共有なら、売却には共有者全員の関与が必要になるのが原則です。名義が先代のままなら、まず相続人を確定しないと入口に立てません。判断能力に不安がある場合は成年後見の枠組みとなり、本人の居住用不動産の処分には原則として家庭裁判所の許可が必要とされています。ここは会議で決める領域ではなく、確認して持ち帰る領域です。
表に空欄ができたら、それは「不利」ではなく「まだ調べていない」という意味です。空欄のまま比べると、情報が多い案が良い案に見えてしまいます。埋まっていない欄には、誰が何を調べるかを書き込み、その案の評価は次回まで保留にします。一つの案だけ詳しく埋まっているときは、たいてい誰かがその案を進めたくて先に調べているだけです。
「思い出があるから残したい」という発言は、否定も採用もせず、条件に翻訳します。何を残したいのかを具体に落とすと、写真、仏壇、庭木、盆と正月に泊まれる場所、といった項目に分かれます。写真はデータにできる、仏壇は移せる、庭木は移植するか記録に残すか、泊まる場所は他で代わりになるか。こう分けると、家がなくても満たせる部分と、どうしてもその家が要る部分が見えてきます。
反対を押し切らないでください。反対には理由があり、その理由の多くは条件として扱えます。「今は決めたくない」は期限の条件、「兄だけで進めるのが嫌だ」は手続きの条件、「親が元気なうちは嫌だ」は時期の条件です。条件に直せば、次の会議で検討できる項目になります。感情を非合理として切り捨てると、その人は以後の会議に来なくなり、合意はさらに遠くなります。
不動産会社の査定額を、そのまま比較表の「売る」の欄へ書かないでください。査定は売れるであろう価格の見立てであって、確定した金額でも手取りでもありません。仲介手数料、境界の確認や測量、残置物の処分、必要に応じた解体、譲渡に伴う税。これらを引いた後の残りが家族に入る額です。複数社に聞くときは、査定の前提条件、残置物の扱い、引渡しの時期を同じ書式でそろえ、額だけを横に並べないようにします。
貸すという案は、「今の状態のまま借り手がつくか」を確かめないと比較になりません。築年数の古い木造住宅では、水回りの更新、屋根と外壁の補修、エアコンの設置などが前提になることがあります。ここに要る費用は、売る場合の解体費と同じくらい家族の判断を動かす数字です。地元の管理会社や工務店へ、現況のまま貸す場合と最低限手を入れた場合の二通りで相談すると、比較表の欄が埋まります。借り手がついた後の連絡窓口を誰が担うかも、この時点で決めておく項目です。
「家族が使う」を選ぶときは、使う人と使わない人の扱いを同時に決めます。誰かが住む、あるいは週末に使うのであれば、税や保険、修繕を誰が負担するのか、他の相続人との間でどう整理するのかが必ず問題になります。口約束のまま何年も過ぎると、後の遺産分割で「あの人はずっと負担なしで使っていた」という争点になることがあります。取り決めの内容と日付を、この段階で文字にして残してください。
待つという選択にも費用があります。遠州の冬は空っ風で瓦や雨戸、トタンが傷みやすく、夏から秋にかけては台風と大雨があります。無人の家は雨漏りに気づくのが遅れ、分かったときには天井から床まで傷んでいることがあります。「当面は持つ」を選ぶなら、巡回の頻度と、台風の前後に誰が見に行くのかまでを同時に決めてください。
| 選択肢 | 主に出ていく費用 | 確認が要りやすい相手 | 後から戻せるか |
|---|---|---|---|
| 売る | 仲介手数料、測量、残置物処分、譲渡に伴う税 | 共有者、相続人、司法書士、税理士 | 戻せない |
| 貸す | 修繕、設備更新、管理委託、原状回復 | 共有者、管理会社、建築士 | 契約期間の縛りが残る |
| 家族が使う | 維持費、改修費、移動の時間 | 同居や利用を希望する家族、他の相続人 | 戻せる |
| 管理して持つ | 税、保険、草刈り、通水、巡回の時間 | 巡回の担当者、近隣、市の空き家担当 | 戻せるが劣化が進む |
図2その案を選ぶには、誰の関与が要るか
次の20分──毎月出ていく額と、動かせない期限を並べる
費用は「今出ている額」と「決めない間に出続ける額」に分けます。期限は、家族の都合ではなく制度の側にある期限を先に置きます。
書き出すのは、固定資産税と都市計画税、火災保険料、電気と水道の基本料、浄化槽を使っている家ならその保守と汲み取り、草刈りや剪定の外注費、修繕の実費、そして現地までの交通費です。金額は一般論ではなく、自分の家の実額を入れます。出所はすべて手元にあります。納税通知書、保険証券、検針票、領収書、高速道路とガソリンの記録。この作業を会議の前に一人で終えておくと、20分のうち15分を話し合いに使えます。
金額の表とは別に、時間の表を作ります。この1年で誰が何回実家へ行き、1回あたり何時間かかったか。草刈り、郵便物の回収、通水、近所への挨拶、業者の立ち会い。時間には請求書が出ないため、記録しなければ存在しないことになります。ここが偏ったままだと、後になって「なぜ自分ばかり」という話になり、費用の分担より先に感情の問題になります。
立て替えたお金は、誰が、いつ、何に、いくら払ったかを月ごとに残します。領収書は写真に撮って同じ場所へ置きます。注意したいのは、これは事実の記録であって、精算の義務を確定するものではないことです。誰がどこまで負担すべきかは、遺産分割や贈与の扱いと関わる場面があります。分担の結論を会議だけで出す前に、必要なら税理士や弁護士へ確認する項目として残してください。
保留にも値段があります。年間費用の合計を12で割り、「何も決めない1か月」がいくらかを出してください。この数字が出ると、先送りが良いか悪いかという話ではなく、先送りを選ぶならその費用を誰が持つのか、という具体的な話に変わります。半年待つと決めるなら、その半年分の費用と巡回の担当を同じ場で決めます。
家族の都合では動かせない期限もあります。相続登記については申請義務の仕組みが設けられており、期限の起算や過去に相続した分の取扱いは法務省の案内で確認してください。相続した家を売る場合には、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例が国税庁で案内されていますが、適用期間、対象となる家屋の条件、相続人の数による控除限度額など要件が細かく、当てはまるかどうかは税理士への確認が必要です。会議では条件を判断せず、確認する担当と期日を決めます。
目の前で動くものもあります。火災保険は、人が住まなくなったことで契約の条件や取扱いが変わる場合があるため、保険会社へ現況を伝えて確認します。固定資産税については、建物を取り壊すと住宅用地の特例が外れる取扱いがあるのが原則で、更地にした翌年の負担が変わり得ます。解体の見積もりを取ること自体は問題ありませんが、税への影響を確認する前に工事の日程を確定しないでください。
期限を書き出したら、そのまま宿題に変換します。「相続登記の期限」ではなく、「次男が9月20日までに司法書士へ相談し、必要書類と費用の目安を持ち帰る」と書きます。期限だけを書いた紙は、誰も動かないまま次の会議へ持ち越されます。主語と期日が入って初めて、期限は予定になります。
費用の話をするときは、過去、現在、これからを混ぜないでください。過去はすでに払った分で、記録の対象です。現在は毎月出ている分で、担当と引き落とし口座の話です。これからは選択肢ごとに発生する分で、比較表の話です。この三つを混ぜると、「これまで自分が払ってきた」という発言と「これから誰が払うか」という議題が正面からぶつかり、20分が終わります。表を三つに分けるだけで、同じ内容でも話が進みます。
見積もりを取るときは、同じ条件で複数から取ります。解体なら、建物の構造と延床面積、附属屋や物置の有無、庭木と外構、残置物の量、そして工事車両が入れる道幅。この条件をそろえずに額だけを比べると、後から追加費用が出ます。掛塚や見付の旧市街のように道が狭い区域では、使える車両の大きさや手作業の割合で金額が変わります。現地を見ずに出た概算は、あくまで話の入口として扱ってください。
この20分で金額の分担まで決める必要はありません。決めるのは三つです。年間費用の合計がいくらか、そのうち誰が今いくら払っているか、次の会議までに誰が何を調べるか。分担の比率は、名義と相続の見通しが定まらないうちに決めても、後で作り直すことになります。
- 年間費用は一般論ではなく、納税通知書や検針票から実額を入れる
- 金額の表とは別に、誰が何時間動いたかの表を作る
- 立替は月ごとに記録し、精算の義務までは会議で断定しない
- 年間費用を12で割り、何も決めない1か月の額を出す
- 制度の期限は、担当者と期日を入れた宿題の形に書き換える
| 費目 | 実額の出所 | 会議で決めること |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 納税通知書と課税明細書 | 誰の口座から引き落とすか、立替の記録方法 |
| 火災保険 | 保険証券、代理店への照会 | 無人であることを伝える担当と期日 |
| 電気・水道 | 検針票、契約状況の照会 | 止めるか残すか、通水の頻度 |
| 草刈り・剪定 | 見積書、領収書 | 年間の回数と外注先、誰が手配するか |
| 現地までの移動 | 交通費と往復時間の記録 | 巡回の担当と頻度、台風後の追加確認 |
最後の10分──決定・保留・宿題を書き分けて閉じる
最後の10分では新しい議論をしません。出たものを決定、保留、宿題の三つへ仕分け、欠席者への送付と次回の日程まで決めて閉じます。
決定は、主語、すること、期日、報告先の四つがそろって初めて決定になります。「保険を確認する」は決定ではありません。「長女が9月10日までに保険会社へ無人であることを伝え、条件を確認して、家族の共有ノートへ結果を書く」が決定です。主語が抜けた行は、全員が誰かがやると思って誰もやりません。記録役は、その場で四つがそろっているかを声に出して確かめてください。
保留は、先送りとは違います。保留には二つを付けます。いつ再検討するかという日付と、それまでの管理を誰がどうするかという約束です。「売却は12月に再検討。それまでは長男が月1回巡回し、台風の後は追加で見に行く」という形にしておけば、保留の間に建物が傷んで、再検討の時点で選べる案が減っていた、という事態を避けられます。
宿題は一人1件までにします。三つ持ち帰った人は、たいてい一つも終わりません。1件は、1回の電話か1回の窓口訪問で片づく大きさに割ります。「名義を整理する」は宿題になりませんが、「法務局で登記事項証明書を取る」は宿題になります。終わらなかったときは、丸ごと次回へ移すのではなく、止まった理由を資料待ち、回答待ち、訪問待ちに分けて書きます。
その日に来られなかった人には、当日中か翌日に同じ記録を送ります。送るときは、訂正や異議の期限を添えます。「9月5日までに連絡がなければ、この内容で進めます」と書いておけば、後から沈黙を同意とみなしたのかという話になりません。期限を切らずに送りっぱなしにすると、決定が宙に浮いたまま次の会議へ持ち越されます。
話し合いを止めたほうがよい場面もあります。声を荒げる、席を立たせない、その場で署名を迫る、相続人であること自体を否定する。こうした言動が出たら、その場で議事を閉じます。無理に続けると、合意どころか以後の連絡そのものが途絶えます。止めたあとは、合意できた点と合意できていない点だけを整理し、弁護士へ相談する段階として引き継ぎます。不動産会社は家族間の交渉の代理人にはなれません。
決定の中には、家族の全員一致が要らないものと、要るものがあります。資料を取りに行く、窓口へ聞く、見積もりを頼むといった調べる行為は、一人が動いても後戻りできるので、全員の同意を待つ必要はありません。反対に、媒介契約を結ぶ、解体を発注する、残置物を処分するといった戻せない行為は、権限の確認が済むまで進めません。この線を最初に引いておくと、「勝手に進めた」という不信が生まれにくくなります。
宿題を書くときは、渡す先を間違えないようにします。名義と登記は司法書士、税の適用可否は税理士、遺産分割の争いは弁護士、境界と測量は土地家屋調査士、建物の傷み方や改修の可否は建築士。市の窓口では、空き家の相談窓口や補助の有無、農地の取扱い、道路や上下水道の状況を確認できます。誰に聞くかが決まれば、答えが返るまでの時間も見積もれます。
最後に、次回の日時をその場で決めます。カレンダーを開いて、全員が画面か紙を見ている状態で決めてください。後日調整にすると、次は2か月後になります。次回は当日の宿題の答え合わせから始めると決めておけば、2回目は40分で終わることもあります。回を重ねるほど短くなる会議は、続きます。
記録は、その日のうちに形にします。時間が経つほど、誰が何を言ったかの記憶がずれ、書き直しに手間がかかります。手書きのまま写真で送っても十分です。大事なのは、決定と保留と宿題の三つが分かれて見えることと、日付が入っていることです。この記録が積み上がると、次に迷ったときに「前はここで止まった」と戻れる場所になります。
会議が2回目、3回目と続くと、同じ項目が毎回「未確認」のまま残ることがあります。三度同じ欄が空いたら、担当の怠慢ではなく、そもそも家族だけでは確認できない項目である可能性を疑ってください。境界の位置、農地の転用が認められるか、建物が現在の基準に照らしてどう扱われるか。こうした項目は、費用を払って専門家に調べてもらう対象で、無料の問い合わせだけでは埋まりません。宿題の欄から、依頼の欄へ移す判断が要ります。
家族が同じ資料を見ていない状態では、どの進行表を使っても議論は噛み合いません。住所から分かる範囲を一枚にまとめ、確認日と出典、未確認の印を付けたものを全員へ同じように送っておくと、会議の前半が短く済みます。これは結論を出すための資料ではなく、話し始める位置をそろえるための土台です。
最後に、その日決めなかったことを一行ずつ確認して閉じます。「今日は売却を決めていません」「解体の見積もりは取りますが、工事の日程は決めていません」。この確認をしておくと、帰り道の車内や電話で話が膨らみ、翌日には決まったことになっていた、という食い違いを防げます。開き方だけでなく閉じ方まで含めて、進行役の役割です。
- 決定の行に主語・すること・期日・報告先の四つがそろっているか
- 保留に再検討日と、それまでの管理の担当が付いているか
- 宿題は一人1件、電話か窓口訪問1回で終わる大きさか
- 欠席者へ訂正期限つきで記録を送ったか
- 次回の日時をその場で確定したか
図3その場で決めてよいことと、持ち帰ることの仕分け
このページ固有の確認メモ
ここからは「実家じまい家族会議の議題テンプレート|60分で確認する順番」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。
確認しておく事実
この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。
- 60分を10分・20分・20分・10分に割り、各パートで決めないことも先に決める
- 進行役・記録役・資料役を別の人が担当し、進行役は意見を言わない
- 冒頭10分は事実だけを読み、すべてに出典と確認日を付ける
- 選択肢は売る・貸す・家族が使う・管理して持つの四つ。解体は手段であって行き先ではない
- 案ごとに、実際に動かすために誰の関与が必要かを確かめる
- 年間費用は一般論ではなく、納税通知書や検針票から自分の家の実額を入れる
- 決定は主語・すること・期日・報告先の四つがそろって初めて決定になる
- 保留には再検討日と、それまでの管理の担当を必ず付ける
避けたい判断
この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。
- 招集の連絡に「今日決めること」しか書かず、当日いきなり署名を求める
- 実家で会議を開き、話が片付けと処分へ流れて結論が出ない
- 呼ばれなかった相続人が後から現れ、それまでの決定がやり直しになる
- 沈黙や欠席を同意とみなし、訂正の期限も付けずに記録を送りっぱなしにする
- 査定額をそのまま比較表に書き、手数料や税を引いた後の額と混同する
- 管理している人へ判断まで任せ、費用と時間の偏りを記録しない
- 解体の日程を、住宅用地の特例や名義の確認より先に確定する
手元で探すもの
見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。
- 会議の日時、所要時間、参加者と参加方法
- 進行役・記録役・資料役の担当者
- その日に決めないこととして招集文に書いた内容
- 登記上の名義と持分、相続人の範囲
- 土地の筆数と地目、建物の床面積と建築年
- 現在の居住者と、その人の希望
- 各人の希望と、譲れない条件
- 未確認の項目と、次に見る資料
- 年間の維持費の合計と内訳
- この1年の立替額と、現地での作業時間
- 決定・保留・宿題の各行と担当者
- 欠席者への送付日と訂正期限
- 次回の会議日時
よくある質問
1回目の家族会議で、売るか残すかまで決めるべきですか
決めなくてかまいません。1回目で決めるのは、家の事実がどこまで確認できているか、各人の希望は何か、次に誰がいつまでに何を調べるかまでです。名義や相続人の範囲が確定していない段階で結論を出すと、後で手続きに入れず、話し合いをやり直すことになります。
遠方に住む兄弟が参加できません。欠席のまま進めてよいですか
オンラインか電話での参加を先に検討し、それも難しい場合は、当日の記録を同じ形で送り、訂正や異議の期限を添えてください。連絡がないことを同意と扱うと、後から決定が覆ります。連絡が取れない人がいる場合も、氏名と立場、最後に連絡が取れた日を記録に残します。
会議の前に、どの資料をそろえておけばよいですか
固定資産税の納税通知書と課税明細書、登記事項証明書、公図、火災保険証券、この1年の維持費と立替の記録、外観と各部屋の写真です。見つからないものは、市町の資産税担当や法務局で再取得できるかを確認し、その結果も記録に残しておきます。
名義が祖父のままでした。会議はどう進めればよいですか
その日の選択肢の議論はいったん止め、戸籍で相続人を確定する作業を先に置いてください。相続登記の申請義務や、遺産分割がまとまらない間の相続人申告登記については法務省が案内しています。自分たちの場合の当てはめは司法書士へ確認する項目として宿題に書きます。
査定額を出してもらえば、家族の意見はまとまりますか
まとまりにくいのが実情です。査定は価格の見立てであって確定額でも手取りでもなく、手数料や測量、残置物の処分、税を引いた後の額が家族に入ります。金額だけを比べると、管理の手間を負っている人の負担が表から消えます。費用の欄と時間の欄を分けて並べてください。
話し合いが感情的になって進みません
威圧的な発言、その場での署名の要求、相続人であること自体の否定が出たら、その場で議事を閉じてください。合意できた点と、できていない点だけを記録し、弁護士へ相談する段階として引き継ぎます。不動産会社は家族間の交渉の代理人にはなれません。
公式出典・確認先
制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。
- ふじがおか実家カルテ|住所で分かること(fudosan.atawi.link)カルテで整理する範囲と、現地・専門家確認が必要な範囲を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続登記の申請義務化について(www.moj.go.jp)相続登記の基本的義務、遺産分割成立後の追加的義務、経過措置を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続人申告登記について(www.moj.go.jp)遺産分割がまとまらない場合の申告登記と必要書類を確認確認日:2026-08-27
- 国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(www.nta.go.jp)適用期間、対象家屋、相続人数による控除限度額等を確認確認日:2026-08-27

