実家を残すと年間いくらかかる?固定資産税以外の維持費一覧
実家を残すか手放すかを考えるとき、多くの家で最初に出てくる数字は固定資産税です。ところが一年を通して通帳から出ていくものを並べてみると、税はその一部にすぎません。火災保険、使っていなくてもかかる基本料金、自治会費、夏の草刈り、台風のあとの補修、そして通うための交通費と家族の時間。これらは請求書の届く先も、額の決まり方も、聞く相手もばらばらです。このページでは、その一年分を一枚の紙に積み上げる手順を、費目ごとに並べます。金額そのものは家によって違うので、この記事では額を断定せず、どの書類のどの欄を見れば自分の家の数字が出るかを示します。磐田市・袋井市・森町・掛川市の周辺で実際に発生するものを前提に、確定できるものから順に埋めていきます。

まず結論
順番があります。第一に、推測の要らないものから固める。納税通知書に書かれた固定資産税と都市計画税、保険証券に書かれた保険料、検針票に書かれた基本料金。この三つで土台ができます。第二に、頻度で変わるものに幅を持たせる。草刈りは年に何回か、巡回は誰が何往復するか。第三に、十年に一度しか来ないものを年割りにして足す。屋根、外壁、白蟻、給湯器。ここまで積んで初めて、残す・貸す・売るを同じ単位で比べられます。
税額は推測しない — 納税通知書と課税明細書から土台を作る
最初に置くのは、すでに額が決まっているものです。固定資産税と都市計画税は毎年必ず通知が届き、そこに書かれた数字が一年の土台になります。読み方と、額が動く条件を先に押さえます。
課税の対象になるのは、その年の一月一日時点で登記や課税台帳に載っている所有者です。この日を賦課期日と呼び、年の途中で売っても壊しても、その年の納税義務者は一月一日の所有者のまま動きません。年度の途中で売買したときに買主と日割りで精算する慣行はありますが、それは当事者間の取り決めであって、市から請求が行く相手が変わるわけではないという点は押さえておいてください。
通知は春に届きます。封筒の中には納付書のほかに課税明細書が同封されていて、実家の数字はここに全部載っています。土地と建物が別の行になっていて、それぞれに評価額、課税標準額、地積または床面積が並びます。土地が二筆三筆に分かれている家では行数もその分だけ増えます。まずこの明細書を探してください。見つからない場合は、市役所の固定資産税を扱う窓口で、名義人本人または相続人が課税台帳の内容を確認できる仕組みがあります。
明細を見て戸惑うのは、評価額と課税標準額が違うことです。税額の計算に使うのは課税標準額のほうで、住宅が建っている土地には原則として課税標準を圧縮する取扱いがあります。一般に、住宅一戸あたり二百平方メートルまでの部分は固定資産税の課税標準が六分の一、それを超える部分は三分の一とされ、都市計画税では三分の一と三分の二という扱いになります。この差が、建物を残すか壊すかで税額が変わると言われる理由です。
税率は、固定資産税が標準税率一・四パーセント、都市計画税は〇・三パーセントを上限として市町村が条例で定めます。都市計画税は市街化区域内の土地建物にかかるのが原則なので、同じ市内でも区域の外にある家には課されないことがあります。自分の実家がどちらなのかは、明細書に都市計画税の欄があるかどうかで分かります。欄が空いていれば、その分だけ年額は軽くなります。
納期は年四回に分かれている自治体が多く、期別の納付書が通知に綴じ込まれています。誰も住んでいない家では、この納付書が実家の郵便受けに届いたまま誰も開けないという事態が起きます。名義人が亡くなっている場合は、相続人の中から代表者を届け出て送付先を指定する手続きが用意されているのが一般的です。送付先を子の住所へ移す届出とあわせて、市の窓口で聞いておいてください。
額が小さい家では、そもそも課税されない場合もあります。同一の市町村内にある土地の課税標準額の合計が三十万円、家屋が二十万円に満たないときは、原則として課税されないという免税点の仕組みがあるためです。ただし合計で判定するので、市内に畑や山林を別に持っていれば合算されます。実家しか見ていなかったのに、後から別筆の土地が出てきて課税されていたという例は珍しくありません。
逆に、税額が上がる方向の話も先に知っておきます。建物を解体して更地にすると、住宅が建っていることを前提とした課税標準の圧縮が外れ、土地の税額は上がるのが原則です。よく六倍になると言われますが、実際には負担調整の仕組みがあり、家ごとに動き方が違います。解体を検討する段階になったら、更地にした場合の見込みを市の窓口に相談してください。概算を教えてもらえることがあります。
空家等対策の制度の側からも税は動きます。管理が行き届かない状態が続いて管理不全空家等として勧告を受けた場合、住宅用地に対する課税標準の特例の対象から除外され得る仕組みが設けられています。草木が道路へ出ている、屋根材が飛びそうだ、といった状態を放置したことが、翌年の税額に返ってくる可能性があるということです。制度の考え方は国土交通省の空き家対策の案内で確認できます。
名義が親のままなら、登記の側も同時に進めてください。相続によって不動産を取得したことを知った日から三年以内に相続登記を申請する義務が定められており、遺産分割がまとまらない段階でも相続人申告登記という手続きが用意されています。詳しい要件は法務省の案内に載っています。税の話と登記の話は別ですが、どちらも先送りにすると、次に動こうとした年にまとめて重くのしかかります。
- 今年の納税通知書と課税明細書を探し、見つからなければ市の窓口で確認方法を聞く
- 土地の行と建物の行を分け、課税標準額と評価額の差がついているかを見る
- 都市計画税の欄に数字が入っているかどうかを確かめる
- 名義人が亡くなっている場合は、通知の送付先を変える手続きを聞く
- 課税明細に載っている筆の数と地積を、そのまま草刈りと解体の見積もり用にメモする
| 欄 | 読み取れること | 年間費用の表への使い方 |
|---|---|---|
| 評価額(価格) | 市が評価した土地・家屋の価格。三年ごとに評価替えがある | そのままでは税額にならない。次の欄と必ず並べて見る |
| 課税標準額 | 税率をかける基になる額。住宅用地の特例が効いていれば評価額より小さい | 税額の根拠。建物を壊すと変わる欄でもある |
| 固定資産税額・都市計画税額 | この一年に納める額。期別の納付書と合計が一致するか確かめる | 年間費用の表の一行目に入れる確定値 |
| 地積・床面積・建築年 | 土地の広さ、建物の規模と築年数 | 草刈りの面積、解体の見積もり、保険の条件に使い回せる |
| 筆ごとの行数 | 土地が何筆に分かれているか | 私道や畑が混じっていないかを確認する入口になる |
図1一年分の額を確定させるまでの順番
火災保険は空き家になった時点で条件が変わることがある
保険料は年間費用の中でも大きい費目ですが、それ以上に大事なのは、住む人がいなくなったことで補償の効き方が変わる場合があるという点です。証券を探すところから始めます。
まず保険証券を探してください。証券番号、保険会社、保険期間、保険金額、年間の保険料、そして補償の内訳が載っています。長期の契約を一括で払っている家では、毎年の通帳に保険料が出てこないため、費用の表から丸ごと抜け落ちます。満期の年に数十万円単位の請求が来て初めて思い出すという流れになりがちなので、一括払いなら総額を残りの年数で割って、年額の行に入れておきます。
住む人がいなくなった家では、契約上の区分が変わることがあります。人が居住している建物と、誰も住んでいない建物とでは、保険会社が引き受ける際の扱いが分かれるためです。区分が変われば保険料も条件も変わり、そもそも継続できるかどうかも会社によって違います。取扱いは一律ではないので、契約している会社に、いまの使われ方を伝えたうえで確認してください。これは価格の交渉ではなく、いざというときに支払われるかどうかの確認です。
同じ理由で、居住実態が変わったことを保険会社へ知らせる義務が契約に定められている場合があります。伝えないまま事故が起きると、支払いの場面で争いになることがあります。親が施設へ移った、入院が長引いている、家財を運び出して物置のように使っている。どの状態にあたるかで扱いが変わることもあるため、事実をそのまま伝えて判断してもらうのが結局は早道です。
地震の補償にも注意が要ります。地震保険は火災保険に付帯して契約するもので、対象となる建物の区分に条件があります。空き家として扱われると付帯を続けられない場合があり、そのときは地震による損害が補償の外に出ます。遠州は南海トラフの想定区域にかかる地域です。津波や液状化の想定は市が公開している資料で確認でき、実家の場所によって重みはまったく違います。
補償の中身も一つずつ見ます。火災、落雷、破裂爆発のほかに、風で屋根が飛ぶ風災、雹や雪による損害、水災、給排水設備の事故による水濡れ、外部からの物体の衝突、盗難、そして破損や汚損。誰も住んでいない建物では、このうち盗難や破損汚損が対象から外れる商品があります。免責金額がいくらに設定されているかも証券に書かれていて、小さな損害では自己負担だけで終わることもあります。
遠州で実際に多いのは風です。冬の空っ風で棟の漆喰が痩せ、秋の台風で瓦がずれ、雨どいの継ぎ目が外れる。人が住んでいれば雨漏りの染みで気づきますが、無人の家では次に行くまで誰も知りません。台風が通過したら、屋根に登らず地上と二階の窓から写真を撮り、日付が分かる形で残します。保険金の請求には期間の定めがあるため、直せるかどうかを迷っている間に期限が来ないよう、早めに契約先へ一報を入れてください。
自分の家が壊れる話だけでなく、他人に損害を与えたときの備えも見ておきます。塀が倒れて通行人が怪我をした、飛んだ瓦が隣家の車を傷つけた、といった場合です。掛塚のように家と細い道が近接している地区では、通行人との距離が短く、落下物の影響が出やすくなります。個人賠償責任の特約や、建物の管理に関する賠償の補償が付いているか、そして空き家でも対象になるかを、契約先へ確かめてください。
満期の管理も年間費用の一部です。満期が近づいた空き家では、更新の条件が前と同じにならないことがあります。断られる可能性も含めて、満期の半年前には次をどうするか動き始めてください。複数の会社から見積もりを取り、補償範囲と免責金額をそろえて比べます。保険料の安さだけで選ぶと、いちばん起こりやすい風災の補償が薄くなっていた、ということが起こります。
最後に、保険を減らす方向の判断もあり得ます。建物の価値が下がっているのに保険金額が昔のままなら、保険料だけが高い状態です。とはいえ建て直す前提の額を下げすぎると、火災の後に片付けの費用すら足りません。この兼ね合いは商品ごとに違うので、いま加入している内容を持ったうえで代理店に相談してください。ここでも年間保険料を確定させて、費用の表の二行目に書き入れることが目的です。
- 証券を探し、証券番号・保険会社・満期日・年間保険料を書き出す
- 長期一括で払っているなら、総額を残り年数で割って年額に直す
- 誰も住んでいない状態であることを契約先へ伝え、扱いを確認する
- 風災と水災、賠償の特約が現在も効くかどうかを一つずつ確かめる
- 満期の半年前に動き出す日をカレンダーへ入れておく
| 確認すること | 証券・契約のどこを見るか | 変わり得る点 |
|---|---|---|
| 建物の区分 | 契約時の申込内容と、現在の使われ方 | 居住していない建物として扱われ、保険料や引受条件が変わる場合がある |
| 通知の義務 | 約款の通知に関する条項 | 居住実態の変化を伝えないと、支払いの場面で争いになることがある |
| 地震の補償 | 地震保険の付帯の有無と保険金額 | 区分によっては継続できない場合がある |
| 風災・水災・盗難・破損汚損 | 補償内容の一覧と免責金額 | 空き家では一部が対象外となる商品がある |
| 賠償の備え | 個人賠償責任特約や管理に関する賠償の有無 | 空き家でも対象になるかどうかは商品ごとに違う |
| 保険期間と払い方 | 保険期間の欄と、年払いか長期一括か | 一括払いだと年間費用の表から抜け落ちやすい |
使わなくてもかかる分を拾う — 基本料金と、家に付いてくる会費
電気も水道も、使用量がゼロでも消えない部分があります。加えて、実家に付いてくる会費や点検の費用が通帳から静かに出ていきます。ここは判断より先に、拾い出しに徹します。
拾い出しの最短経路は通帳です。実家の引き落とし口座の一年分を並べ、毎月出ているものと、年に一度だけ出ているものに分けます。検針票や契約書を一枚ずつ探すより先に通帳を見ると、そもそも何と契約しているのかが分かります。忘れられている契約はここで見つかります。口座振替ではなくクレジットカード払いのものは通帳に出ないため、カードの明細も同じ一年分をそろえてください。
電気は、料金の内訳が検針票に印字されています。契約している容量に応じて決まる基本料金の形と、一定の使用量までを一括で計算する最低料金の形があり、どちらのプランかで使わない月の額が変わります。使用量に連動する再生可能エネルギー発電促進賦課金は、使わなければその分は小さくなります。三か月分を横に並べ、使っていない月にいくら出ているかを目で確かめるのが確実です。
水道は、引き込んでいる管の口径によって基本料金が決まる仕組みが一般的です。十三ミリと二十ミリでは同じ市内でも額が違い、一定の水量までを基本料金に含める方式を取っている自治体もあります。下水道が来ている地域では、下水道使用料が水道の使用量に連動して計算されるのが通例で、こちらにも基本の額があります。井戸と併用している家は、認定水量という別の考え方で下水道側が計算されることがあるため、市の窓口で自分の家の扱いを聞いてください。
ガスは、都市ガスなら基本料金と従量料金、プロパンなら販売店ごとの料金表になります。プロパンでは、敷地内の配管工事の費用を毎月の料金に上乗せして回収している契約があり、その場合は使っていなくても支払いが続きます。契約時に交付されている書面に、設備の所有区分と精算の扱いが書かれています。手元になければ販売店に写しを頼んでください。
見落としが多いのは通信と放送です。固定電話の基本料、インターネット回線、ケーブルテレビ、放送の受信契約、警備会社の見守り。親が長く契約していたものが、誰も使わないまま引き落とされ続けます。中には解約に本人確認が必要で、名義人が亡くなっていると手続きに戸籍が要るものもあります。まとめて解約に動く前に、必要な書類を電話で聞いてから一日で回るほうが効率的です。
自治会費や町内会費も年間費用に入ります。誰も住んでいないのだから関係ないと考えがちですが、地区によっては空き家でも一定の負担を求められます。ごみ集積所の管理、水利費、共同墓地の管理料、常会や班の役。地区ごとに取り決めが違い、休会や減額の扱いが用意されている場合もあります。まずは区長や組長にあたる方へ、いまの状況を伝えて相談してください。近隣との関係は、草や落ち葉の話にも直結します。
下水道が来ていない地域では、浄化槽の費用が毎年かかります。保守点検、清掃、そして法令に基づく検査。使っていなくても原則として対象になり、年間の合計は小さくありません。契約している業者の書類と、直近の点検記録を手元に置いて、使わない期間の扱いと費用を確かめてください。市の浄化槽の担当窓口でも、制度上どうなるかは聞けます。
農地や山林が実家に付いている家では、そちらの費用も同じ表に入れます。土地改良区の賦課金、水路の共同管理、山の下草刈り。匂坂のように農振農用地が広がる地域では、耕作していなくても地区の負担が続くことがあります。これらは請求書の様式も届く時期も市の税とは違うため、通帳の一年分を見ないと存在に気づけません。
ここまで拾ったら、費目ごとに確認先を横に書き添えます。電力会社、市の上下水道の窓口、ガスの販売店、通信の各社、自治会、浄化槽の業者。誰に聞けば額が確定するかを並べておくと、次に動く人が同じ電話を繰り返さずに済みます。止めるか残すかの判断はこの後の話で、まずは一年で出ていく総額を出すことに徹してください。
- 実家の口座の通帳とカード明細を、それぞれ一年分そろえる
- 毎月出ているものと年に一度だけ出ているものに分けて書き出す
- 検針票を三か月分並べ、使っていない月の基本料金の額を確かめる
- 自治会や地区の負担について、空き家の扱いを役員へ相談する
- 費目ごとに、額を確定できる連絡先を横に書き添える
| 費目 | 使用量がゼロでも残る部分 | 額を確かめる書類 |
|---|---|---|
| 電気 | 契約容量に応じた基本料金、または一定使用量までの最低料金 | 検針票の内訳と、契約中のプランの料金表 |
| 水道 | 引き込み管の口径ごとに決まる基本料金。基本水量を含む方式もある | 請求書または検針票と、市の上下水道の料金表 |
| 下水道 | 水道の使用量に連動する部分とは別に、基本の額がある | 同じ請求書の下水道の欄。井戸併用なら認定水量の扱いを窓口へ |
| ガス | 都市ガスは基本料金。プロパンは配管工事分が上乗せされている契約もある | 検針票と、契約時に交付された書面 |
| 通信・放送・警備 | 使わなくても月額が続く。解約に書類が要るものがある | 通帳やカードの明細と、各社の契約書 |
| 自治会・地区の負担 | 土地や地区に付くため、空き家でも求められることがある | 地区の取り決め。役員に空き家の扱いを直接聞く |
図2誰が毎年お金を求めてくるのか
手を入れないと増える費用 — 草・雨・虫と、通うための時間
ここからは額が一つに決まりません。頻度と季節で変わる費目です。放っておくと安く済むように見えて、実際には翌年の作業が重くなり、単価も上がっていきます。
草は、遠州では四月に立ち上がり、梅雨で一気に伸び、九月まで止まりません。年に三回、初夏と盛夏と秋口に入るのが一つの目安です。一年放置すると刈るのではなく伐る作業になり、根が張った分だけ人手と時間が増えます。前年に手を入れているかどうかで見積もりが変わるのはこのためです。作業費のほかに刈った草の処分費が別立てになることが多く、量が多いと運搬の回数も増えます。
頼み先は主に三つあります。市のシルバー人材センター、造園業や草刈りを請け負う事業者、そして空き家管理を業とする会社です。それぞれ受け付ける作業の範囲と、繁忙期の埋まり方が違います。夏場は申し込みが集中して希望日に入れないことがあるので、初夏の作業を頼むなら春のうちに連絡してください。見積もりを取るときは、課税明細に載っている地積と、敷地の写真を渡すと話が早く進みます。
隣地や道路へのはみ出しは、費用より先に関係の問題になります。竹や笹は地下茎で隣へ入り、柿や金木犀の枝は道路側へ張り出します。越境した枝は、原則としてその木の所有者が切るべきものとされてきましたが、一定の要件のもとで隣地の側が自ら切除できる取扱いが民法の改正で設けられています。要件の当てはめは個別の事情によるため、実際に問題が起きているなら弁護士や市の相談窓口へ確認してください。
雨と風の後は点検が要ります。台風が抜けた翌日、屋根に登らず地上と二階の窓から、瓦のずれ、棟の漆喰、雨どいの外れ、雨戸、テレビのアンテナを見ます。写真は日付が分かる形で残してください。小さなずれを一年放置すると、天井裏に水が回り、下地の張り替えまで広がります。修理費が一桁変わるのはこの段階です。屋根の上の確認が必要なら、足場や高所作業に慣れた業者へ頼みます。
白蟻は、湿気の多い土地ほど気にする必要があります。床下の点検口から確認できるものもありますが、床下は暗く狭いため、無理に潜らず点検を頼むのが現実的です。防蟻の処理は薬剤の効果が数年で薄れるとされ、一般的には五年前後で再施工の案内が来ます。誰も住んでいない家は、床下に水が入っても気づきません。畳を上げたままにする、押し入れの襖を開けておくといった、風の通り道を作る工夫は費用がかかりません。
設備は、使わないことでも傷みます。給湯器はゴムやパッキンが硬くなり、井戸のポンプは長く止めると砂を噛みます。エアコンは冷媒が抜けることがあります。年に一度、短時間でよいので動かしておくと、いざ売却の内覧や賃貸の募集を考えたときに、故障が判明して工事に追われる展開を避けられます。動かせる状態にしておくこと自体が、家の値打ちを保つ作業です。
大きな修繕は、十年に一度の山として年割りにします。外壁と屋根の塗装や葺き替え、水回りの更新、白蟻の再施工、給湯器の交換。それぞれ何年もつと言われているかを業者に聞き、見積もりの額をその年数で割って、毎年の行に足します。この操作をすると、突発的に見えていた出費が定期的な負担として姿を現します。実家を残すという選択の重さは、ここまで積んで初めて正確になります。
忘れやすいのが、通うための実費と時間です。片道の距離、往復のガソリン代や高速代、そして一回あたりに使う半日から一日。県外に住む子が月に一度戻るなら、それだけで年に十二回です。時間を金額に換算するかどうかは家族で決めればよいのですが、換算しないまま比較すると、残す案だけが無料の労力で支えられている状態になります。誰がその回数を担うのかも一緒に書いてください。
巡回そのものを外注する選択肢もあります。月に一度の通風、通水、郵便物の回収、外観の写真報告といった内容で、空き家の管理を請け負うサービスがあります。料金と作業範囲は事業者ごとに違い、草刈りが別料金のこともあります。遠方に住んでいて年に数回しか戻れないなら、往復の実費と外注費を並べて比べてください。安いほうを選ぶという話ではなく、どちらが続けられるかという話です。
- 草刈りの依頼先を春のうちに決め、地積と敷地の写真を渡して見積もりを取る
- 道路や隣地へ出ている枝と竹を写真に撮り、対応の順番を決める
- 台風のあとに撮る場所をあらかじめ決めておく(屋根・雨どい・雨戸・アンテナ)
- 外壁・屋根・白蟻・給湯器について、次の更新時期と概算を業者に聞く
- 誰が年に何回通うかを書き出し、往復の実費を実額で記録する
| 作業 | 頻度の目安 | 額を確かめる先 |
|---|---|---|
| 草刈り・除草 | 四月から九月に年二〜三回。放置した年の翌年は重くなる | シルバー人材センター、造園・草刈りの事業者、空き家管理の会社 |
| 樹木の剪定・伐採 | 数年に一度。越境が出たらその年に | 造園業者。道路や隣地に関わる場合は市の担当や隣家とも相談 |
| 台風・大雨のあとの点検 | その都度。年に一〜数回 | 自分で地上から撮影。屋根に上がる必要があれば専門業者へ |
| 白蟻の点検と防蟻処理 | 点検は年一回、処理は数年ごとが一般的 | 施工業者。前回の施工記録と保証書を用意して聞く |
| 設備の試運転 | 年に一度、短時間でよい | 給湯器やポンプの取扱説明書、据え付けた業者 |
| 巡回(通風・通水・郵便) | 月一回が目安。年数回しか行けないなら外注も検討 | 往復の実費を実額で記録するか、管理サービスの見積もり |
十年で積むと何が見えるか — 期限のある選択肢と並べて決める
最終章では、一年分の額を十年に伸ばします。単純に十倍するのではなく、増える要素と、期限のある制度を同じ紙に置きます。目的は、残す・貸す・売るを同じ単位で比べられるようにすることです。
十年分の表は三段で作ります。上段は動かない固定費で、税、保険料、基本料金、自治会費。中段は頻度で変わる費用で、草刈り、巡回、点検。下段は十年に一度の臨時費で、屋根、外壁、白蟻、給湯器、そして災害のあとの補修です。上段は掛け算で伸ばせますが、中段と下段は年ごとに違う数字が入ります。三段に分けておくと、家族で話すときに、どの段の話をしているのかが混ざりません。
十年を単純な掛け算にできない理由もはっきりさせておきます。建物は年ごとに古くなり、修繕の単価は上がり、解体を請け負う側の人手も限られています。いま更地にする費用と、十年後に更地にする費用が同じである保証はありません。逆に土地の評価が下がれば税は軽くなります。どちらに動くかを記事の側で断定はできないので、時期による差が知りたいなら、解体業者に複数社から見積もりを取り、その前提条件をそろえて比べてください。
次に、払い続ける額と向き合う形で、得られたはずのものを置きます。売れば手元に入る代金、貸せば入る賃料。どちらも、この記事で数字を出せる話ではありません。価格は査定、賃料は賃貸の担当が現地を見て初めて出るものです。ただ、十年の維持費の合計が出ていれば、査定額や想定賃料を聞いたときに、その数字が自分にとって何を意味するかを即座に判断できます。順番として、費用を先に固めておくほうが強いのです。
期限のある制度も同じ紙に置きます。相続した家屋とその敷地を売った場合に、譲渡所得から一定額を控除できる特例が設けられており、相続の開始があった日から三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までに売ることなどが要件とされています。昭和五十六年五月三十一日以前に建築された家屋であること、相続の開始直前に被相続人が住んでいたことなど、条件は細かく定められています。控除の額も相続人の数によって変わる取扱いがあります。
この期限が意味するのは、十年計画を立てている間に、選べたはずの道が一つ閉じることがあるという点です。制度の内容と適用期間は国税庁の案内で確認できますが、自分の家に当てはまるかどうかの判断は税理士の領域です。相続が起きているなら、費用の表ができた時点で一度、要件に該当する可能性があるかどうかだけでも相談しておくと、判断の期日が具体的な日付になります。
登記の期限も並べます。相続で不動産を取得したことを知った日から三年以内に申請する義務が定められており、遺産分割が長引いている場合には相続人申告登記という手続きがあります。名義が親のままの家は、売ることも、貸すことも、担保に入れることもできません。十年の維持費を払い続けた末に、いざ売ろうとした年から名義の整理を始める。この順番になると、費用と手間がもう一度重なります。
放置そのものが費用を生む道筋も確認しておきます。空家等対策の制度では、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態にある建物を管理不全空家等として、助言や指導、さらに勧告という段階が設けられています。勧告に至ると、住宅用地に対する課税標準の特例から除外され得ます。草や倒れかけた塀を先送りにした結果が、翌年の税額として返ってくることがあるということです。
残すという判断そのものは、否定されるものではありません。仏壇を動かせない、盆に集まる場所として要る、いずれ子の誰かが住むかもしれない。どれも正当な理由です。ただ、残すなら年間の上限額と、誰が払うのか、そしていつ見直すのかを決めてください。上限を超えた年に自動的に再検討が始まる形にしておけば、決めていない状態と、決めて残している状態を区別できます。
費用を誰が負担しているかも、記録に残す価値があります。相続人が複数いる家では、近くに住む一人が税も草刈り代も立て替え続け、その事実が誰にも共有されないまま年数が過ぎることがあります。領収書と振込の記録を残し、年に一度、費用の表と一緒に共有してください。金額の精算をどうするかは別の話ですが、誰がどれだけ負担したかが見えているだけで、話し合いの温度はかなり変わります。
- 固定費・変動費・臨時費の三段に分けた十年分の表を作る
- 解体や大規模修繕の見積もりを取り、時期による差の見込みを聞く
- 相続が起きているなら、期限のある特例の要件に当てはまるかを税理士へ相談する
- 名義の状態を確認し、登記の手続きを費用の話と同時に進める
- 残す場合の年間上限額、負担する人、次の見直し日の三つを決めて書き残す
| 段 | 入るもの | 伸ばし方と注意 |
|---|---|---|
| 固定費 | 固定資産税・都市計画税、火災保険料、基本料金、自治会費 | 年額を掛け算で伸ばせる。ただし評価替えや保険の更新で単価が変わる年がある |
| 変動費 | 草刈り、樹木の手入れ、巡回の実費と時間、点検の外注 | 少ない年と多い年の二本で持つ。手を入れなかった翌年は重くなる |
| 臨時費 | 屋根・外壁、白蟻の再施工、給湯器の交換、災害後の補修 | 見積額を耐用年数で割って毎年の行に足す。時期によって単価が動く |
| 期限のある項目 | 相続登記の申請期限、相続した家屋の売却に関する特例の期限 | 金額ではなく日付として書く。十年の表より短い期日になることがある |
図3使う予定と負担の重さで、次の一手を仕分ける
このページ固有の確認メモ
ここからは「実家を残すと年間いくらかかる?固定資産税以外の維持費一覧」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。
確認しておく事実
この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。
- 確定している額から先に埋める。税は納税通知書、保険は証券、基本料金は検針票
- 課税明細書は税額だけでなく、地積と築年という次の見積もりの材料にもなる
- 住む人がいなくなると、火災保険の区分や補償が変わることがある
- 使わなくてもかかる部分は、通帳の一年分を並べるといちばん早く拾える
- 草・点検・巡回は頻度で変わるため、少ない年と多い年の二本で持つ
- 十年に一度の修繕は年割りにして毎年の行に足す
- 十年の表と、特例や登記の三年という期限を同じ紙に置いて判断する
避けたい判断
この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。
- 固定資産税だけを見て、残すほうが安いと結論づける
- 長期一括で払った火災保険を、年間費用の表に入れ忘れる
- 空き家になったことを保険会社へ伝えないまま契約を続ける
- 草刈りを一年見送り、翌年に伐採の費用として跳ね返る
- 通うための往復費と時間を無料の労力として扱う
- 十年計画を立てている間に、期限のある特例の適用時期が過ぎる
- 近くに住む相続人が一人で立て替え続け、記録が残らない
手元で探すもの
見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。
- 納税通知書と課税明細書(土地・建物の課税標準額)
- 都市計画税の欄の有無
- 火災保険の証券番号・満期日・年間保険料
- 地震保険の付帯と補償範囲
- 電気・水道・ガスの検針票三か月分
- 実家の口座の通帳とカード明細(一年分)
- 自治会費・土地改良区の賦課金・浄化槽の点検費
- 草刈りの依頼先と年間の回数
- 外壁・屋根・白蟻・給湯器の次の更新時期
- 通う人と年間の往復回数、実費
- 名義の状態と相続登記の期限
- 年間上限額と次の見直し日
よくある質問
固定資産税以外に、まず何を数えればよいですか
火災保険の年間保険料、電気・水道・ガスの基本料金、自治会や地区の負担、草刈りと巡回の費用です。額を探す近道は実家の口座の通帳を一年分並べることで、毎月出ているものと年に一度だけ出ているものに分かれます。カード払いの契約は通帳に出ないため、カードの明細も同じ期間でそろえてください。
誰も住んでいないのに火災保険は要りますか
建物がある限り、火災も風害も起こります。むしろ確認が必要なのは、住む人がいなくなったことで契約の区分や補償が変わる場合があるという点です。取扱いは会社ごとに違うため、現在の使われ方を伝えたうえで、継続の可否と補償範囲を契約先へ確かめてください。
建物を壊せば維持費は減りますか
保険料や基本料金、修繕の負担は減りますが、住宅が建っていることを前提とした土地の課税標準の圧縮が外れ、税額は上がるのが原則です。解体費も一度に出ていきます。更地にした場合の税の見込みは市の窓口へ、売却との比較は査定を取ってから並べてください。
草刈りは自分たちでやれば費用はかかりませんか
作業費はかかりませんが、往復の実費と一日分の時間は毎回かかります。県外から月に一度戻るなら年に十二回です。この回数と時間を表に書かないと、残す案だけが家族の労力で支えられた状態になり、他の選択肢と公平に比べられません。
十年分を計算する意味はありますか
一年分では小さく見える額も、十年並べると判断の材料になります。加えて、相続に関わる特例や登記の期限のように、十年より短い期日を持つものがあります。長い表と短い期限を同じ紙に置くと、いつまでに何を決めるべきかが日付として見えてきます。
税の特例が使えるかどうか、この記事で判断できますか
できません。相続した家屋を売ったときの特例には、建築時期、居住の状況、売却の期限、控除額の上限など細かい要件があり、当てはまるかどうかは個別の事情によります。制度の概要は国税庁の案内で確認し、適用の可否は税理士へ相談してください。
公式出典・確認先
制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。
- ふじがおか実家カルテ|住所で分かること(fudosan.atawi.link)カルテで整理する範囲と、現地・専門家確認が必要な範囲を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続登記の申請義務化について(www.moj.go.jp)相続登記の基本的義務、遺産分割成立後の追加的義務、経過措置を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続人申告登記について(www.moj.go.jp)遺産分割がまとまらない場合の申告登記と必要書類を確認確認日:2026-08-27
- 国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(www.mlit.go.jp)管理不全空家等・特定空家等に関する制度と指針を確認確認日:2026-08-27
- 国土交通省|空き家対策 特設サイト(www.mlit.go.jp)管理不全空家制度の概要と所有者が行う管理の考え方を確認確認日:2026-08-27
- 国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(www.nta.go.jp)適用期間、対象家屋、相続人数による控除限度額等を確認確認日:2026-08-27

