実家の建築確認書・図面がないとき、どこまで調べられる?
昭和や平成の初めに建てた実家では、確認済証も検査済証も設計図も見つからない、という状態のほうがむしろ普通です。ところが、売る、建て替える、直す、相続後に税の特例を使う。どの場面でも、いつ建てたのか、建築基準法の手続きを経ているのかを書類で示す必要が出てきます。ここで大切なのは、書類が手元にないことと、記録がどこにも残っていないことは別だという点です。このページでは、磐田市・袋井市・森町で実家を引き継いだ人が、行政と法務局に残っている記録をどの順番で取り、足りない部分をどう現地で補い、買主にどう説明するかを整理します。推測で埋めず、確認済み・未確認・専門家確認の三つに仕分けることが目的です。

まず結論
確認済証と検査済証は原則として再交付されませんが、行政の台帳に記録が残っていれば、その内容を証明する書類を取れます。図面は付いてきません。足りない分は、法務局の建物図面と各階平面図、課税明細、上下水道や道路の記録、そして現地の実測と写真で組み立てます。最後に、分かったことと分からなかったことを同じ精度で書いて買主へ渡す。この順番で進めると、図面がなくても説明できる状態に届きます。
図面がないことが効いてくるのは、売る前ではなく決めた後
図面や確認済証がなくても、住み続けることはできます。困るのは、売る・貸す・直す・分けるという判断を、他人に説明する段になってからです。この章では、どの場面で何を求められるのかを先に並べます。
実家の押し入れから出てくるのは、たいてい権利証と火災保険の証券、それに工事のときの見積書までです。確認済証、検査済証、設計図書一式がそろって残っている家は多くありません。まず知っておきたいのは、確認済証と検査済証は原則として再交付されないという点です。建築確認の申請書は正本と副本が作られ、副本は建築主へ返されます。手元にあったはずの副本をなくした場合、同じ紙をもう一度出してもらうことはできません。代わりに用意されているのが、記録が残っていることを行政が証明する書類で、これは次の章で扱います。
困る場面の一つ目は、買主が住宅ローンを使うときです。金融機関は担保の評価にあたって、建物がいつ建てられ、法の手続きを経ているのかを見ます。昭和五十六年五月三十一日以前に建築確認を受けた建物は、いわゆる旧耐震の区分に入るため、融資の条件や買主が使える税の取扱いが変わることがあります。買主側の住宅ローン控除や登録免許税の軽減では、原則として登記事項証明書に記載された建築の年月で判定する取扱いがあり、それより古い建物では耐震基準への適合を示す書類を求められる場合があります。適用の可否は税務署または税理士へ確認してください。
二つ目は建て替えと大きな改修です。新しく建てるとき、増築するとき、構造を大きくいじるときには、あらためて建築確認の手続きが必要になる場合があります。その審査では、敷地が建築基準法上の道路にどれだけ接しているか、建蔽率や容積率に収まるか、防火の指定がどうかを見ます。いま建っている建物の図面がないと、設計者は現況を測るところから始めることになり、その分の費用と日数が上乗せされます。手続きの区分は改正されているため、いま何が必要かは、設計を頼む相手と市の建築を担当する窓口の双方に確認してください。
三つ目は相続した後の税です。相続した実家を売るときに使える可能性がある被相続人の居住用財産(空き家)の特例では、家屋が古い時期に建てられたものであることなどが要件に挙げられています。手続きでは、家屋の所在する市区町村から被相続人居住用家屋等確認書の交付を受け、確定申告に添付します。申請の際には、建築の時期や被相続人が住んでいたことを示す資料を求められます。要件と必要書類は国税庁の案内と市区町村の窓口で確認し、使えるかどうかの判断そのものは税理士へ渡してください。
四つ目は耐震と補助の制度です。静岡県と各市町は木造住宅の耐震化を長く進めており、診断や補強工事の支援では、対象を古い時期に着工した木造住宅に限っていることがあります。申込みのときに建築の年月を示す資料を求められるため、ここでも確認を受けた年月日が効いてきます。制度の名称、対象、受付の期間、費用の負担割合は市町ごとに違い、年度でも変わります。磐田市・袋井市・森町のいずれも、建築や住宅を担当する窓口へ電話すれば、対象になりそうかどうかまでは教えてもらえます。
五つ目は保険と工事の見積りです。地震保険には建築の年による割引があり、確認の年月日や登記の新築年月日が根拠の資料になります。屋根の葺き替えや外壁の改修を頼むときも、面積が分からなければ概算しか出てきません。遠州は冬の空っ風と夏から秋の台風で屋根まわりが傷みやすく、実家を空けたまま数年たつと、雨漏りから内部の傷みが進みます。複数の業者から見積りを取りたい場面ほど、面積と階数と構造を一枚にまとめた資料があると比較が早くなります。
六つ目は隣の土地との関係です。図面がないと、塀がどちら側に建っているのか、屋根や樋がはみ出していないか、排水管が隣を通っていないかを説明できません。掛塚のように道が細く家が近接している地区や、古くからの集落では、こうした重なりが当たり前に残っています。境界そのものを確定する作業は土地家屋調査士の領域ですが、越境しているように見える箇所を写真で押さえておくことは所有者にもできます。撮った日付が残るので、後の相談が早くなります。
こう並べてみると、必要な資料は場面ごとに違うことが分かります。すべてを一度にそろえようとすると、途中で必ず止まります。まず、いま自分の家がどの場面に立っているのかを決めてください。期限があるのは税と補助の制度です。買主が現れてから慌てるのは融資と説明です。急がないのは保険と見積りです。この順に並べ替えてから次の章の資料集めに入ると、使わない書類を取り寄せる回り道が減ります。
- 何のために建築の資料が要るのかを、場面ごとに紙へ書き出す
- 確認済証・検査済証・設計図・工事の見積書が家のどこにあるか、一巡して探す
- 登記事項証明書と課税明細で、建物の新築年月日と床面積を先に押さえる
- 昭和五十六年五月三十一日以前かどうかを判定できる資料を確保する
- 税と補助制度の期限だけは、ほかの作業より先に確認しておく
図1図面がない実家を、六つの段階に分けて進める
建築確認台帳記載事項証明書で、番号と年月日を取り戻す
確認済証や検査済証をなくしても、行政の台帳に記録が残っていれば、その内容を証明する書類を取れます。図面は付いてきませんが、確認の番号と年月日が分かるだけで進む話がいくつもあります。
建築確認を受けた建物は、確認をした行政庁の台帳に記録が残ります。その台帳の内容を写して証明したものが、建築確認台帳記載事項証明書です。自治体によって台帳記載事項証明、建築確認済証明などと呼び方が違いますが、性質は同じで、確認済証や検査済証そのものの再交付ではありません。証明されるのは記録の存在と内容であり、多くの場合、確認の番号と年月日、完了検査を受けていればその番号と年月日、建築主の氏名、敷地の地名地番、用途、構造、階数、床面積といった項目が並びます。
気をつけたいのは、図面が付いてこないという点です。確認の申請に添付された配置図や平面図は、正本と一緒に保存されていた時期もありますが、保存の年限を過ぎて廃棄されていることが少なくありません。台帳の記録は残っているが図面は残っていない、というのが昭和期の木造住宅ではよくある返答です。それでも番号と年月日が分かれば、耐震基準の区分の判定にも、税や補助制度の申請にも使えます。図面の代わりになるものは、次の章と第4章で少しずつ組み立てていきます。
どこへ請求するかは、その建物の確認をどこが扱ったかで決まります。建築確認を扱う行政庁は市に置かれている場合と県が所管している場合があり、時期によっても変わってきました。平成十年代の後半からは、指定確認検査機関が確認をした物件も増えています。まずは実家のある市の建築を担当する窓口へ電話し、所在地とおおよその建築年を伝えて、台帳を持っているのはどこかを聞いてください。所管が違えば、そこから県の窓口や機関を案内してもらえます。この一本で行き先が決まります。
請求のときに必要になるのは、まず物件を特定する情報です。日常使っている住居表示ではなく地名地番で探すのが原則なので、固定資産税の課税明細書か登記事項証明書を手元に置いて申請書を書きます。建築主の氏名も検索の手がかりになります。実家では建築主が祖父の名前になっていることがあるため、建てた当時の事情を家族に聞いておくと空振りが減ります。手数料は自治体ごとに定められており、一件あたり数百円程度に収まることが多いものの、金額と支払い方法は事前に確かめてください。
台帳に見つからないと言われたときは、その意味を三つに分けます。一つは、そもそも建築確認を受けていない建物であること。もう一つは、確認は受けたが記録が保存の年限を過ぎて残っていないこと。三つ目は、検索の条件が合っていないだけであることです。地名地番が合併前の旧町村の表記のままだったり、分筆で番号が変わっていたり、建築年の見当が数年ずれていたりすると、記録があっても出てきません。年の幅を前後に広げて、もう一度探してもらえないかを頼んでみる価値があります。
確認の申請そのものが不要だった時期と地域もあります。手続きの要否は、都市計画区域の内か外か、建物の規模や構造がどうかによって分かれてきました。区域の線は市町村の合併より前に引かれたものが残っていることもあり、同じ市内でも地区によって事情が違います。農地の中に建つ納屋や離れ、後から母屋につないだ小屋のような建物では、確認を受けていないこと自体は珍しくありません。区域の内外は、市の都市計画を担当する窓口で確認できます。
検査済証がない、という結果もよく出ます。工事の完了検査を受けた割合は昭和の時期には高くなく、確認だけ受けて検査を受けないまま使われてきた建物が各地にあります。検査済証がないことと、その建物が違法であることは同じではありません。ただし、後から大きく増改築するときや用途を変えるときには、いま建っているものが法に適合しているかを別に調べる必要が出ます。国土交通省は、検査済証のない建築物について、指定確認検査機関を活用した法適合状況の調査に関する考え方を示しています。
交付までの日数は窓口によって差があります。その場で出る自治体もあれば、書庫から台帳を探すために数日かかる場合もあります。郵送での請求を受け付けているかどうかも聞いてください。遠方に住んでいて平日に動けない人にとっては、郵送で取れるかどうかが工程全体の速さを決めます。取れた証明は原本を保管し、写しを家族と共有しておくと後の相談で使えます。
- 所在地とおおよその建築年を伝え、台帳を持つ窓口を電話で特定する
- 申請には住居表示ではなく地名地番を使い、課税明細か登記の写しを持参する
- 建築主の氏名を家族に確認する(祖父の名前になっていることがある)
- 手数料、支払い方法、郵送請求の可否、交付までの日数を先に聞く
- 見つからないと言われたら、旧町村名や建築年の幅を変えて再検索を頼む
| 書類 | 分かること | 請求先・確認先 |
|---|---|---|
| 建築確認台帳記載事項証明書 | 確認と検査の番号と年月日、用途、構造、階数、床面積 | 確認を扱った行政庁(所管は市の建築担当窓口で確認) |
| 登記事項証明書(建物) | 所在、家屋番号、種類、構造、床面積、新築年月日、所有者 | 法務局の窓口・郵送・オンライン請求 |
| 建物図面・各階平面図 | 敷地内での建物の位置と、各階の形と床面積 | 法務局(備え付けがない場合もある) |
| 固定資産税の課税明細書・名寄帳 | 課税されている家屋の構造、床面積、建築の年 | 市町の資産税を担当する窓口 |
| 給水装置・排水設備の申請図 | 引込みの位置、管の口径、敷地内の経路 | 市町の上下水道を担当する窓口 |
| 施工者が保管する副本・竣工図 | 平面図、立面図、使われた仕様 | 工事をした工務店・設計事務所 |
法務局と市役所に分かれて残っている数字を拾い直す
図面そのものが残っていなくても、建物の形と数字は複数の窓口に分かれて残っています。一枚に集めるつもりで、法務局と市役所を順に回ります。
法務局にある建物図面と各階平面図は、図面がないときの中心になる資料です。建物図面は敷地のどこに建物が建っているかを示し、各階平面図は各階の形と床面積を示します。表示に関する登記をしたときに提出されたものが備え付けられているため、登記されていない建物や、古い時期に登記されたきりの建物では備え付けがないこともあります。あるかどうかは、登記事項証明書を請求するときに窓口で一緒に確認できます。地番と家屋番号を伝えれば、その場で調べてもらえます。
登記事項証明書の表題部には、種類、構造、床面積、新築年月日が記載されています。増築を登記していれば、床面積が変わった経緯も残ります。ここで見た数字を、課税明細に載っている床面積と突き合わせてください。二つが食い違うときは、増築を登記していない、取り壊した部分の滅失登記をしていない、家屋を調査した時期が違う、といった理由が考えられます。どれに当たるかをこの段階で決める必要はなく、違いがあるという事実を日付とともに書き留めておけば足ります。
市町の資産税を担当する窓口には、家屋を評価したときの資料が残っている場合があります。新築や増築のあとに職員が家屋の調査に入り、各階の間取りや外壁と屋根の仕様を記録するためです。所有者本人や相続人であれば、閲覧や写しの交付を受けられることがあります。ただし何をどこまで出せるかは市町ごとの取扱いによるので、電話で用件と関係を伝えて確認してください。あわせて名寄帳を取ると、同じ市町内にある土地と家屋の一覧が手に入り、離れや倉庫の見落としを防げます。
道路の情報は、建て替えができるかどうかに直結します。前面の道が公道か私道か、建築基準法上の道路としてどの区分に当たるか、幅が足りずにセットバックが必要かを、市の建築や道路を担当する窓口で確認します。掛塚や見付の古い町並みのように、道が細く家が接して建っている地区では、この確認を飛ばすと後から計画を組み直すことになります。窓口では道路の種別を示す図面を見せてもらえることが多いので、写しを取れるかどうかも聞いておいてください。
都市計画に関する情報も、同じ日にまとめて取ります。用途地域、建蔽率と容積率、防火や準防火の指定、市街化区域か市街化調整区域かの別。これらは建て替えの可否と規模を左右します。市街化調整区域では、いま家が建っているからといって同じものを建て直せるとは限らず、許可が要るかどうかから確認が必要です。証明の形で出してもらえる項目もあるため、買主へ渡す前提で、どれを書面にできるのかを聞いておくと後が楽になります。
見落とされやすいのが上下水道の記録です。給水装置の工事を申し込んだときの図面や、排水設備の完成図が市町の窓口に残っていることがあります。引込みの位置、管の口径、敷地内の経路が分かるため、建物の平面と重ねると水まわりの位置がおおよそ復元できます。隣の敷地を通して引き込んでいる、あるいは他人の管が自分の敷地を通っている、といった事情もここで見つかります。売買では必ず話題になる部分なので、早いうちに把握しておくと安全です。
下水道が来ていない地区では、浄化槽の設置届や保守点検の記録も手がかりになります。人槽から、当時想定されていた家族の人数と建物の規模が読めます。農地に囲まれた敷地では、水路や里道が敷地に接していることがあり、法定外公共物を管理している窓口で状況を聞けます。こうした細かい記録を一度に全部そろえる必要はありません。第1章で決めた場面に必要なものから順に取り、取った日付と担当窓口を同じ紙に書き足していってください。
最後に、建てた工務店や設計事務所に当たります。確認申請の副本や竣工図を保管していることがあり、これが見つかれば話が一気に早くなります。表札代わりの銘板、分電盤の中の点検札、床下の柱に貼られた紙、古い請求書の封筒などに社名が残っていることがあります。廃業していても、地域の建築士や設計事務所の団体に問い合わせると、引き継ぎ先を教えてもらえる場合があります。望みが薄くても、電話一本で終わる作業なので先に済ませておくのが得です。連絡が取れた場合は、預かれる資料の種類と、写しをもらえるかどうかまで一度に聞いてください。保管しているのが図面ではなく工事の記録だけでも、増築の時期や仕様が分かることがあります。
- 登記事項証明書とあわせて、建物図面・各階平面図の備え付けの有無を確認する
- 資産税の窓口で名寄帳を取り、離れ・倉庫・車庫を含む家屋の一覧を作る
- 前面道路の種別と幅、セットバックの要否を建築の窓口で確認する
- 用途地域、建蔽率・容積率、区域区分を一度にまとめて聞き取る
- 給水装置と排水設備の図が残っているかを上下水道の窓口へ問い合わせる
- 建てた工務店・設計事務所が副本や竣工図を持っていないか連絡する
図2一枚の図面の代わりは、四つの窓口に分かれて残っている
残りは現地で測り、写真で残して差を書き出す
行政に残っていない部分は、現地で測って写真に残すしかありません。自分で測ってよい範囲と、専門家に預ける範囲を分けることが、この章の目的です。
現地で測る目的は、設計図を作ることではありません。買主や設計者、見積りを出す業者に、建物のおおよその形と大きさを伝えることです。用意するのは、レーザー距離計、五メートル程度の巻尺、方眼紙かタブレット、そして撮影日が記録される機器。レーザー距離計は数千円台のものから手に入り、一人で外周を測るときに助かります。畳の枚数や柱の間隔から寸法を推し量る方法もありますが、地域や時代で寸法が違うので、あくまで目安として扱ってください。
測った数字と登記の床面積が一致しないことは、普通に起こります。戸建ての床面積は原則として壁の中心を結んだ線で計算されるのに対し、実際に測れるのは外側の面か内側の面だからです。数十センチの差は測り方の違いで説明がつきます。一方で、一部屋分に相当する差が出るときは、増築か、登記されていない部分がある可能性を疑います。ここでも結論を出す必要はなく、登記の数字、課税の数字、実測の数字を三つ並べて記録しておけば足ります。
増築の跡は外から読めます。基礎に打ち継ぎの線が入っている、外壁の色や目地の割付けが途中で変わる、屋根の高さや勾配が変わる、雨樋の系統が別になっている。内部では、床の高さがわずかに違う、建具の規格がそろっていない、といった形で現れます。こうした箇所を写真に撮り、外周の図の上に位置を書き込みます。昭和の実家では、縁側を部屋に取り込んだ、離れを渡り廊下でつないだ、車庫の上に部屋を載せた、といった形がよく見られます。
階数と高さも記録します。総二階なのか、一部だけ二階なのか、下屋がどこに掛かっているのか。屋根の形と葺いている材料、外壁の仕上げ、基礎の高さと形も見ておきます。天井や床下に点検口があれば、蓋を開けて中を写真に撮るところまではできます。ただし、天井裏に体を入れる、屋根に登る、床下を這うといった行為は事故につながるうえ、古い建材の中には自分で触れないほうがよいものもあります。ここから先は必ず業者へ回してください。
写真は撮る順番を決めておくと、後で使い物になります。まず敷地の外から四方向、次に建物の四隅、続いて各部屋を入口から一枚ずつ、最後に設備と傷んでいる箇所を寄りで。長さが問題になる箇所では、巻尺を当てた状態で撮ります。撮影日が記録に残るため、後から見積りや相談を頼むときに、現地へ行かずに話を進められます。遠方に住んでいる場合ほど、一度の訪問でどれだけ撮れたかが、その後の工程の速さを決めます。
建物の状態そのものを見てもらいたいときは、既存住宅状況調査を頼む方法があります。国が定める講習を修了した建築士が、決められた方法で、構造の安全性や雨漏りに関わる部分を目視などで調べる仕組みです。売買の場面では、媒介契約の書面に調査を行う者のあっせんの有無を記載し、調査を実施した場合はその結果の概要を重要事項として説明する取扱いになっています。調査は現況の報告であり、建物の性能を保証するものではない点は理解しておいてください。
耐震が心配なら、木造住宅の耐震診断を受ける道があります。静岡県と市町は木造住宅の耐震化を進めており、診断や補強に対する支援の制度が用意されている年度があります。対象、申込みの時期、費用の負担は市町ごとに違うので、住宅や建築を担当する窓口で確認してください。増築や用途の変更を考えていて検査済証がない場合は、指定確認検査機関などによる法適合状況の調査という選択肢もあります。費用は建物の規模と調査の範囲で大きく変わるため、まず見積りを取ってから判断します。
現地の作業を一日で終わらせようとしないでください。測る、撮る、書き込む、を一巡したら、いったん持ち帰り、第2章と第3章で集めた数字と並べます。合わない箇所が出たら、それが次の訪問で確かめる項目になります。二回目は見る場所が絞られているので、半日で済むことが多くなります。この往復を二回か三回行えば、図面がなくても人に説明できる状態にたどり着きます。完璧な図面を目指す必要はありません。
- 外周と各階の形、開口部の位置を測り、方眼紙に一枚の図としてまとめる
- 登記の床面積、課税の床面積、実測値の三つを並べて差を記録する
- 基礎や外壁の切り替わりから増築の位置を推定し、写真に残す
- 天井裏や屋根に自分で上がらない。危険な箇所は業者へ回す
- 既存住宅状況調査や耐震診断を頼むかは、見積りを取ってから決める
| 対象 | 自分でできる範囲 | 預ける相手 |
|---|---|---|
| 建物の大きさ | 外周と各階を測り、方眼紙に形を起こす | 精度が要る図面は建築士・土地家屋調査士 |
| 増築の位置 | 基礎の継ぎ目や外壁の変わり目を写真に残す | 登記が必要かどうかは土地家屋調査士 |
| 屋根・天井裏・床下 | 点検口から見える範囲を撮るところまで | 上がる・入る作業は工務店や調査会社 |
| 構造の傷み・雨漏り | 気になる箇所の位置と気づいた時期を書き出す | 既存住宅状況調査を行う建築士 |
| 耐震性 | 建築の年月と構造が分かる記録をそろえる | 耐震診断ができる建築士・市町の窓口 |
| 境界・越境 | 境界標の有無と、はみ出して見える箇所を撮る | 土地家屋調査士 |
買主への説明は「ない」ではなく「ここまで分かっている」で書く
書類がないことは、売れない理由にはなりません。伝え方を誤ることが、後の紛争の理由になります。分かっていることと分かっていないことを、同じ精度で書きます。
売却の場面で買主が知りたいのは、書類が全部そろっているかどうかではなく、この建物で自分のやりたいことができるかどうかです。だから説明は、書類がありませんという一行では足りません。建築確認は受けており番号と年月日はここまで分かっている、完了検査の記録はない、図面は残っていないが実測した外周と各階の形はこの図のとおり。この形にすると、買主は自分の計画に当てはめて考えられるようになります。
売買では、売主が知っている建物と土地の状況を物件状況報告書(告知書)に書いて買主へ渡すのが一般的な進め方です。雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、増改築の履歴、境界の状況といった項目が並びます。ここに、確認済証と検査済証の有無、図面の有無、実測の結果を書き添えてください。分からない項目に不明と書くことは、隠すことではありません。むしろ、分からないと書いた事実が残ることが、後になって双方を守ります。
重要事項説明は宅地建物取引士が行い、法令上の制限、道路、インフラの状況など、取引の判断に必要な事項を書面で示します。建築確認や完了検査の状況は、案件によって説明の対象になります。売主としては、自分が集めた資料をすべて仲介する会社へ渡し、どこまでを説明に載せるかを相談してください。渡していない資料は説明に載りません。せっかく集めたものが生きないのは、手元にしまったままにしたときです。
契約のあとで問題になりやすいのは、売主が知っていながら伝えなかった事柄です。増築した部分が登記されていないと知っていた、雨漏りの跡を見て自分で塞いだことがある。こうした事情は、書面に残したうえで引き渡す前に伝えます。個人が売主となる取引では、契約不適合の責任について期間や範囲を特約で調整することもありますが、知っていて告げなかった事柄はその対象から外れる扱いが通常です。条項の意味は、署名する前に宅地建物取引士へ確認してください。
誰が買うかで、必要な資料の重さが変わります。古家を解体して新築する買主にとって、建物の図面はほとんど意味を持たず、大切なのは道路、境界、地盤、そして解体の見積りです。いまの建物を直して住みたい買主には、構造と面積と増築の履歴が要ります。事業として買う相手は、完了検査の有無と法適合の状況を先に聞いてきます。募集を始める前に、どの層へ向けて出すのかを仲介する会社と決めておくと、そろえる資料の優先順位が定まります。
価格の話も分けて考えます。書類がそろっていないこと自体が直接値段を下げるのではなく、買主の側に調査や設計の手間が増えることが値段に表れます。こちらで実測の図と写真と行政の記録を用意しておくほど、買主が見込む不確かさは小さくなります。逆に、あいまいなまま出せば、買主は最悪の想定で見積もります。かけた手間がそのまま金額になるとは限りませんが、条件の交渉で足元をすくわれにくくはなります。
敷地に未登記の建物が残っている場合は、引渡しの前に扱いを決めます。表題登記をしてから引き渡すのか、現況のまま引き渡して買主が手続きをするのか、解体して更地にするのか。どれを選ぶかで費用の負担も日程も変わります。物置や車庫のような小さな建物でも、決めないまま契約を進めると引渡しの直前で止まります。判断には土地家屋調査士の意見が要るので、募集を始める段階で一度相談しておくと安全です。
引渡しのときに渡す資料は、一冊にまとめて目次を付けます。台帳記載事項証明書、登記事項証明書、建物図面と各階平面図、課税明細、上下水道の図、実測の図、写真、調査を受けたならその報告書。それぞれの先頭に、取得した日と取得先を書いた付箋を付けておくと、買主が後から追いかけられます。原本を渡すものと写しで足りるものを分け、原本を郵便で送る場合は送り方と控えの残し方も先に決めてください。
最後に相談の順番です。名義や相続の手続きが残っているなら司法書士、境界や未登記の建物なら土地家屋調査士、建て替えの可否や既存の建物の扱いなら建築士、税の特例なら税理士、売り方と説明の範囲なら宅地建物取引士。図面がないという一つの困りごとが、この五つに枝分かれします。全部を一人に聞かず、質問ごとに相手を選び、受けた回答は日付と一緒に同じ記録へ戻す。これで判断の土台がそろいます。
- 物件状況報告書に、確認済証・検査済証・図面の有無と実測の結果を書き込む
- 集めた資料は手元にしまわず、仲介する会社へ渡してから説明の範囲を相談する
- 買主の想定(解体して新築/改修して居住/事業者)を先に決める
- 未登記の建物の扱いを、募集を始める前に土地家屋調査士へ相談する
- 引渡し資料を一冊にまとめ、各資料に取得日と取得先を記す
図3書類の状況と買主の使い方で、説明の組み立てが変わる
このページ固有の確認メモ
ここからは「実家の建築確認書・図面がないとき、どこまで調べられる?」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。
確認しておく事実
この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。
- 確認済証と検査済証は原則として再交付されず、台帳記載事項証明書が代わりになる
- 台帳記載事項証明書には図面が付かない。形と面積は別の窓口で集める
- 確認を受けた年月日は、耐震基準の区分や補助制度の対象判定に使われる
- 検査済証がないことと、その建物が違法であることは同じではない
- 登記の床面積、課税の床面積、実測値は一致しないことがある
- 建物図面と各階平面図は法務局に備え付けがある場合とない場合がある
- 給水装置や排水設備の申請図から、管の位置と経路が分かることがある
避けたい判断
この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。
- 書類が見つからない時点で調査そのものをあきらめてしまう
- 住居表示だけで請求し、地名地番が違って台帳が見つからないまま終える
- 検査済証がないことを違法と決めつけ、買主へ誤った説明をする
- 面積の差を測り方の違いか増築かを分けずに、未登記と断定する
- 集めた資料を手元にしまい、仲介する会社へ渡さないまま説明に載らない
- 屋根や天井裏へ自分で上がって確かめようとする
手元で探すもの
見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。
- 確認済証・検査済証の有無
- 建築確認台帳記載事項証明書
- 確認を受けた年月日
- 完了検査の記録
- 登記事項証明書(表題部)
- 建物図面・各階平面図
- 固定資産税課税明細・名寄帳
- 前面道路の種別と幅
- 用途地域・区域区分
- 給水装置・排水設備の図
- 実測した外周と各階の形
- 増築部分の位置と時期
よくある質問
確認済証をなくしました。もう一度発行してもらえますか
原則として再交付はされません。代わりに、行政の台帳に記録が残っていれば建築確認台帳記載事項証明書を請求できます。確認と検査の番号や年月日、構造、階数、床面積などが証明されますが、図面は付いてきません。まずは市の建築を担当する窓口へ電話し、台帳を持っているのがどこかを確認してください。
台帳にも記録がないと言われました。違法な建物ということですか
そうとは限りません。確認を受けていない、記録が保存の年限を過ぎて残っていない、検索の条件が合っていないだけ、という三つの可能性があります。旧町村の表記や建築年の幅を変えて再検索を頼むと出てくることもあります。適法かどうかの判断は建築士や行政の窓口へ確認してください。
検査済証がないと売れませんか
売れないわけではありません。ただし、買主が住宅ローンを使う場合や、増改築・用途の変更を予定している場合には、法に適合しているかを別に調べる必要が出ることがあります。記録がない事実と、窓口で聞いた内容を書面に残して伝えるのが基本の進め方です。
昔の図面は市役所に残っていますか
残っていないことのほうが多いと考えてください。確認申請に添付された図面は保存の年限があり、昭和期の木造住宅では廃棄されている例が目立ちます。法務局の建物図面と各階平面図、上下水道の申請図、施工した工務店の副本など、別の記録を組み合わせて補います。
実測は自分でやってよいですか
外周と各階の形、開口部の位置を測って写真に残すところまでは所有者にもできます。屋根に登る、天井裏に体を入れる、床下を這うといった作業は避けてください。事故のおそれがあるうえ、古い建材には自分で扱わないほうがよいものもあります。
相続した実家を売るときの税の特例に、建築の資料は要りますか
家屋が建てられた時期が要件に関わるため、建築の年月を示す資料を求められることがあります。手続きでは市区町村から被相続人居住用家屋等確認書の交付を受けます。要件と必要書類は国税庁の案内と市区町村の窓口で確認し、適用の可否は税理士へ相談してください。
公式出典・確認先
制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。
- ふじがおか実家カルテ|住所で分かること(fudosan.atawi.link)カルテで整理する範囲と、現地・専門家確認が必要な範囲を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続登記の申請義務化について(www.moj.go.jp)相続登記の基本的義務、遺産分割成立後の追加的義務、経過措置を確認確認日:2026-08-27
- 法務省|相続人申告登記について(www.moj.go.jp)遺産分割がまとまらない場合の申告登記と必要書類を確認確認日:2026-08-27
- 国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(www.nta.go.jp)適用期間、対象家屋、相続人数による控除限度額等を確認確認日:2026-08-27

