マンション売却の取得費|購入時の消費税から建物額を出す1式
2026年11月5日|売却と税金

Q. 昔のマンションの契約書に土地と建物の内訳がありません。税額だけで建物代は出せますか?
A. 建物に課された消費税額と購入時の適用税率が分かれば、税込の建物代は「税額×(1+税率)÷税率」で逆算できます。税率8%なら式には0.08を使います。建物代の記載があればその額を優先します。逆算した金額は売却時の減価償却を考慮する前の額です。
契約書で探すのは、購入代金に含まれた税の金額
マンションを売ったときの譲渡所得を計算するには、購入時の土地と建物の代金を分ける場面があります。土地には敷地を共有する持分があり、部屋と一緒に買っていても、建物と同じ計算にはなりません。土地は使用年数に応じて取得費を減らす計算をしません。建物にはその計算があるためです。
国税庁の令和6年分「譲渡所得の申告のしかた」を2026年11月5日に確認しました。手引の出発点は売ったときの契約書ではなく、もともと買ったときの契約書です。最初に、土地価額と建物価額が区分されているかを読みます。双方の価額が記載されていれば、その区分によります。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。私なら、ご家族には売買代金のページを開き、表の見出しまで入れて写すよう案内します。「税込」とだけ書いてある場合と、「うち消費税等」として円単位の金額まで載っている場合では、次にできる作業が違うからです。総額だけに丸を付けてしまうと、その違いが残りません。
どうして税額一つから建物代が分かるのか
土地の購入代金には消費税がかかりません。土地と建物をまとめて購入し、契約書には二つの価額の内訳がなくても、建物に課された消費税額が確認できる場合があります。国税庁の手引は、その税額と適用税率から、消費税を含む建物の取得価額を計算する方法を示しています。
たとえば税率が8%なら、本体価格100円に対して税額は8円です。本体価格と税の合計は108円になります。税額から本体価格に戻すには8円を0.08で割り、税込額まで戻すには、そこに8円を足します。一度に書けば「建物の消費税額×(1+適用税率)÷適用税率」です。8%は式では0.08と置きます。
手引の良いところは、古い資料に建物価額の欄がなくても、何が分かれば先に進めるかを示している点です。一方、私は試算表の「消費税」という欄名だけでは心もとなく感じます。「購入時の、建物の、消費税等」と書いてほしい。購入時には仲介や引っ越しにもお金を払います。同じファイルの領収書に消費税の記載があっても、何にかかった税かを取り違えると別の答えが出ます。
架空の契約書を読む。税額120万円なら建物はいくらか
計算例として、購入総額3,000万円、建物に課された消費税等120万円、適用税率8%という架空の売買契約を考えます。3,000万円は土地と建物を合わせた税込の売買代金で、仲介手数料などの別払いは含まない設定です。国税庁の数値例や、磐田市内で成立した取引価格ではありません。
120万円を0.08で割ると、税を加える前の建物代は1,500万円です。そこに税額120万円を一度だけ足すと、税込の建物代は1,620万円になります。一つの式で計算しても、120万円×1.08÷0.08=1,620万円です。1,500万円で止めた数字と1,620万円の数字を「建物代」とだけ書くと、後でどちらを使うのか分からなくなります。
この例で総額から建物代を引いた1,380万円が土地分です。最後に、土地分1,380万円と税込の建物代1,620万円を足します。契約書にある3,000万円に戻れば、税を二度足していないかを点検できます。一致は転記や足し算を点検する手掛かりです。入力した税率や、税額の出所まで正しいことを保証するものではありません。
税率は売った日の数字で置き換えない
適用税率には、購入した取引で用いた率を入れます。国税庁の手引に載る税率表は、1989年4月からの3%、1997年4月からの5%、2014年4月からの8%、2019年10月からの10%を期間別に示しています。日付は資料を探す手掛かりです。個別の取引で適用された率が不明なときは、日付の印象だけで埋めません。
先ほどの120万円を、仮に10%の税だったと読み替えると、税込の建物代は120万円×1.10÷0.10=1,320万円になります。8%で出した1,620万円とは300万円違います。総額を3,000万円に合わせれば、どちらも土地と建物の足し算は合ってしまいます。合計が合うだけでは発見できない誤りです。
契約した日、代金を精算した日、鍵を受け取った日がすべて同じとは限りません。税率が切り替わる時期をまたいだ資料や、契約後に売買代金を変更した覚書が出てきたら、私はその場で率を決めるか迷います。そんなときは元の見開きと変更後の書面を一緒に残します。税率や対象額が記された売主の精算資料も添え、どの取引にどの率がかかったかを税理士に確かめます。
この式を使う前に止まる三つの読み違い
第一に、「消費税込み」と印刷されているだけで、税額自体が分からない場合です。土地分を含む総額3,000万円に8%を掛けても建物の税額にはなりません。土地と建物の割合を出したいのに、土地を含む全額を建物扱いしているためです。契約書の別表に建物内訳があれば、そちらを先に見ます。
第二に、仲介会社からもらった請求書の税額しか分からない場合です。仲介手数料の税額から分かるのは仲介サービスについての金額で、マンションそのものの売買代金とは別です。印紙の額、登記を頼んだ司法書士への報酬、購入後に発注したリフォーム代の税額も、元の建物代を出す式には移しません。
第三に、契約書に消費税額の記載がなく、建物に税が課されたかさえ確認できない場合です。空欄にゼロを入れて計算し、建物代をゼロと扱うことはできません。家を個人から購入した場合など、そもそもこの式の前提が成り立たない取引もあります。資料の不足なら、購入時の売主や仲介会社の控え、決済時の書類の有無を順に確かめます。手元に契約書がないご家族には実家の購入額を調べるときの資料整理も役立ちます。
税込の建物代から、売却時の取得費へ
建物の税込取得価額は、取得費の計算に渡す途中の数字です。建物代が1,620万円と分かったからといって、売るときにその全額を差し引けると決まったわけではありません。土地分と建物分を分けた後、建物については保有期間中の減価償却費に相当する額などを考慮します。その次の工程は建物の取得費と減価償却の解説で確かめられます。
私なら一枚のメモを上下に分けます。上段に「購入時」を置き、契約書の総額、建物に課された税額、その税率、逆算した税込建物代を並べます。下段に「売却時」を置き、いつまで自宅だったか、貸した期間があったかを記します。上段で埋まった金額を、売却時の取得費の確定額として下段へそのまま写さないためです。
購入資金を借りた方では、住宅ローンの実行額や返済中の利息も同じファイルに出てきます。ローンの残高は借入れに関する数字です。契約書の購入代金の代わりには使えません。利息の扱いを調べるときは、使用を始めた日も関わるため、ローン利息と取得費を分けて整理する記事を別に参照できます。
税理士へ渡す一枚に、原資料へ戻れる目印を付ける
購入時の契約書の控えを用意できたら、計算する人が元の数字に戻れるようにします。「購入契約書2ページ、売買代金欄の下段」のように場所を書きます。覚書があればその日付も添えます。説明用に転記した表と契約書の原本を区別し、書き込みをするのは写しにします。
夫婦で共有していたマンションなら、住戸全体の代金と一人分の代金が混ざらないようにします。上の架空例で1,620万円は住戸全体の建物額です。どちらか一人の確定申告で差し引く額を示した数字ではありません。共有持分や取得時期に違いがある場合は、それぞれの根拠書類を添えて個別の計算を依頼します。
今日の仕事は、「総額はいくらか」の横に「この税額は何にかかったか」を一行書くところまでです。税込の文字しか見つからなければ、「建物の税額は未確認」と書いたまま渡してください。私は、出所を説明できる一つの金額を、先に押さえるよう案内します。売却を決める日と、購入書類を探す日は別々で構いません。
よくある質問
購入時の契約書に建物代が書いてあっても、消費税額から計算し直しますか?
購入時の契約で土地と建物の価額が区分されていれば、国税庁の手引はその記載額によるとしています。建物価額が税抜の表示なのか、消費税を含むのかを欄の見出しで確認します。契約後に代金を変更した覚書がある場合は、どの書面を最終額の根拠にするかも税理士に確認してください。
総額と「税込」の2文字だけで、建物の金額を計算できますか?
土地と建物を合わせた税込総額だけでは、この逆算に必要な建物の消費税額が分かりません。総額を1.08や1.10で割ると、土地にも税がかかる前提になってしまいます。購入時の代金明細や売主の精算書を探し、見つからない場合は、資料を示して別の計算方法を税理士に相談してください。
昔の自宅を後から賃貸にしました。逆算した建物代をそのまま使えますか?
建物に課された税額から出した金額は、購入時の建物価額です。自宅だった期間と貸していた期間があると、売却時の取得費を求めるには利用の経過も確認します。入居日、賃貸を始めた日、貸していた間の申告書や減価償却の明細を購入契約書とそろえ、個別の計算は税理士に確認を。
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相談・調査・査定の申込みには、物件所在地を番地・地番までご記入ください。不明な場合は固定資産税の課税明細書や登記書類で確認してください。
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参考にした公式情報
2026年11月5日確認。令和6年分手引の参考1「一般の場合の譲渡所得の所得税」内の「マンションなどのように建物と土地を一括で購入している場合の『建物の取得価額』」を参照。
本記事は一般的な情報と筆者の意見です。制度・数値・運用は変わる場合があります。重要事項、契約、税務・登記・相続の個別判断は、担当窓口と各分野の専門家に確認を。
